【工事担任者の仕事Vol.9】仕事での技術習得の前に基礎的な知識習得を


株式会社 野村通信設備
総務部 部長

高橋 正幸(たかはし まさゆき)さん

 今回は東京都内を中心に電気通信設備工事を行っている株式会社 野村通信設備にお邪魔しました。高橋さんは通信の伝送線路の専門で、海外勤務も経験された大ベテランです。長年の会社人生の経験を活かし、今の会社では社員の業務分析、人材育成などをされています。そんな高橋さんに仕事の内容や資格を取った経緯、通信の将来などについてお話を伺いました。

~経歴・資格取得について~

-はじめに高橋さんのご経歴を教えてください。

 私は理工学部電気科の出身で、大学時代は発振器などの弱電系の勉強をしていました。大学院を修了した後は、日本電信電話公社(現NTT)に入社し、電話局の線路(電話局同士をつなぐ線路や電話局からお客様の家までをつなぐ線路)の敷設、保守に携わっていました。当時はアナログの線路でしたが、その後ISDNとなり、今では光回線となっています。ちょうど光回線が出る1985年ころには光ケーブルの研究開発にも従事しました。
 40代のころには8年間タイに赴任しました。最初の3年間はJICA(国際協力機構)の専門家として現地の通信事業者に通信設備の保守の指導などを行い、残り5年間は通信網の増設工事に携わりました。その後、2003年に日本電話施設株式会社(NDS)に入りまして、データセンター工事や建物内線工事や携帯基地局工事の施工管理・安全管理を行いました。

-資格はNDSにおられるときに取られたのですね。

 はい、取得した資格は以下になります。

  • 第2種情報処理技術者(1991年)
  • 特定化学物質等作業主任者技能講習(2006年)
  • 第2種電気工事士(2006年)
  • 工事担任者AI・DD総合種(2008年)
  • 第一級陸上特殊無線技士(2009年)
  • 建設業経理士2級(2010年)
  • 電気通信主任技術者(伝送交換)(2012年)
  • 酸素欠乏硫化水素危険作業主任技術者(2017年)

 2006年からは毎年資格を取っていますが、各資格の基礎的な内容は共通するところがあるので、勉強する範囲がうまく省けました。

-資格取得に向けてどういう勉強をしましたか?

 出題される分野はある程度特定されるので、過去何年間かの過去問をひたすら解きました。テキストも買いましたが全部読むのは大変なので、過去問と併用して使用しました。

-資格を取ろうと思ったきっかけは何ですか?

 NTT在職中は、仕事に必要な技術は仕事で覚えればよいと考えていました。NDSで基地局関係の仕事を始めて、現場を指導する立場になった時、人に指導するにはしっかりとした知識がないとだめだなと思いました。今まで仕事を通して必要な技術は身に付けてきたつもりでしたが、いざ教えようとしたときに自分の知識がずいぶんまだら模様で抜けがあるなと感じたのです。そこで基礎的な知識をまんべんなく得るために、資格を取ることにしました。教科書に記載されている順で勉強すれば覚えやすく、基礎知識を短時間で身に付けるには、資格取得が役に立ちます。
 ただ、仕事を始めた若いときに取得して基礎知識を得ておいて、そこから技術を積み上げていけばよかったと反省しています。基礎知識がないところに技術を積み上げるよりも、基礎知識のすそ野をある程度広げて固めておいた方が、その上に技術を積み重ねることが楽になります。
 あと、採用の立場からのコメントになりますが、資格を持っていることでどれだけ基本的な技術を持っているかがわかるので、入社してくる人の技量を見極めることもできます。

-今の仕事で一緒に持っておいた方がよい資格はありますか

 職長の資格は持っていた方がいいです。グループで工事をする場合に、リーダーは何を考えなければならないか、何を指導しなければならないか、何を注意しなければならないかの基礎知識を得るための資格です。さらに安全衛生責任者の資格もあればよいです。こういう資格をもっていればリーダーになれます。

~今の仕事内容について~

-では今の会社について伺います。入社されたのはいつですか?

 2年前の2022年です。当時、私は派遣社員としてNDSにいましたが、NDSでやっていた管理業務を下請けの方でやってほしいとの話がありました。退職して仕事をやめてもよかったのですが、もう少し仕事はしていたいという思いがあったことと、ちょうど管理する仕事が元請から下請けになり、どんなことをすればよいかわからないと今の社長が困っておられたので、それだったら私がいきますよということで野村通信設備に入りました。

-そういったいきさつがあったのですね。今の業務はどういうものですか?

 施工管理といって、現場の人たちへの仕事の割り振りやトラブル時の対処方法の指導、日々の現場からの相談事項への対応などを行っています。

-社員が増えてきているので連絡が多くなり忙しくなってきているのではないですか?

 そうですね。しかも仕事の経験年数が人それぞれ違うので技術レベルに差があり、それをできるだけ平準化し、低い人を底上げしないといけません。そのため、基本的な知識を得てもらうためのルールブックの作成もやっています。そうしないと、新しく入社してきた人も業務ができませんので。

-新しく入社する人というのは、若手とか工事経験がない人ですか?

 いえ、工事経験のある人もです。わが社はNURO光の工事を請け負っているのですが、例えばNTT関連の仕事をしていた人でもNTTとNUROの工事では微妙にルールが違っていて、ルールの違いをしっかり教えないと間違った工事をしてしまうことになります。

-同じ回線工事でも会社毎にルールが違うのですね。

 扱う材料ややり方が異なるため、こっちの仕事ではこういうものを使ってこうやるのですよということを教えないといけないのです。二人一組で行う工事ならそれほど心配する必要はないですが、ほとんどの工事は一人で行います。班長について手伝いながら仕事を覚えるという期間は入社して1週間ぐらいです。違うルールでやっていた工事は知っているが、今のルールはわからないという人には短期間で教えないといけないのです。
 そのため、ポイントだけを抜き出したマニュアル作りをしています。NUROからもらうマニュアルは基本的なことからすべて網羅された分厚いマニュアルなのですが、工事経験者にとってはすべてが必要というわけではなく、効率よく仕事を覚えてもらうためには、NURO特有のルールを抜き出して記載する必要があります。

他にも業務をされているのですか?

 各社員のパフォーマンス分析もしています。実施した仕事の結果を分析して、どのあたりの技術が足りないかなどの指導を行っています。
 工事が完成できないで延期になった、キャンセルになったという場合、技術力が足りなかったためなのか、お客様の都合や周りの環境によるものなのかなど、理由を集め、社員の技量に関するところだけを抽出し、その社員のどこが弱いのかを分析します。

-どんどんフィードバックをかけていくとスキルアップしますね。

 この業界は人の出入りが結構激しく、技術の進歩も早いです。新しい設備が出たらそれを使いますし、新しい設備を使うと新しいトラブルも出ますので、常に分析をしてフィードバックをかけています。

~毎日の生活・通信の将来~

-毎日の生活についてお聞きします。

 朝9時に出社して、社員の業務分析や現場からの連絡対応を行います。たまに残業はありますが18時頃には退社しています。週5日勤務なのですが、工事は土日もあり事務所にはだれかいないといけないので、私は月曜日と金曜日が休みです。
 社員も週5日勤務ですが、土日必ず現場工事に出られる人がいるようにシフト体制を組んでいます。また、今年から保守の仕事も始めたため、お客様からの故障修理依頼があると元請さん経由で連絡があり、年末年始でも対応します。

インフラを支えている仕事なので何かあれば休みの日でも対応するのですね。工事の量も増えているのですか?

 コロナが始まった当初はテレワークなどの普及により、通信工事が相当増えました。今は一通りいきわたったようで一段落しています。

将来的にはどうですか?

 IoTなどいろいろなものがネットワークにつながるとトラヒック量が増え、ますます通信の高速化が求められます。わが社は有線通信の工事を行う会社なので、例えば車がネットワークにつながっても我々の仕事が増えるわけではないですが、すべての通信が無線になるということにはならないと考えています。また、有線回線も技術の進歩により光ファイバーの両端につける装置を替えればより高速化されていきますので、今後も有線系の通信工事は基幹系の回線を中心にあるのだと思います。

~最後に~

最後に一言お願いします。

 自分が就職したい仕事の分野の資格をとれば、資格をとるためにそれだけ努力をしたということを周りの人にもわかってもらえます。また、仕事で技術を磨く前に基礎となる知識を身に付けられるという点は自分自身にとっても有利となりますので、資格を取っておくことをお勧めします。

ありがとうございました。

【DATA】

  • 企業名:株式会社 野村通信設備
  • 本社所在地:東京都八王子市椚田町560-30
  • 設立:2012年6月 
  • 事業内容:電気通信工事業
  • URL:https://ntsnomurae.wixsite.com/nomutuu