challenge!  東京都立府中工業高等学校

IT社会に貢献できる技術者の育成をめざして

工事担任者試験 全員受験への取り組み

東京都立府中工業高等学校
情報技術科教諭 菅沼 卓爾

学校紹介

 本校は昭和37年に設立された、都立高校で2校しかない「情報技術科」を有する工業高校です。
 現在は「機械科」「工業技術科」「情報技術科」各1クラス、「電気科」2クラスの計5クラス体制で専門教育を行っています。
 本校は緑の多い東京の西部に位置しており、生徒は地元府中市をはじめ、八王子など多摩地区全域から通って来ます。素朴で素直な生徒が多く、クラブ活動・資格取得など毎日活発な高校生活を送っています。
 また、「地元に根ざした学校」として、地元小学校・中学校との交流、地域自治会・商工会議所との連携行事等も毎年盛んに行っております。今年度は新たな取り組みとして、本校を応援してくれる地元「サーポーター企業」を募り、50社以上が参加してくれました。本校はこれらの活動で地域から期待され、応援される学校となっており、本校が目指す「社会に出て、自信を持って活躍できる生徒の育成」につながっています。

工事担任者試験への取り組み

 本校は以前から、様々な資格取得のための取り組みを行って来ました。電気科では「第2種電気工事士」、機械系では「第2級旋盤技能検定」など、都内ではトップクラスの合格率を誇ります。
 そういった中で、情報技術科では昨年度から「工事担任者DD3種」を3年生全員に受験させる取り組みを始めました。この取り組みを始めた理由は以下の通りです。

IoTをはじめとする、近年の急速な通信技術の進歩に対応出来る基礎的な知識を習得させる

 今や殆どの家庭がFTTH、WiFiによるインターネットを利用している時代、生徒はスマホの操作は誰より得意にもかかわらず、「変調」、「伝送」といったデータ通信の「基本」をまったく知らない生徒が多い。通信の基礎的な学習が必要である。

ソフトウェア・ハードウェアをバランスよく学習させる

 情報系の教育は、カリキュラム上プログラミング要素を含んだ学習に偏ることが多く、ハードウェアや通信関係の学習をさせることが難しい。これからの時代、ソフトウェアのみならず通信技術・ハードウェア技術といった分野の学習が不可欠である。

生徒のチャレンジ精神の育成

 工事担任者(DD3種)の問題は、我々が普段授業で教える内容が比較的多く含まれてることや、モデムなど今や一般家庭の身近な「電化製品」として生徒がイメージしやすいことから、ポイントを押さえて学習させれば比較的容易に合格させることができる。生徒は「国家試験合格」を胸に、次のステップへ挑戦するようになる。

DD3種全員受験に向けて

 全員受験をさせるために、2年生の2学期頃より概要を説明、そして対策を始めました。ハードウェア技術、電子回路といった授業の中で、関係する分野の学習をしました。当初、「参考書」を購入させましたが、授業の中では説明しきれない部分が多く、問題集を解きながら覚える形を取りました。「法規」に関しては各自で学習させ、授業の中での指導は最小限に抑えました。
 今回の指導の中で、生徒は「技術」「法規」といった科目よりも、計算問題がある「基礎」が苦手ということも意外な結果でした。

受験結果

 平成29年度春期の試験で3年生1クラス32名が受験をしました。結果は11名合格、15名が科目合格、6名が不合格となりました。また合格できなかった生徒の中で9名の生徒が秋期の試験に再チャレンジをし、認定校の免除を適用した1人を含め、合計21名が資格を取得しました。
翌年の平成30年度は春期に28名が受験し16名が合格、秋期に4名が追加合格となりました。
 前年度より春期の合格率は上がりましたが、再チャレンジをする生徒が少なく、科目合格が無駄になってしまった生徒が多くいたのがとても残念でした。受験料(8,700円)の負担など、生徒の諸事情もあるかと思います。今後頑張って合格してほしと思います。

まとめ・今後の課題

 今回のDD3種受験で、科全体で取り組む体制が整ったことや、生徒が一つの大きな目標を持って高校生活を送れるようになったことが大きな成果だと思います。
 また今後の課題として、生徒の受験料負担の問題や、不合格だった生徒の再チャレンジに向けてのフォローをどのようにするか、今後新しい資格に向けての取り組みをどうするか、等があります。
 本科は情報技術科なので、IT系の資格、例えばITパスポート、さらには基本情報といった資格への対応も今後考えていけたらと思います。

合格者の声

情報技術科3年
樫野悠利

 私が工事担任者の資格を取ろうと思ったきっかけは、高校時代一つだけでも国家資格を取りたかったこと、また将来仕事で役立つ資格だと思ったからです。2年生の頃から少しずつ勉強しながら、試験直前では問題を何度も繰り返し確認しました。特に「法規」は、問題に出てくる文章が長く、よく似た文章が多いので、覚えるのが大変でした。結果は残念ながら「技術・理論」を落としてしまい、11月に再チャレンジをしました。既に基礎、法規が合格していたので、一つの科目に集中して勉強することができ、何とか二回目で合格することが出来ました。この試験で勉強した知識が将来 仕事で役に立てたらいいなと思います。

情報技術科3年
清水貴文

 私がこの資格を取ろうと思った理由は、以前から情報通信に興味があったことと、将来仕事をするうえで役に立つかもしれないと思ったからです。この資格の勉強をする際、特に2年生で勉強した専門科目の内容が役に立ちました。試験対策としてはDD3種の過去問題を何度も解き、分からないところは参考書を見たりインターネットで検索したりしました。試験直前の練習問題で7割解けた時は、自分は合格できるんじゃないかと自信がわき、モチベーションも上がりました。