トラストサービス推進フォーラムについて

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トラストサービス推進フォーラム
副会長
三菱電機株式会社
宮崎 一哉 氏

民間の力を結集し、さらに官・各種団体の絶大な支援を得て、安心・安全なデータ主導社会構築のための基盤づくりに貢献しようとするのが「トラストサービス推進フォーラム」である。同フォーラムの副会長・宮崎一哉氏にフォーラム成立の背景やこれからの活動計画について語っていただいた。

■はじめに

 先ほど設立総会において、「トラストサービス推進フォーラム(TSF)」の設立が正式に承認された。ここでは、フォーラム設立の背景、目的、組織の改正、今後の計画、ご入会について紹介をしたい。

■フォーラム設立の背景―デジタル時代の新しい社会構築に向う世界

 わが国ではe-Japan戦略策定以来、世界でもっとも整ったインフラ、インターネットの利用環境の一つが構築されており、大量のデータが流通し、取引や議論がデジタル情報に依存する社会ができあがりつつある。
デジタル技術は情報処理の高度化、情報集積、劣化のないデータ保管を容易に実現する。これらのデータは通信によって空間を超え、瞬時に、また時間を超えて共有することができ、あらゆるものがデジタルで記録され保存される社会になっている。これをデジタル・ファーストと呼ぶこともあるが、そういった時代になりつつある。
 こうした技術を高度に活用し、イノベーションを起こすことによって超スマート社会の到来が現実のものとなってきた。我が国は政策として「Society 5.0」を掲げており、サイバー空間とフィジカル空間とを高度に融合させ、その結果創出される新たな価値によって経済発展と社会的課題の解決とを両立していくことを目指している。
 一方でEUでは、「eIDAS((Electronic Identification and Trust Services Regulation))」という規則を作り、地域や業界を横断するデジタル単一市場の構築を謳っており、これによって電子的なトラストサービスを確立し、その結果年間5兆円規模の新たな市場を創出しようとしている。

 「eIDAS規則」では、トラストサービスを法的に定義している。その中には電子署名、タイムスタンプ、国民ID(e-ID)や ウエッ ブサイト認証確認 サービスWebのAuthentication、電子登録配布サービス的配送(e-Ddelivery)、日本の社印に相当するeE-Seilなどがあり、これらを定義して、その周囲に様々なトラストアプリケーションを構築していこうという枠組みを考えている。
 我々も、日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)、日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)、 電子認証局会議(CAC)とかれこれ6,7年前に議論を行ったことがあり、そのときに電子証明基盤についてしっかりと考えていかなればならないという認識を得た。電子署名、認証、タイムスタンプ等の技術を高度に活用し、様々な事象を電子的に証明できるようにするのが電子証明基盤である。そうしたものを作っていく必要があると考えるようになった。
 タイムビジネス協議会では時刻認証基盤について考察してきた。その他に電子署名基盤や、電子認証基盤、があり、それらの構成要素に トラストフレームワーク、や電子記録マネジメント基盤、および公開鍵基盤などの基盤があるのだが、従来の時刻認証基盤の枠を超え、更に大きな枠組みとして電子証明の基盤を考えていこうと我々は考察を進めてきた。

図表1:電子証明基盤
出所:トラストサービス推進フォーラム

 こうした検討が今回のTSF発足に結びついている。IoTやAI技術がリアル世界とサイバー空間を融合し、ビッグデータを活用したサービスが新たな価値や利便性をもたらす一方で、従来から注目されていた安全性に加え、そこで扱われるデータやサービス自体の信頼性が問題となってくる。システムやデータを保護する技術や製品・サービスはいろいろとあるが、最終的にデータの価値を判断するユーザ自身が、ネットの向こう側にいる相手や、そこから送られてくるデータを信頼できるか否かが重要な課題となってくる。
 そこで、その信頼の根拠拠点 となる相手の認証や、データやサービス自体の非改ざん性、正当性を確認するための手段を提供する仕組み、そのための基盤が必要となってくるというように考えた。

■フォーラム設立の目的―トラストサービスを実現する環境の整理・推進

 ユーザが情報を収集して、データの信頼性を判断することが非常に難しい状況で、ユーザに代わって情報を収集し、判断を行う材料を提供する仕組みがまず必要である。この仕組みを我々はトラストサービスと呼ぶが、そのあり方、ユーザが安心してサービスを選択できる仕組みを検討して、それを実現する環境を整理し推進する。これが当面のフォーラムの目的である。
 そのために、まずは信頼できるサービスを可視化し、ユーザによる判断あるいは検証を可能とするための手段が必要である。欧州ではそのための手段として「トラステッドリスト」を整備しており、我々もこれに倣って日本版のトラステッドリストの構築を試みようと思う。サービスがどのような水準にあり、信頼に足るものかどうかをリスト化し、皆で共有できるものを作りたいと考えている。
 さらに、増大するデジタル情報を長期に保管したり、国境を超えてやりとりしたりすることが日常となる時代において、産学官の連携を行うことはもちろん、欧州の専門機関など海外とも協調して時間・空間を超えて信頼を提供する基盤とスキームの構築を目指す。
 これらが、トラストサービス推進フォーラムが目指す目的である。

■トラストサービス推進フォーラム設立に至る経緯

 2002年1月、欧州の電子署名指令や日本の電子署名法などが成立したて間もない時期に「タイムビジネス研究会」を設立した。この研究会を経て、タイムスタンプの我が国での推進について検討していくため、20062002年6月に「タイムビジネス推進協議会(TBF)」を立ち上げた。こうした一連の活動によって、「e-文書法」、「改正電子帳簿保存法」の成立に幾分なりとも寄与ができたのではないかと考えている。総務省には「タイムビジネスに係る指針」を正式に出していただき、一方で日本データ通信協会では「タイムビジネス信頼・安心認定制度」を立ち上げた。
 これを機会に「推進」の文字をとって2006年7月に「タイムビジネス協議会(TBF)」を設立した。様々な活動を経て、同協議会の10周年に当たる2016年9月には「e-トラストサービス宣言」を出し、トラストサービスの推進へと舵を切ったのである。これに続く1年間、関係4団体(TBF、JIPDEC、JNSA、CAC)で協議を行い、このたびトラストサービス推進フォーラム協議会の設立へと漕ぎ着けた次第である。

図表2:TBFからTSF設立までの経緯
出所:トラストサービス推進フォーラム

トラストサービス推進フォーラムの組織

 フォーラムには、最高顧問に大橋先生、顧問に須藤先生、新たに米丸先生に加わっていただき、会長に手塚悟先生にご就任をいただいた。副会長は民間企業から人選をすることとした。
 会議体としては、総会の下に幹事会、その下に企画運営部会を持ち、トラストサービスの在り方検討ワーキンググループ、調査研究ワーキンググループ、普及促進ワーキンググループの3つのワーキンググループを置く構成である。事務局を日本データ通信協会が務め、オブザーバーに総務省、情報通信研究機構に入っていただく。幹事会員が12社、賛助会員11社でスタートし、特別会員として個人の有識者とJIPDEC、JNSA、CACの皆様にご参加願う。

■今後の活動スケジュール

 スケジュールについては、10年を一区切りとして考えていきたい。昨年度最初 の1年間を準備期間とし、3年ずつ3つの期に分ける。最初の第1期では基本的なトラストサービスの枠組みを検討する。次の第2期はその結果を業界に展開し、第3期でサービスの拡充、普及定着を図る計画である。第3期には、データを業種別に共同で管理することによって改ざんやその他の不正を防ぐ仕組みを作れないかということも考えている。

図表3:トラストサービス推進フォーラムの活動スケジュール
出所:トラストサービス推進フォーラム

 第1期3年間の課題だが、まずは全体の枠組みを定義することから始めていく。日本には、まだトラストサービスの定義が存在していないので最初の仕事として重要である。また、これはまだ案の段階ではあるが、トラストサービス基盤という概念を考え、その中で要素的なトラストサービスと、複合的なサービスを位置づけていく。要素的なサービスには、これまでのタイムスタンプ局や認証局があり、複合サービスとして電子契約や知財保護の仕組みができる。その周りに各種の業界向けの様々なサービスの仕方が考えられるのではないかという形を想定している。これはまだ一つの案に過ぎないので、ワーキンググループ等の活動を通して議論を深めていきたい。

図表4:日本のトラストサービス(案)
出所:トラストサービス推進フォーラム

■トラステッドリストの構築

 次にトラステッドリストについてである。トラステッドリストは欧州で考案された制度だが、その日本版を構想し、試験運用をしていくことも計画している。まずは「欧州電気通信標準化機構(ETSI)」との連携を確立していきたいし、将来的には日本版のトラステッドリストを欧州版のリストと相互承認できるようにしていきたい。
 EUの担当者や関係者との間では、すでに情報交換を始めているが、そうしたなかで日本と欧州のサービスをしっかりと調査しマッピングを行うことが必要だとアドバイスを受けている。つまり、トラステッドリストにまつわる法制度、適合性評価機関の認定基準、認証局の監査基準、技術基準、その他の運用基準について明らかにし、異同を整理するということである。それらの情報を基に相互承認を行うためのベースを明確にしていきたい。
 欧州ではトラストサービスの枠組みがEUによって「eIDAS」という規則にまとめられおり、それに基づいて各国が体制を整えている。国の監督機関や認定機関、適合性評価機関が整備され、トラストサービスの提供者は国の評価を受け、その結果がトラステッドリストに掲載されるという仕組みができあがっているのである。ここには国の電子証明がついて、リストの確かさを国が保証するというようになっている。このリストをEUが集め、EUがそれら全体のリストを承認し、保証する。
 「eIDAS」では、技術基準や運用基準も規格として整備されており、日本もこれらの活動を参考にしながら進めていきたい。
マッピング調査の結果は、日本とEUの間で年2回程度の頻度で開催されている「日EU・ICT戦略ワークショップ」(日本側の事務局は総務省)にインプットをしていきたいと考えている。
 これと並行して産業界におけるトラステッドサービスの必要性を考えていきたい。初年度はとくに電子契約について考えていく。リスク分析やヒアリング調査等を通じて現状の問題点を分析していき、第2期には日本版のトラステッドリストを試験運用にまで持っていきたいと考えている。
 なお、フォーラムでは毎年、報告書やあるいは提言書を出し、さらに講演会も随時開催していく予定である。報告書を取りまとめるための報告会は随時開催していく。それとは別に普及啓発のためのセミナーの開催を検討しており、関係省庁と連携をしながら進めていきたい。

図表5:第1期スケジュール
出所:トラストサービス推進フォーラム

■初年度の活動予定

(1)企画運営部会
2018年度は3つのワーキンググループを中心に次のような動きを行っていく予定である。
企画運営部会では、全体の企画運営を検討していくとともに、国内外を含む様々な団体との連携を図っていく。これによって我が国におけるトラストサービスの定義の確立、要件整備を進めていく。欧州サイドからはe-EIDに対する検討の必要性が指摘されており、そうしたこともあって「地方公共団体情報システム機構(J-LIS)」等とも連携を深めたい。
検討の結果は、日EU・ICT戦略ワークショップ等において欧州と共有していくことを想定している。いずれはEUとの相互承認をしたいと考えているので、「欧州電気通信標準化機構(ETSI)」等関連団体と連携を図っていく。

(2)トラストサービスの在り方検討WG
トラストサービスの在り方検討WGでは、枠組みを定義し、マッピング作業を行う。それに伴い欧州電気通信標準化機構(ETSI)の企画規格書やeIDASの下位に位置付けられる実施法などを翻訳する作業を行いたいから始めたい。

(3)普及促進WG
普及促進WGでは、「タイムビジネス協議会(TBF)」の活動を引き継ぎ、電子帳簿保存法の関連に対応していく。また工業所有権情報・研修館(INPIT)インピットのタイムスタンプ保管サービスであるとか関連などで、様々なセミナーの協力を検討している。トラストサービス全体に対しても電子契約サービス事業者との意見交換を行うなど個別分野での必要性調査や啓発活動等を行っていく。

(4)調査研究WG
調査研究WGでは、リモート署名、真正性保証、署名検証等のガイドラインを検討していこうと考えている。
検討にあたり、可能な部分についてはJNSAの電子署名ワーキンググループやトラスト技術の検討を行う組織としてJNSAに新設された「日本トラストテクノロジー協議会(JT2A)」と協力しつつ進めようと思う。
最近話題になっているブロックチェーンについては、トラストサービスとどのような関係にあるのかをしっかりと議論し、我々としての考え方を固めておかなくてはならない。そうした勉強会も開催していきたい。

■おわりに―フォーラム入会検討のお願い

 トラストサービス推進フィーラム(TSF)では、ともに我が国にトラストサービスの推進を担う事業者の皆様の参加を切に願っている。幹事会員が50万円、賛助会員が10万円の年会費となっており、ご興味がある方は、新しく日本データ通信協会に設置されたトラストサービス推進部にお問い合わせをいただきたい。

【お問合せ先】
一般財団法人日本データ通信協会
トラストサービス推進フォーラム事務局
電子メール:tsf@www.dekyo.or.jp
電話:03-5907-3813
Web:https://www.dekyo.or.jp/tsf/