令和2年「情報通信エンジニア」優良団体と意見交換会を開催(企業の部)

今年はオンラインで!

 電気通信設備とネットワークを接続する工事を行う際に必要とされる国家資格「工事担任者」の知識や技術の向上を目的に作られた制度が情報通信エンジニア委員会(事務局:日本データ通信協会)「情報通信エンジニア」です。
 情報通信エンジニア委員会では情報通信エンジニアの育成と資格取得を支援している団体を「情報通信エンジニア優良団体」として毎年表彰しており、今年も企業5団体、学校3団体が受賞しました。
 例年は事務局が各団体に直接お伺いし、表彰状をお渡しして意見交換を行う場を持っているのですが、新型コロナウイルス感染症が各地で猛威を振るう今年はそれもかなわず、代替措置として各団体とオンライン会議ツールで結ぶ意見交換会実施と相成りました。特異な平成2年度を象徴するような意見交換会でしたが、短い時間の中で各社、各校様の奮戦の様が垣間見える有意義な時間となりました。

 こちらの記事では、企業の部」受賞団体のうち4社様をご紹介します。

(というわけで、今年のお写真の多くはオンライン会議の画面をキャプチャーしています。品質の不揃いは何卒ご容赦のほどを!)

日本データ通信協会側の出席者。左より人材研修部長の小川 浩、
専務理事の髙嶋幹夫、情報通信エンジニア委員会事務局長の信國 宏

■第1位:扶桑電通株式会社(資格者54名)

左より人材育成室長の佐藤伸行氏、エンジニアリング統括部長代理の間宮伸之氏、エンジニアリング統括部長の上地浩夫氏、サポートサービス本部本部長付の石川守雄氏

 1948年の創業から70年、「ネットワーク」、「ソリューション」、「ファシリティ」の3つの分野を事業ドメインに掲げて多種多様な企業向けソリューションやサービスを提供している扶桑電通㈱は、現行中期経営計画の重点分野の一つに「企業成長のための人材育成」を掲げるなど人材育成の重要性を認識し続けています。
 そんな同社だからこそというべきでしょうか、早くから社員教育に「情報通信エンジニア」取得を奨励し、「企業の部」では毎年日本で一番この資格保持者を輩出し続けています。
 お話を聞くと今年は新型コロナウイルスが理由でオンライン教育が進み、これが定着していく様子もあるようです。佐藤人材育成室長は次のように語っています。

「社内の研修はほとんど集合研修ができなくて、Webを用いたオンライン研修に切り替えています。今年は4月の新入社員研修からオンライン研修に切り替えざるを得ない状況です。今年度はこのまま進むと思いますが、来年度以降もオンラインでできる部分はオンラインに切り替えていこうかなとも考えているところです。」

 教育を事業の根幹に置く扶桑電通様の姿勢には毎年お話を伺うたびに感銘を受けます。

「次世代無線技術の一つでありますWi-Fi6規格やローカル5Gなどを新商材として、今後技術力を強化していくべき分野だと思っています。そのためにも、やはり教育の充実が必要だと認識しています。また、弊社技術部門では工事担任者資格を社員の必須資格としており、新入社員から日本データ通信協会様の工事担任者養成課程「eLPIT」(えるぴっと)などを活用して取得を進めています。eラーニングは積極的に活用しようとしていまして、今年もすでに「eLPIT」で1名合格者を出しています。」(上地エンジニアリング統括部長)

 今回の意見交換会でも同社の皆様からは多数の貴重なご意見をいただきました。「情報通信エンジニア」もさらに有効にご活用いただけるよう内容の充実を図っていきたいと考えています。

■第2位:株式会社TOSYS(資格者38名)

左より池田浩士担当部長、笠井澄人社長

 信越地方を代表する電気通信工事、電気設備事業者である㈱TOSYS(トーシス)も「情報通信エンジニア」で社員の腕を磨き続ける事業者の代表格です。

 意見交換会の中で事務局から工事担任者の資格名称が分かりやすいものに変更される予定であること、「情報通信エンジニア」の対象者をこれまでの工事担任者に加えて主任技術者や無線従事者に広げる意向を紹介したところ、笠井社長からは賛同のお声を頂戴することができました。

「工事担任者の資格名称の変更はとてもよいと思います。若い人たちには「工事担任者」という名称が分かりにくいという話は私も以前から聞いていましたし、それが分かりやすくなることで学生の皆さんの興味も試験に対する湧くのではないでしょうか。
 また「情報通信エンジニア」の対象者に主任技術者の資格保持者なども加わり、すそ野が広がるのは賛成です。よい方向に行くことを確信しています」(笠井社長)

 笠井社長には「情報通信エンジニア」についていくつものご意見をいただきました。

「例えば、現在の制度では、資格継続のためにレポート提出を求めていますが、それがボリューム的にも少し重たいという気がします。別の方法も検討いただきとっつきやすさが増せば、さらに活性化するのではないかとも思います。」

 新型コロナウイルスの悪影響はTOSYS様には限定的だったそうです。
「業績への影響を不安視していましたが、固定網、モバイル網系の設備需要には幸い大きな影響はありませんでした。夏からは工事のペースは元に戻っている印象で、リモートワークやワーケーションに起因する新しい需要も生じています。」(笠井社長)

 TOSYS様にはこれからも「情報通信エンジニア」をご活用いただき、信越のインフラストラクチャを支え続ける人材の輩出を願ってやみません。

■第3位:大和電設工業株式会社(資格者33名)

左より栩谷泰輝社長、渡辺卓也執行役員

 大和電設工業㈱は、昭和26年の創業以来京都を中心に地元に根を張った事業展開を続ける電気通信工事会社です。2代目社長を務めてきた栩谷(とちたに)晴雄氏が会長となり、代わって新社長に就任した栩谷泰輝氏が、大和電設工業のさらなる発展に向けて同社をリードしています。

「今年は民需は下がっていますが、公共分野はGIGAスクール構想などのおかげで案件数が確保できており、幸い全体としては売上が大きく落ち込むという事態には至っていません。教育については、とくに工事担任者資格は必須の基礎知識として重視しており、入社後にすぐ取得をさせていますので、20代、30代の社員を中心に広く保持しているのが現状です。」(栩谷社長)

そんな中で構造的な課題も指摘いただきました。

「端末機器の性能が上がっており、故障修理も部品の交換だけで済むようなケースが増えています。弊社は過去、電話会社の仕事を中心に取組んできましたので、はんだ付けの実務が役に立つ部分もまだ残ってはいますが、電気抵抗を考えたり、基板を如何に触るかといった工事担任者で学ぶような知識を直接活かす場面が少なくなっているのも事実です。これからの教育はそうした現状にも対応していく必要があると考えています。」(栩谷社長)

 栩谷社長が実感する実務の変化を見据え、「情報通信エンジニア」も新しい知識を積極的に取り入れて、現場のニーズに応える資格制度として伸びていく必要があります。そのためにも皆様には、ぜひ今後ともお力添えをいただければと思います。

■第4位:株式会社ベータテック(資格者23名)

前列左より大竹丈夫社長、大竹佳子取締役、後列左より大橋貴美雄取締役、上野友則取締役

 ㈱ベータテックは無線通信を中心に幅広い電気通信設備の設置コンサルティング、施工、試験、保守点検を手掛ける事業者ですが、その技術力を活かし、様々な企業に対する技術教育の提供も重要な仕事となってます。今年の意見交換会でも、大竹丈夫社長と事務局との間では、電気通信分野の教育にまつわる話題に花が咲きました。

「電気通信工事や建設工事に携わる人材に求められる資格は非常に幅が広く、一つ一つ取っていくと一人の社員が持っている資格は大変な数になります。私としては、ぜひ社員には工事担任者のような国家試験への挑戦を重視してもらいたいと考えています」と大竹社長は公的資格取得の重要性を語ってくれましたが、そもそも電気通信分野に目を向ける若者が必ずしも潤沢ではない現実が一方にはあり、業界全体に関わる大きな課題になっています。

「電気通信分野に人が集まりにくい状況は残念ながら変わっていません。例えば工業高校の電気科の生徒さんや先生方も、コンピュータやロボットなどに目が向く傾向があり、就職先として電気通信関係の仕事には、あまり勧めていただけていないのかなという印象を持っています。大学も同様です。」(大竹社長)


 様々な資格を取得しないと担当できない工事を数多く請け負う大竹社長からすれば、「資格を保持することで他の資格取得にもメリットがあるような仕組みが増えるといいなと感じています」とおっしゃるのは偽らざる本心でしょう。

 「情報通信エンジニア」も工事担任者のスキルアップという基本的な役割とともに、情報通信に関わる様々なエンジニアの実力向上のための仕掛けとして一層お役に立てるよう、さらなる発展を遂げていきたいと考えています。

(文責:『日本データ通信』編集部)