【工事担任者の仕事Vol.11】1年目から障害対応で顧客のもとへ


OKIクロステック 株式会社
第一支社サポートサービス第一部新宿サービス課
石岡 叶麗(いしおか かれん)さん

 今回は、システムの構築、工事から運用・保守サービスを全国で展開しているOKIクロステックにお邪魔しました。石岡叶麗さんは、金融機関のATM(現金自動預け払い機)の保守、修理を行う今年度入社の唯一の女性です。入社当初は「ATMって何?」という状況でしたが、入社後1年も経たないのに1人でお客様のところへ行き、後輩の指導もする一人前のプロフェッショナルです。石岡さんに学生時代との違い、社会人1年目の苦労話などを聞きました。

~ATMを使ったことがないのにATMの保守員の道へ~

-石岡さんは工業高校のご出身ですが情報技術科ではどういうことを勉強していましたか?

 プログラミングや電子回路、論理回路、半導体などを勉強していました。電気については少しかじるぐらいでしたね。生産システムという授業があって、空乏層や電流などの授業があったので工事担任者の資格は取りやすかったかなと思います。

-どういうきっかけでOKIクロステックを選ばれたのですか?

 申し上げにくいのですが、実は機械や電気は苦手なのです(笑)
 が、学校の先生が今の会社を推薦してくれていて、お墨付きをもらったことが大きいです。

-入社してどうでしたか?

 最初は不安が大きかったです。研修でATMについて勉強するのですが、私の世代は銀行口座の残高確認などはスマホでやるし、通帳も紙ではなくWebなので、銀行に行くこともないしATMを使ったことがないのです。そのため、最初は説明されても何もわからず、言われたことが右から左に流れていってという状態でした。研修では何回もクイズ(問題)を出してもらうのですが誰も答えらず、同期でやばいねと言ってみんなが勉強する雰囲気になっていきました。

-それは大変ですね。最初は覚えることが多いのですか?

 ATMの機種数が多く、研修がどんどん進んでいくので、最初に出た端末のことは忘れてしまっています。研修と並行して配属された部署でOJTをやるのですが、研修で習った端末にあたることはほとんどなく、そこでまた新しい情報が入るも消化できず、教えられてないことをポンポン言われて、意味がわからなくなり・・・。といったことをやり続ける状態でした。

※OJT:On-the-Job Training=職場の先輩が後輩に実際の仕事を通じて指導する教育方法

-研修をしながらOJTでも経験しているのですね。

 研修で習っていない機種の故障修理をOJTでやるときは必死です。先輩社員が作業しているところを見たり、一部を担当させてもらったりします。その時には、「こういう障害でとまることもあるよ」などの経験談も話してくれます。

-ATMの故障の原因って異物を入れてしまったということが多いのですか?

 はい、誤投入がほとんどです。やはりATMを利用するお客様の取り扱いによる故障が多いですね。この前はお札の挿入口に液体が流れていました。ふき取って清掃したのですが、なぜ液体が??と、意味がわからなかったです(笑)

~研修にはない緊張がみなぎる現場での実務~

-研修を受けてOJTもやったので、これからは1人でお客様のところに行くのですね。

 すでに12月後半から1人で行っています。

-もう1人で行っているのですか! 初めて1人で行ったときはどうでしたか?

 初めての対応は、お金がうまく読めないという修理対応の中では比較的簡単なものでした。全て1人でやるので自分のペースで作業ができます。ただし、先輩と同じ作業スピードではできないですし、作業抜けが無いように気を付けてはいたのですが、これやったかなとか不安とあせりが出て大変でした。途中、作業漏れがあり「あ、やっちゃった」ということに気づきましたが、作業している段階に気づいてよかったです。

-すでに1人で何回か行かれているのですか?

 私は新宿エリアを担当しているのですが、最近は障害対応の仕事が新人に回ってくるので、1日2~3件くらいをこなしています。また、本来は作業管理という方が障害の詳細を説明してくれるのですが、その説明がないときはかなり不安になります。

-例えば、故障の連絡を受け、いざ行ってみると現象が再現しなかったことなどもあるのですか?

 はい、ありますね。その場合は、「関連しそうな○○の箇所を点検しておきました」とか「○○部分を清掃しておきました」などの対応をします。現場に行くと自分の判断で対応することになります。サポート部隊に電話で相談はしますが、サポート部隊は現場を見られるわけではなく、私が見て伝えたことで判断するので、経験豊富な方が見たらすぐわかることでも、これでいいのかなという不安はあります。

-1人で行くとすごく不安だと思いますが、本当に原因がわからないときはどうするのですか?

そうですね~、わかるまでちょっと踏ん張ってみます(笑)
どれが悪いのかを1つ1つ見て、消去法で残ったもので多分これではないかというものを特定して、直るかどうかを検討します。お客様は原因が何だったのかをかなり重要視されますので、原因がわからないとお伝えしにくく、そういう時はかなり時間がかかります。

-現場でわからないときには事務所に連絡して相談するのですか?

 わからないことが1つで済めばいいのですが、調査を進めるうちに2つ、3つ、4つと相談事が後半に出てくることもあり、何回も電話するのも気が引けるときがあります。ただ、最終的には上長に判断を仰ぎ対応の指示をもらいます。

~女性の仕事としての可能性を感じる石岡さん~

-仕事をしていて楽しいこと、やりがいはどんなところですか?

 最近は、故障の原因が明確にわかるようになったなという成長が感じられます。故障箇所を直す以外でも、例えば内部のローラーの使用年数が経っているようだと、お客様の使い方によって故障が発生するかもしれないので、壊れていなくても最善の状態にして渡すようにしています。

-将来はこうなりたいなどの目標はありますか?

 そうですねー、今の仕事でいいかな。この仕事は女性が少ないので、続けていきたいなと思っています。
 職場で女性の先輩が1人いますが、同期で女性は私だけです。女性がこの仕事をやると、装置のユニットが重たいなとか思うことは同じだと思います。助けを呼ぶ時間があったら自分で何かできることないかなと思うのです。女性の先輩に重いユニットを1人でどうやって持つのですかとか、女性ならではの工夫していることを聞いています。

-どんな工夫のアドバイスをしてくれるのですか?

 だいたいは「根性」って言われます(笑)
 でも根性で持っても、固い装置をプラスチックの床に置くと床が壊れてしまうので、この場所には置かないようにといった、「根性」プラス「工夫」を教えてくれます。

-男性より女性の私の方が得意ということもあるのではないですか?

 あまり思いつきませんが、お客様からはよくしてくれますね。お客様のところに行くと、お茶を出してくれたり、お客様が買ってきたお土産をくれることもあります。お客様は大抵忙しいので、こちらからコミュニケーションをとるときはタイミングを見計らって声をかけます。

-学生時代だと友達同士や先輩後輩という関係ですが、お客様との関係で気を付けていることはありますか?

 距離感を保つことですかね。女性だからなのか、言いやすいポジションにいるからなのか、お客様からはこういう時はどうしたらいいですかとか結構何でも聞かれます。自分でもわからないような難しいことは、本当に緊急事態で必要なことなのかを確認して、そうでなければすぐの回答は難しいですなど、お客様との関係には距離感を保つようにしています。

~会社から勧められ工事担任者資格に挑戦!~

-そんな中で工事担任者の総合通信にもチャレンジされたのですね。どうやって時間のやりくりをしたのですか?

 会社から資格取得を勧められたときは、配属先の部署の方針もあり定時で帰ることができたので、帰ってから勉強しました。資格取得向けの研修を週に1,2回受け、3時間くらいその復習をするといったことを3か月ほど続けました。

-工業高校を卒業されてすぐなので基礎科目などは勉強しやすかったですか?

 はい、基礎科目の内容はお久しぶりですといった感じでした(笑)
 技術と法規は参考書を読んで過去問をやりました。覚えることが苦手だったので苦労しました。法規は数値を覚えて、それが何なのかを理解するのでそれほど時間はかからなかったです。同期は12名いるのですが5名が合格しました。

-資格手当はあるのですか?

 受験料と毎月の給料に手当がつきます。

-試験内容と実際の仕事がつながっているものはありますか?

 ATMの通信回線部分の故障などがあると関連しているのだと思いますが、私はまだその修理にあたったことはないですね。今後出てきてほしいです。

~資格を取るなら若いうちに~

-もう少しすると後輩が入ってくると思いますが何かアドバイスはありますか?

 何でも聞いたらいいのじゃないかなと思います。
 新人は6月以降に首都圏エリアに配属されるので、今後、後輩を連れて現場にいくこともあると思います。障害を直すだけでなく、現場に出てわかる内容もあるので、私も同期や先輩に聞いたりしました。年の近い私になんでも聞いてくれればいいかなと思っています。

-今の高校生に対してのアドバイスはありますか?

 資格を取るなら若いうちの方がいいです。
 私は研修の期間は定時で帰れたので受験勉強するにはベストタイミングでした。年を取るとやることが多くなり、時間も確保してくれないと思います。時間が確保されている時期に取った方がよいです。

-学生時代と今で違うことはありますか?

 学生時代だとわからないことがあると自分のペースですぐに人に聞いたりしていましたが、社会に出ると自分の時間軸だけで動いていなくて、みんなの時間軸の間に入って仕事をするので、相手の都合をみる必要があります。

-最後に一言お願いします。

 今の仕事は女性がまだ少ないですが、もっと女性が増えれば働きやすくなるかなと思っています。故障修理対応は外出が多く1日で複数のお客様のところへ行きます。修理と修理の間は余裕のある時もあり、その点はいいかなと思っていますのでやってみたいなと思う女性の方は大歓迎です!

-ありがとうございました。

【DATA】

  • 企業名:OKIクロステック 株式会社
  • 本社所在地:東京都中央区晴海1丁目8番11号
          晴海アイランドトリトンスクエアオフィスタワー
          Y棟26階
  • 設立:1960年5月 
  • 事業内容:電気工事業、電気通信工事業、消防施設工事業、
         土木工事業、とび・土工工事業、石工事業、
         鋼構造物工事業、ほ装工事業、しゅんせつ工事業、
         水道施設工事業、管工事業
  • URL:https://www.oki-oxt.jp/