【工事担任者の仕事Vol.15】資格を武器に何でもできる技術者に

株式会社シーキューブフィールド
静岡エリア本部 フィールド設備部
東部技術センター 下田事業所
第二メンテナンスサポート課
谷田部 歌麿(やたべ うたまろ)さん

 

 今回は、愛知、静岡、三重で電気通信工事業を営んでいる株式会社シーキューブフィールドの下田事業所にお邪魔しました。
 谷田部さんは、東京でケーブルテレビ会社の営業職を経験した後、技術職として地元の伊豆に戻られました。数学、物理が苦手で工事担任者資格の取得には苦労されましたが、今後は上位資格である総合通信の他、無線や電気の資格取得も目指しています。少数精鋭の下田事業所での仕事内容や苦労話などを交え、資格への思い、考えを語っていただきました。

~東京での営業職から伊豆での技術職へ~

-シーキューブフィールドにはいつ入られたのですか?

 2020年に入社しましたので今年で5年目です。入社当時はシーキューブ静岡という会社でしたが、2024年にシーキューブ愛知、シーキューブ三重と合弁し、今の社名となっています。個人宅や法人のオフィスなどのインターネット回線や電話回線の保守、修理を担当しています。

-シーキューブフィールドに入った理由を教えてください。

 私は高校も大学も文系で、文学部社会学科を卒業しました。数学はあまり得意ではなかったのですが、ゲームやインターネットが好きで、小学生の頃からパソコンには日常的に触れていたこともあり、2014年にケーブルテレビ会社に入社しました。テレビ、インターネット、電話回線を売る営業マンとして東京で働き、そこで通信の仕組みなど基礎的なことも勉強させてもらいました。
 30才の頃、修善寺にいる祖父が亡くなったのですが、そこで最期を看取った父親の様子を見たときに、将来、家族のことを考えると長男である自分も東京ではなく地元の伊豆で働くのが良いのかなと思うようになりました。
 未経験の業界に行くよりも業務イメージがつく電気や通信系の会社を地元で探そうとしましたが、伊豆での求人は、建設、飲食、介護、観光といった業種が多く、それ以外の求人はなかなかないのが実状です。そのようなときにインターネットで求人検索をしたところ、シーキューブ静岡の下田事業所の求人を見つけることができました。

-採用にあたってはケーブルテレビ会社での仕事の経験が活かせたのですね。

 そうですね。ケーブルテレビ会社での勤務経験があることを認めてくれたのだと思います。私も、仕事のイメージが違ってすぐに辞めてしまうようなことがあると、この先かなり大変かと思いましたので、ここならやっていけるというイメージを持ってこの会社を選びました。

-営業職から通信工事会社の工事業務に変わって大変ではなかったですか?

 仕事のイメージはある程度ついていたので平気でしたが、バケット車(高所作業車)がオートマチック車ではなくマニュアル車だったことが面食らいました。車の免許を取得して十年以上マニュアル車を運転したことがなかったので、最初はエンストばかりして、「会社辞めようかな」と思ったくらいです。(笑)
 入社してすぐに「最近の若者はマニュアル車の免許を持っていないので、オートマチック車に替えませんか」と部長に進言しました。今後は時代の流れもあり、オートマチック車に替わっていくようです。

-入社してすぐは見習い期間があるのですか?

 はい。先輩社員についていき、お客様宅のインターネットや固定電話などの保守業務を実践で学びました。ただ、ビジネス向けの大規模なネットワーク回線などは体系的に学んでほしいということで、当時の本社(静岡県清水町)にて1年間の研修を受けました。その後、宅内保守を担当する新人10名程度が愛知の研修所にて8か月間かけて基礎知識から実務訓練までの研修を受けました。この研修期間中に第二級アナログ通信と第二級デジタル通信を取得しました。

~小さな事業所だから求められるオールマイティーな人材~

-研修が終わって3年目ですが、苦労したこととか大変だったというエピソードはありますか?

 保守や故障修理は突発的な案件が多く、24時間365日での対応が求められます。宿直はないですが、自宅待機するメンバーをローテーションで決めています。回線が切れた、装置が壊れたなどの連絡があると、夜中でも台風の時でも対応しないといけないので、きついなと思うときはあります。頻繁に呼び出しがあるわけではないですが、湿気が多い梅雨や雨風が強い時期は回線が腐食したり切断されたりして、故障が多くなる傾向です。

-故障するとお客様は現象だけを話されると思いますが、調べる手順などはあるのですか?

 切り分けの手順はあります。ただ、経験が浅いと手順通りやってもなかなか原因を見つけられず、時間がかかっていました。最初の頃は故障内容や測定箇所、測定値などをノートに書いてノウハウを貯めていきましたし、わからないことは先輩に助言をもらうこともありました。
 最近は少しわかってきて、訪問する前に当たりを付けて事前に確認をするなど、少しは成長したなと思います。

-今の仕事の楽しいところ、やりがいなどを教えてください

 お客様が困っているという状況を解決できるというのが、やりがいの1つです。営業の頃は契約数などの数字を求められるので、お客様が欲しいかどうかわからなくても商品を売らないといけないという心理的な負担が大きかったのですが、今の仕事ではお客様が困っていてそれを直すという大前提があり、直ったときにはありがとうと言われるので、気持ちの上でもやりやすい仕事で、長く続けたいと思っています。

-宅内の故障修理以外の業務もあるのですか?

 はい。携帯電話基地局に接続される光ファイバーが切れたときの故障修理などがあります。私の部署の仕事ではないのですが、下田事業所は人数が少ないので、案件が重なった時は一丸となって全員で対処します。入社時に「オールマイティーな存在になってほしい」と言われていることもあり、他の事業所だと経験できない業務もさせてもらっています。

~資格の勉強は独学で、インターネットやスマホのアプリをフル活用~

-研修期間中に資格を取得されていますが、資格取得のための研修もあったのですか?

 工事担任者の参考書を会社から支給されましたが、勉強は独学でした。文系出身ということもあり電気のことは全く分からず、初めて参考書を見たときに「これは大変だな」と思いました。
 ただ、二級の資格で合格率が低いわけではないことから、時間をかけて勉強すればなんとかなると思いながら勉強しました。
 独学で参考書を読むだけでは厳しいので、YouTubeなどの解説動画を活用したり、スマホで工事担任者の試験問題アプリを見つけ、電車移動などの隙間時間に繰り返したりして勉強しました。工事担任者はポピュラーな資格なので、インターネット上に回答や解説がたくさんあり非常に助かりました。

-資格の勉強はどれくらいやられたのですか?

 半年くらい前から始めましたが、働きながらなので1日の勉強時間はそれほど多くなく、集中して取り組んだのは試験の3週間~1か月前くらいからです。テキストを一通り読み込み、最後に追い込みをかけました。
 「法規」科目はひたすら暗記をしました。「技術」科目は業務で触れていた内容が多く、ある程度イメージができ、普段の知識の補完もできたので勉強しやすかったです。「基礎」科目は数学も物理も苦手ということもあり、対策というよりも一からの勉強で一番時間をかけました。

-二級の試験はCBT方式でいつでも受験できますが、試験日はどう設定したのですか?

 自分で設定したわけではなく、会社が日を定めて申込んでいました。目標の日が定まっていたので、ダラダラとやらなくてすみました。
 勉強は相当やりこんだという自負があり、試験当日は一緒に受験した仲間の中では一番早く終わり合格もしたので、やり切ったという思いがあります。

-他に目指している資格はありますか?

 会社から今年の7月に第二級陸上無線技士を取るように言われています。爪木崎灯台に海上保安庁の通信設備があり、そのメンテナンスや故障修理を行うために必要な資格です。下田事業所には資格保有者がおらず、私に資格を取るようにとの話がきました。
 また、将来関われる仕事の幅を広げるため、電気工事士の取得も考えています。
資格を取れば、「新しい仕事ができる」、「この仕事は私にしかできない」、「将来は部下の指導ができる」、「昇進の要件になる」といったことがあるので、今後も資格は取っていきたいと思っています。

-合格した時には会社から報奨金や手当などは出るのですか?

 工事担任者は、仕事をするにあたり持っていないといけない当たり前の資格のため、報奨金や手当などはないです。工事担任者以外では、合格すると一時金がもらえる資格があります。

-就職活動の面接でも資格を持っているかどうかで違いますか?

 資格を持っているかは必ず聞かれると思います。転職の際は職務経歴書を提出することがありますが、そこにも資格を記載する欄があります。その時に、運転免許しか持っていないと、アピールする武器がなく、寂しいところがあります。
 最近の就職状況は、ほとんどの業種で売手市場だとは思いますが、資格を持って自分の強みをさらに売り出すことで、採用や給与面で差が出てくるのだと思います。
 勉強の時間が取れる学生時代は、社会人からすると非常に魅力的だと今更になって思います。働いてからだと、自分の時間が持ちにくくなるので資格を取るのも大変です。

-まだどの会社に入るかわからない学生は、どんな資格を取ればよいでしょうか。

 学生時代は何の資格がどう役に立つかという明確なビジョンを持つことは難しいと思います。そのような中では、インターンシップを活用して職場体験をするのがよいのではないでしょうか。どういう仕事かを体験することで、取るべき資格も見えてくるかと思います。
 また、転職した私からするといろいろな資格を持っていた方が、会社を辞める時のリスクヘッジになりますし、次の会社を探すときの幅も広がります。自分を守るためにも資格は持っておくべきです。

-ありがとうございました。

【DATA】

  • 企業名:株式会社シーキューブフィールド
  • 本社所在地:愛知県春日井市田楽町字更屋敷1485番6
  • 設立:1992年2月
  • 事業内容:電気通信設備工事
    ・電柱などのNTT通信インフラ設備の構築
    ・お客様宅内でのNTT光ケーブル配線などの開通工事
    ・事故や災害時にお客様へのNTT通信回線を復旧する工事
    ・一般通信設備(LANケーブル配線、Wi-Fi)の構築、保守
  • URL:https://www.c-cube-field.co.jp/