株式会社 野村通信設備
代表取締役
野村 英一(のむら えいいち)さん
今回は東京都内を中心に電気通信設備工事を行っている株式会社 野村通信設備にお邪魔しました。通信業界のことは右も左もわからない中、20代で独立した野村英一社長。そのお人柄や仕事への真摯な取り組みにより、今では多くの従業員やお客様、関係会社の方たちからの信頼を得ています。そんな野村社長に、仕事のこと、資格のことをお聞きしました。
~会社を興して~
-野村さんは専門学校のご出身ですが、どんな勉強をされていましたか?
私は情報処理科にいましたので、パソコンを使ったプログラミングや経理関係の簿記の勉強をしていました。
-そうすると現在のお仕事の電気通信関連ではなかったのですね。
そうです。卒業してすぐはIT企業に入り、建物の平面図や立面図の作成や電気配線図などを描くCAD※1ソフトの作成に携わっていました。そこで社会人としてのマナーを学んだり、いろいろな雑務をやったりしていたので、入ってすぐは今まで学んできたことが活かせなくて、思っていた社会人のイメージとギャップがあるのを覚えています。
※1 CAD(Computer Aided Design):コンピューターによる設計支援ツール
-そのあと、転職をされたのですか?
IT企業に勤めていた頃は、夜中まで働くなど結構不規則な生活でした。そのせいか、4年ぐらいして体調を崩してしまったため、退職してしばらく休みを取りました。その時、祖父や父が電気通信工事関連の業界にいたので、それがきっかけで通信インフラの業務に関わることになりました。24歳のときです。
最初は通信インフラ系の会社に入って社員として働いていました。そのとき、元請の会社(工事発注者から工事の施工を請け負った会社)の人が仕事ぶりを高く評価してくれて、3年後の1995年に個人事業主として独立しました。当時は、一人親方(従業員を雇用せず一人で業務を行う人)がたくさんいたのですが、元請さんからするとそれをまとめるのが大変なので、まとめ役をしてくれないかという声があり、2012年に今の会社(法人化)を興しました。最初は社員3名でスタートしたのですが、年に2~3名ずつ増え続け、現在では35名となり、そのうち22名が現場作業を行う社員です。
-ほとんどの人が現場作業の方ですね。
はい、交換機の配線新設、光ファイバーの敷設、戸建て・マンション共用部分の設備の接続、ONU※2の設置などを行っています。社員の中には、屋外作業が得意の人、屋内作業が得意の人、手先が器用な人、不器用だけれど仕事をしっかりこなす人など、色々な人がいるので、個々の得意不得意、やりたいことをみて個性が活かせるように仕事を配分しています。
※2 ONU:(Optical Network Unit 光回線終端装置)
インターネット回線から自宅などでデータを受信する際、光信号から電気信号へ変換をする装置
-そうすると野村社長は仕事を取ってくるような営業の仕事もされているのですか?
今現在は、通信建設会社の一次請けをしているので、そこからの仕事があります。どちらかというと、その仕事を確実に実施できるようにどの社員に何をやってもらうかという管理業務が主な仕事です。
-会社を興すというのは大変だったと思いますが。
確かに右も左もわからない中で始めたので、ハードルは高かったです。ひとりで仕事をしていればひとりで責任をとればいいですが、会社を興すと人を雇うので、社員及びその家族の生活も守る必要が出てきます。そのため、仕事もそれだけ取ってこないといけないです。今まで営業はやっていなかったのですが、色々な会社がある中から元請さんがうちに仕事を発注してくれるような努力が大切になってきました。
また、会社を興すと本業の工事の仕事以外に、請求書や見積書など経理関係の業務も出てきます。そこは学生時代の簿記の勉強が役にたちました。学生時代はこんなにパソコンを使う時代が来るとは思っていなかったですが、専門学校時代にパソコンを使った情報処理の勉強が活かせているのかなと思います。
-将来を見越されていたのですね。
黒電話の時代では無線という考えがありませんでしたが、将来は衛星などで世界が無線でおおわれるだろうと思っていました。わが社のロゴにもありますが、黒電話の時代から無線の時代になることを思い、黒電話を模したマークから右肩上がりの先に無線のマークを記したロゴを20年以上前に作りました。ある程度の予測はしていましたが、ここまで急激に通信が進化するとは思いもしませんでした。
~仕事・生活について~
-今までで苦労した仕事などはありますか?
テレビ中継の設備工事(中継現場の専用電話機の設置や放送局側の交換機の接続)などをよく請け負っていました。その時は、自分が工事した設備が原因で、テレビ中継が切れちゃったりしないかとドキドキしていました。あと、大型の商業施設や銀行、警察などの通信設備を工事するときには、失敗があった時の影響を考えるととても慎重になりました。重要な設備を発注してくれるということは、元請さんが技術力をかってくれて、信用してくれている証でありがたいことです。ただ、その分プレッシャーはありますね。
その他、従業員も増え、取ってくる仕事を増やさないといけないというプレッシャーもありますが、楽しくてやりがいはあります。回線を設置するとお客様からお礼を言ってもらえて喜んでくれるところを間近で見られることはうれしいです。
-野村社長の1日はどんな生活ですか?
朝7時半に出社しています。現場作業は屋外が多いので、天候の有無にかかわらず社員を派遣して作業を無事終わらせる段取りをする必要があります。終わりは、すべての社員から作業終了の報告を受けてからとなりますので、20時頃までは事務所にいます。朝早くて夜遅いですが、自宅が近いのでそんなに苦にはならないです。
今は、能登半島地震の災害復旧の関係で知り合いや仲間が現地に行っていますが、まだ電柱が倒れていたり、携帯電話がつながらなかったりと、かなり大変な状況なので引き続き現地のお役に立てるよう協力してまいります。
-社会インフラを支えている工事をされているので、故障が無いように、また災害などがあったときにはすぐに対応しないといけないというところの大変さがありますね。
~資格について~
-次に資格についてお尋ねします。野村社長はいつ頃工事担任者の資格を取られましたか?
当時は光回線などがなく黒電話が主流だったので、アナログ第二種を独立後の1996年に取りました。光回線やISDNなどが出てきたタイミングでデジタル第三種を取り、そのあとにデジタル第一種をとりました。その後、資格の名称が変わったので2011年にDD第一種も取りました。
-資格を取るのにどれくらい勉強しましたか?
通信インフラの工事は資格を持っていないとできないので、この業界に入ってから勉強して取りました。最初は専門用語が理解できませんでしたが、仕事から帰ってから毎日のように参考書を読み、過去の問題を繰り返し解くことを半年くらい続け、アナログ第二種を取ることができました。最初の工事担任者資格への挑戦だったので三科目受験で苦労しました。基礎と名がつく基礎科目が私にとっては一番難しかったです。デジタル第三種を取るときは基礎科目が免除されたので、技術と法規だけの受験でしたが、法規で出る用語も覚えるのが難しいです。世の中ではNTTといえばわかりますが、法規の問題では第一種電気通信事業者という名称で出てきたりと、いろいろな専門用語の理解に苦労しました。
過去の問題集は勉強になりますね。本番の試験と同じ形式なので、実践的な勉強ができました。
-工事担任者以外の資格もお持ちですか?
酸素欠乏硫化水素危険作業主任者や高所作業車運転特別教育などを持っています。工事担任者資格を持っていれば通信工事はできますが、それに加えて電気の資格を持っていないとコンセント1個付けることもできないし、無線の機器を扱うには無線技術士の資格が必要です。また、マンションの地下やマンホールに入って配線することもあるので酸素欠乏硫化水素危険作業主任者の資格が必要だし、高所での作業もあるので高所作業の資格も併せて持っておく必要があります。作業するために必要な資格を複数持っている方が、会社としても仕事を取ってきやすいです。
最近では防犯カメラの設置などの仕事も行います。コンセントをブレーカーから引っ張ってこないといけなくて、昔は電気屋さんにお願いをしていましたが、自分たちが資格を持っていれば自分たちで電気工事もでき、費用も抑えられるし効率もよくなります。
工事担任者が扱うケーブルって細くて扱いづらいので、電気屋さんとかは通信業界の仕事はやりたくないと聞きます。逆に細いケーブルを扱っている通信工事の人間が比較的太いケーブルを扱う電気工事はやりやすいので、通信工事からだといろいろな工事に広げやすいのではと思っています。
-社員の方も仕事しながらの資格取得は苦労されていますか?
私も夕方返ってきて、眠くなりながら勉強して大変でした。年に2回試験があるのでその時は頑張ってもらっています。
-資格手当はありますか?
はい、毎月の給料に反映した手当を支給しています。社員には受験料も支給しています。
~最後に~
-最後にこれは言っておきたいということがあればお願いします。
資格を取ったことで、お客様に対して自信もつくし、通信インフラ事業のプロになったな、仲間入りしたなという気持ちになりました。大変かもしれませんが、一生懸命勉強して資格取得を目指していただければと思います。
また、資格取得も大切ですが、同じくらい人間関係もすごく大事で、今後就職したときにも周囲の人とのコミュニケーションをよくとって、しっかりと仕事をしてもらいたいです。この世の中に人間って何十億人もいますが、人生で出会える人はほんの一握りなんです。その人との出会いとか、震災のときもそうですが、全く見知らぬ人が助けてくれるとか、そういうすべての人とのご縁を決して離さないように大切にして生きていってくれればと思います。
通信インフラ事業はとても楽しく、自分の身になり、やればやるほど成果がでますので、工事担任者を受けていただいて頑張ってください。
-ありがとうございました。
【DATA】
- 企業名:株式会社 野村通信設備
- 本社所在地:東京都八王子市椚田町560-30
- 設立:2012年6月
- 事業内容:電気通信工事業
- URL:https://ntsnomurae.wixsite.com/nomutuu