【工事担任者の仕事Vol.10】過去の体験が支える新入社員指導の現在


OKIクロステック 株式会社
人事総務部教育部トレーニングセンター
尼子 聖(あまこ せい)さん

 今回は、システムの構築、工事から運用・保守サービスを全国で展開しているOKIクロステックにお邪魔しました。金融機関のATM(現金自動預け払い機)・端末や旅行会社の端末の保守、修理を担当してきた尼子聖さんは、お客様先での修理対応の他、コールセンター業務も経験され、技術的にもお客様対応にも経験豊富な方です。これらの経験を活かして現在は教育部で後輩の指導を行っています。そんな尼子さんに過去の仕事のこと、今の研修指導のこと、工事担任者資格と仕事の関係などをお聞きしました。

~ソフトよりもハードに惹かれて今の会社へ~

-尼子さんは国立高専の情報工学科のご出身ですね

 はい、私の実家は瀬戸内海の島で、実家から行ける高校が少ししかなかったというのが高専を選んだ理由の1つです。また、就職氷河期の時代だったので、高専に行けば就職率が高いよという親からの勧めがあったことも理由の1つです。

-機械や電気系が好きということもあったのですか?

 いえ、今でも好きではないです(笑) まあ、得意ではないということです。情報工学科ではC言語などのプログラミングを勉強しました。資格取得に関しては、先生から情報処理技術者試験などを勧められて受けた人もいましたが、私は何も取りませんでした。

-情報工学科でプログラミングをやっていたらIT系企業に就職する人が多いと思いますが、その中でOKIクロステックに入社された理由を教えてください。

 確かにソフト系の会社に入る人が多いのですが、私はどちらかというとハードの方が好きだったので、ハードを扱っている会社がいいなと思い今の会社に入りました。
 最初は栃木のサービスセンターに配属され、金融機関の端末や旅行会社の端末の故障修理の業務を担当しました。その後、大阪でコールセンター業務を担当し、今は東京で主に新入社員向けの技術研修の講師を行っています。

~サービスセンター初の女性保守員として~

-最初に栃木のサービスセンターでの業務内容を教えてください。

 金融機関や旅行会社などの法人がお客様で、金融機関の端末や旅行会社の端末の定期的な点検や故障の問い合わせがあったときにお客様先に行って修理をしていました。定期点検では装置は壊れていないので決まった項目に沿って点検をします。故障修理では故障原因の切り分け、特定をして修理を行います。故障の原因にはハードが壊れている場合もあるし、ソフト不具合の場合もあるので、ハード・ソフトの両面から切り分けを行います。
 20年以上前のことなので、当時は私が栃木のサービスセンターで初の女性保守員でした。だから受け入れる側も最初はどんな感じなのだろうと不安だったと思いますが、とても温かく迎えてくれました。また、お客様(銀行)も女性の保守員がくるのは初めてだったようです。女性初ということで大変でしたが、みなさん優しくしてくれて、今となっては行ってよかったなと思います。

-お休みは土日固定なのですか?

 修理対応は年中無休なので、たまに土日出勤もありました。土日に出勤した場合は平日に休みます。年末年始は、端末の入替えなどがあると出勤になります。当時は、女性だったからなのか、「出なくていいよ」と言われて周りの人が出てくれました。今だと男女平等で違うと思いますが(笑)

-ATMの故障にはどういうものが多いのですか?

 紙幣が詰まるとか、異物を入れてしまったとか、紙幣を入れるところに間違えて硬貨を入れてしまったなど、取り扱いによる故障が多いです。やはり動きがある箇所の故障が多いですね。その場合は部品を持って行って交換したりします。

~コールセンター時代にはお客様のトラブルを目の当たりにすることも~

-次に大阪のコールセンターでのお仕事についても教えてください。

 お客様から故障の連絡を受ける窓口で、その場で対処方法を伝え、それでも直らなかったら社内の修理対応者につなぐ仕事です。電話口でアドバイスもするので、窓口担当には経験豊富な年配の男性が多かったです。

-コールセンター時代で苦労したことはありますか?

 ATMを利用しているお客様と行員さんが現金に関わるトラブルになっている状態で電話がかかってきたことがありました。そんな時にはどういうアドバイスをしたらいいのかというのは悩みました。相手は解決策を求めてくるのですが、間違ったことは言えないので難しいです。そういった経験が今の教育部での研修指導にも活かされていると思っています。

~研修指導は修理スキルに留まらない~

-そのあと東京で指導係になったのですね。

 大阪で10年のコールセンター業務の後、東京に異動となりました。保守対応を行う新入社員に対し、6月から3月までの研修期間でいろいろな端末の取り扱いについて指導します。研修では一人でお客様のところに行って修理できるレベルにまでなってもらいます。修理スキルを身につけさせることも必要ですが、お客様のところに行く仕事なので、言葉遣いやマナーなどの顧客対応も指導します。

-顧客対応の指導はどういうものですか?

 お客様先に入店するところから、作業開始、作業中、作業終了時の伝票作成、お客様への報告まで、一通りの流れをロールプレイします。技術訓練で習ったことがちゃんとできているかを確認して、これだったら一人で客先に行かせられるなと判断したら合格となります。また、ロールプレイではお客様から言われたことを守っているかをチェックします。例えば、お客様に携帯電話を使っていいかを確認しているか、お客様から携帯電話の使用に関し制限を言われたらそれを守っているか、お客様から「○時になったら動かしたい」という約束をしたらそれを守っているかなど、試験官である私がお客様役となりロールプレイの中でチェックします。

※ロールプレイ=実際の現場を想定し、自分の役割を演じることでスキルを身に付ける学習方法

-指導にあたり、伝え方、教え方など、どういう点に気を付けていますか?

 私自身、機械が得意ではないので、難しい言葉はできるだけ使わず私が聞いてもわかるように伝えているつもりです。また、人によって教え方などは変えていますね。研修を終えるには筆記試験と実技試験に合格しないといけないのですが、なんとなく理解していなさそうだなという社員には補習を促したりもしています。

-教える内容は毎年新しいことが増えているのですか?

 新しい機種が出たり、ソフトのバージョンアップなどがあると教える内容も変わってきます。また、頻繁にあるとよくないのですが、どこかでミスが起きたときには同じことが起きないように研修の中に取り入れたりもしています。

~スキルの多様化の会社方針もあり工事担任者試験にチャレンジ~

-総合通信をお持ちですが、いつどういうきっかけで取られたのですか?

 2023年5月に取りました。2019年に施工管理をやっているグループ会社と合併をしたのをきっかけに、マルチスキル化していこうという会社の方針もあり、工事担任者資格へチャレンジすることになりました。

-仕事を進める上で、工事担任者以外にも関連する資格はありますか?

 電気工事士の他、防災無線などもやっているので無線技術士や高所作業者の資格なども推進しています。

-工事担任者の試験内容が仕事で役に立つようなことはありますか?

 仕事ではルーターやハブなど通信ケーブルの敷設もありますが、工事担任者の試験でも出てきました。これらに関連する知識は持っておいた方がよいです。また、データの圧縮方式については色々な機器にも使われており、新人が覚える内容の一つですが、これらも工事担任者の試験で出題されるので、仕事をする上で関連する幅広い知識を身に付けることができました。

-試験勉強はいつされたのですか?

 基本的には仕事が終わってから自己啓発としてやりましたが、資格取得に向けた会社の研修もあったのでそれも受けました。期間はだいたい2~3か月ぐらいですかね。技術科目の後半に出てくる工程管理は、仕事とは直接関係なく慣れていなかったので難しかったです。法規科目はひたすら覚えました。基礎科目ではベン図とかが出ましたが、遠い昔見た記憶がある程度でした(笑) 最初に基礎と法規を科目合格して2回目で技術も合格し、資格を取得しました。

-これから受験する皆さんに向けて一言お願いします。

 私自身が久しぶりに資格の勉強をしたので、最初は全然わからなかったのですが、コツコツ勉強して合格できました。それはうれしかったですし、がんばって資格を取ったら勉強の仕方もわかるし、次の資格をとろうというきっかけにもなります。皆さんも目標をもって挑戦してみてください!

-ありがとうございました。

【DATA】

  • 企業名:OKIクロステック 株式会社
  • 本社所在地:東京都中央区晴海1丁目8番11号
          晴海アイランドトリトンスクエアオフィスタワー
          Y棟26階
  • 設立:1960年5月 
  • 事業内容:電気工事業、電気通信工事業、消防施設工事業
         土木工事業、とび・土工工事業、石工事業、
         鋼構造物工事業、ほ装工事業、しゅんせつ工事業、
         水道施設工事業、管工事業
  • URL:https://www.oki-oxt.jp/