令和2年「情報通信エンジニア」優良団体と意見交換会を開催(学校の部)

今年はオンラインで!

 電気通信設備とネットワークを接続する工事を行う際に必要とされる国家資格「工事担任者」の知識や技術の向上を目的に作られた制度が情報通信エンジニア委員会(事務局:日本データ通信協会)「情報通信エンジニア」です。
情報通信エンジニア委員会では情報通信エンジニアの育成と資格取得を支援している団体を「情報通信エンジニア優良団体」として毎年表彰しており、今年も企業5団体、学校3団体が受賞しました。
 例年は事務局が各団体に直接お伺いし、表彰状をお渡しして意見交換を行う場を持っているのですが、新型コロナウイルス感染症が各地で猛威を振るう今年はそれもかなわず、代替措置として各団体とオンライン会議ツールで結ぶ意見交換会実施と相成りました。特異な平成2年度を象徴するような意見交換会でしたが、短い時間の中で各社、各校様の奮戦の様が垣間見える有意義な時間となりました。

 こちらの記事では、「学校の部」で受賞をされた3つの高等学校様をご紹介します。

(というわけで、今年のお写真の多くはオンライン会議の画面をキャプチャーしています。品質の不揃いは何卒ご容赦のほどを!)

日本データ通信協会側の出席者。左より人材研修部長の小川 浩、
専務理事の髙嶋幹夫、情報通信エンジニア委員会事務局長の信國 宏

■第1位:尼崎市立尼崎双星高等学校(資格者37名)

左より桑木貢司教諭、石川 一教頭、谷 清隆校長、金中 理教諭

 尼崎市立尼崎双星高等学校は工事担任者試験とともに「情報通信エンジニア」にも率先して取り組む高校の代表格。学校の部では今年で4年連続の資格者数日本一に輝き、昨年度よりもさらに資格者数が増え、37名の生徒が「情報通信エンジニア」の資格を取得することができました。

 新型コロナによる学業への影響は小さくなかったと電気情報科長である金中理先生は言います。

「春に実施されているAI第3種に、3年生を受験させますが、今年はそれが中止になりましたので、秋に受験させる形となりました。秋に実施されているDD第3種は、毎年2年生に受験させており、従来通り補習も行い、来週の11月22日にチャレンジします。今年は36名が受験する予定です。」(このインタビューは試験の直前に行われました)。

「事前の準備期間があれば、色々と出来たこともあったとは思うのですが、緊急事態宣言の発令により4月、5月と急に登校が出来なくなってしまい、オンラインで対応しようとしても、十分な設備がないことが大きな問題でした。生徒側においてはスマートフォンしかないというご家庭が多かったため、ICT活用による確認テストのみ出来ました。しかし、印刷教材を郵送するなどアナログな対応も必要でした。就職に関しては、幸い大きな影響は無かったと感じています。」(金中先生)

 毎年、「情報通信エンジニア」優良団体の賞状を携えて尼崎双星高等学校の電気情報科にお邪魔すると、生徒の皆さんが教室で学習に取り組む様子を目の当たりにします。私どもにとってもその真摯で活気のあるさまに接するのが大きな喜びにもなっています。生徒たちが、3年生からの指導を受けながら行う自発的な授業は今年も健在とのことです。来年は新型コロナウイルスの流行が収まり、またその様子を直接拝見できるといいなと思っています。

今年もいただきました、壮観な集合写真。皆さん、おめでとうございます!

■第2位:福岡県立福岡工業高等学校(資格者31名)

左より木ノ下さやか教諭、井上 毅副校長、市川仁士校長、重松哲朗教諭

 福岡の古豪、「福工」(ふっこう)の愛称で知られる福岡県立福岡工業高等学校は、生徒の皆さんが数々の資格試験を取得することで有名な学校です。それだけに緊急事態宣言による突然の休校は学校にも生徒にも影響が多大でした。校長の市川仁士先生の次のお言葉にはその実感が溢れていました。

「4月に緊急事態宣言が発令されて、生徒たちも学校側も、何の準備もできないままに突然の臨時休校となり、それが5月半ばまで続きました。どのように学習を続けていくか、みんなで悩みました。そして、やってみて準備不足を痛感しました。職員全員で急遽学習教材を四苦八苦しながら作り、Web上に上げて生徒が家庭で学習できるように、やれるだけのことはやりましたが、多くの課題があったと思っています。
 ただ、それによって学校のオンライン学習環境に限界があることが明確になり、県の教育委員会で環境整備の取組みを進めていただく契機になったということは意義があったと考えています。我々も、こうした緊急事態の際に限らず、生徒が個別に学習をできるような環境を整えていく必要があると強く感じています。」(市川校長)

 そうした大変な時期に、同校の「情報通信エンジニア」資格者数は、昨年の19名から31名へと大幅に増加しました。生徒を指導する電子工学科の木ノ下さやか先生からは資格への前向きなご評価をいただくことができました。

「今年度は6月から授業が開始ということになりました。その間、学校からは家庭で勉強するようにお願いはしていたのですが、家庭でこれまでやったことのない分野の勉強をするのはとても難しかったようで、実際には6月に登校できるようになってから友達と一緒に一生懸命勉強をしました。
3年生は「情報通信エンジニア」の資格を取得しました。毎年3年生の5月に受験している工事担任者のDD3種が今年は取れず、11月の受験ですと履歴書等に書けなくなるので、就職への影響を懸念していたのですが、「情報通信エンジニア」についても履歴書に書かせていただき、面接の際に生徒たちがしっかり説明することができたのはよかったと思っています。」

 電子工学科主任の重松哲朗先生からも「情報通信エンジニア」に対し、「就活の面接でも「情報通信エンジニア」取得によって生徒と企業様の会話の内容が深まったりしましたし、就職活動、さらに就職した先で活躍できるような資格として今後も取り組んでいきたいと考えています」とお褒めの言葉を頂戴しました。
「情報通信エンジニア」自体もご評価とご期待にさらに応えられるようパワーアップしていく所存です。皆様の一層のご愛顧をお願い申し上げます。

■第3位:福井県立科学技術高等学校(資格者27名)

左より千葉晴信教諭、藤枝徹校長、服部常義教頭、柳谷陽昭教諭

 福井県立科学技術高等学校は、高校生にとっては難関の工事担任者DD第1種に毎年数多くの合格者を出している話題の学校です。同校でも「情報通信エンジニア」への取り組みは加速しており、昨年の14名から今年は31名へと資格者数は倍以上に伸びています。

「コロナの影響で、工事担任者のみならず、電気工事士、情報処理技術者試験など春に予定していた様々な資格試験が中止となりました。先週、金沢市で開催された11月の工事担任者試験を生徒が受験したのですが、例年なら春に終わっていた他の試験とも重なり、複数の資格験の勉強を同時にするような状況で、たいへん忙しい日々を過ごしてきました。」(藤枝徹校長)

 藤枝校長の声には非常時を乗り切った安堵とともに工事担任者試験で実績を積み上げる同校の指導への自信もはっきりと感じられます。これからを見据えてリモート環境の整備も視野に入ってきたようです。

「福井県では、生徒一人一人にタブレット端末を提供する取り組みを始めており、本校にも12月上旬に全員分のタブレットが届く予定です。万が一、自宅待機という事態に至れば、学校でやっている授業をオンラインで提供できるようにするつもりです。ただ、タブレットが届いても、実際にやってみなければどのようになるか分からない部分がありますので、これからも忙しくなるのではないかと感じているところです。」

 同校で指導する情報工学科長の千葉晴信先生からは、資格証を手にした生徒の皆さんの集合写真送られてきました。地元の福井新聞にも集合写真とともに「情報通信エンジニア」合格を伝える記事が掲載されたとのことです。

ずらりと揃った科技高の「情報通信エンジニア」資格取得者の皆さん。おめでとうございます!

(文責:『日本データ通信』編集部)