令和6年「情報通信エンジニア」優良団体表彰模様(企業の部)

 工事担任者、無線従事者、電気通信主任技術者などの国家資格の有資格者の知識や技術の向上を支援するための制度が情報通信エンジニアスキルアップガイドライン委員会(事務局:日本データ通信協会)の「情報通信エンジニア」です。
 情報通信エンジニアスキルアップガイドライン委員会では情報通信エンジニアの育成と資格取得を支援している団体を「情報通信エンジニア優良団体」として毎年表彰しており、令和6年も企業5団体、 学校3団体が受賞しました。企業の部で受賞した5社を訪問して行われた表彰の模様をご紹介します。

第1位:NECネッツエスアイ・サービス株式会社(資格者数127名)

右から髙橋圭社長、ソリューションサービス本部の宮本昌樹本部長、第三ソリューションサービス部の福田主任、オペレーションサービス部の白川フリアン浩一郎氏、地域本部西日本サービス部の紀隆幸部長、日本データ通信協会 情報通信人材育成本部長の信國宏

 今年度の「情報通信エンジニア」優良団体表彰企業の部で全国第1位に輝いたのは、127名の認定者を輩出したNECネッツエスアイ・サービスです。

 全国で事業展開されている同社では、工事担任者を取得すべき資格と位置付け、各本部が計画を立てて講習を受けさせたり、取得者には報奨金を出したりもしています。実務経験がまだない新入社員は、試験の科目免除がなく取得に苦労はしていますが、基本的に試験を受けての資格取得を目指しています。また、情報通信エンジニアも各本部にて取得を奨励しており、ソリューションサービス本部や地域本部などの各々の本部が積極的に資格取得を推進されていることが、3年連続100名以上の認定者を輩出している原動力となっています。

 情報通信エンジニアのテキストは、工事担任者試験の出題範囲に限らず、情報通信関連全般で新しい分野の内容も掲載しています。5Gなど比較的新しい分野の掲載について、「直接の仕事とは関係ないが、5Gに関係する話をされるお客様もいらっしゃるので、工事担任者試験に出ていない範囲での勉強もできて役に立っている」とおっしゃっていただきました。

 情報通信エンジニアのテキストは、工事担任者の試験問題と異なり、掲載する内容に制約はなく、資格を継続されている方に毎年新しい内容が提供できるよう、大半の内容を変えて毎年新たに作成しています。最近ではAIに関する概要を掲載するなど、工事をする人に興味を持ってもらい、役に立つ内容を掲載していくよう心がけていきます。

 100人を超える認定者がいる同社ではありますが、髙橋社長からは、「今年は認定者が少し減ってしまった。これからは、日本データ通信協会と協力してこの資格の価値を社会にもっとアピールすると共に有資格者を増やし技術向上に努めていきたい。」とおっしゃっていただきました。

 過去には高校生向け工事担任者の社員インタビュー記事作成にもご協力いただいた同社であり、今後も様々な形で連携しながら情報通信エンジニア資格の発展と同社の社員の技術向上に貢献できるよう精進してまいります。

表彰式にご出席された髙橋圭社長(左から4人目)およびNECネッツエスアイ・サービス株式会社の皆様

第2位:扶桑電通株式会社(取得者数78名)

左から本部長代理の間宮伸之氏、執行役員エンジニアリング本部長の上地浩夫氏、エンジニアリング本部ネットワークシステム部長の中島渉元氏

 昨年創立75周年を迎えられた扶桑電通株式会社様は、2022年9月期より2024 年9月期を対象とした第2期中期経営計画「FuSodentsu Vision 2024」を推進されてきました。同計画では経営基盤の強化のために「人財育成の強化」を一つの柱に技術力の向上とDX人財の育成を推進しています。

 そんな同社では、「主力ビジネスを行うにあたって必要となる基礎知識を得られる資格」として、工事担任者資格を第一に取るべき資格と位置付けています。そのため、今年度の「情報通信エンジニア」の認定者78名のほとんどは工事担任者資格保有者であり、4年連続70名以上での受賞となりました。特に、既に15回以上継続して更新されている方が16名と長年にわたり人財育成に取り組まれています。

 「IT化が進み、電話の専用回線だった通信も光回線となり局舎もなくなってきている。それにともない、電気回路やデバイスの知識ではなく信号処理やソフト制御などの知識を必要とする業務に代わっており、SE部門との連携などネットワーク技術の習得が必須となっています。」と近年の電気通信工事について上地執行役員はおっしゃっています。

 工事施工技能ではなく通信エンジニアとしての知識を必要とする問題が出題される工事担任者試験、および最新の情報通信技術を提供する「情報通信エンジニア」とも、ビジネスの変化に合わせて常に新しい情報と価値が提供できるよう、日本データ通信協会も精進してまいります。

左から執行役員エンジニアリング本部長の上地浩夫氏、コーポレートイノベーション本部人材育成室長の佐藤伸行氏、エンジニアリング本部ネットワークシステム部長の中島渉元氏、本部長代理の間宮伸之氏、エンジニアリング本部管理部長の八重嶋孝一氏

第3位:株式会社ベータテック(取得者数53名)

左から大橋貴美雄取締役、日本データ通信協会専務理事 後藤篤二、大竹丈夫代表取締役社長、大竹佳子取締役

 1998年の創業から今年で26年目となる株式会社ベータテックは、今年で8年連続の受賞となり、今回も資格制度や人材育成および昨今の電気通信業界の動向について貴重なお話をいただきました。

 主に無線通信設備の設置・点検・保守を営む同社ですが、最近は「大手携帯電話事業者の登録検査等事業者による無線局の点検等は、検査内容が簡素化され事業者主導で実施されるようになってきた。世の中の流れなのか品質よりもコストが優先されていると感じる。」と大竹社長は、おっしゃります。

 通信の資格については、世の中が有線、無線などの区別を気にしないマーケットへと変化している中、「電気通信工事施工管理技士は、電気通信を網羅的に扱っていてビジネスにつながる資格である。こういった資格を取得していきたいが追い付いていない。」という悩みをお持ちです。そのような中で、工事担任者が実務経歴を申請することで建設業法の主任技術者の要件を満たすようになったことはとても良いことだとおっしゃっていただきました。

 『情報通信エンジニア』については、「情報通信技術が進展している中、常に新しい技術を取り入れている。変化していくネットワーク、ICT等の技術習得や維持に有効であり、資格コストも安価である。これからも、関連企業の認知度がアップするように勧めていく。」とのありがたいお言葉をいただきました。

 日本データ通信協会としても、これからの新しいニーズにマッチする資格となるよう努めて参る次第です。

日本データ通信協会専務理事 後藤篤二(左)から表彰状を受け取る大竹丈夫代表取締役社長

第4位:株式会社TOSYS(取得者数48名)

上原邦明取締役執行役員(中央)、中島敏夫 安全品質技術部品質技術部門長(右)、日本データ通信協会 小川浩人材研修部長

 長野に本社を持つ株式会社TOSYSは、主に電気通信事業者をお客様とした電気通信工事業を事業の柱とし、近年では急成長しているIT、クラウド系にも若手社員を配置するなど事業拡大を図っており、通信系、電気系の資格以外にITパスポートなど情報系の資格取得も推奨しています。

 「世の中の通信インフラが整備されてきていることもあり、以前と比べると工事規模は小さくなってきている。また我々は元請として協力会社の方に工事をお願いしているため、工事担任者資格を持っていなければ仕事ができないわけではない。しかしながら通信系資格の取得は通信技術者の原点であることから、電気通信分野に配属された入社1年目の社員には基礎的な知識を習得してもらうためにも工事担任者資格の取得を推奨している。」(上原取締役執行役員)と、電気通信工事業を営んでいる会社として、若手人材のベーススキルの確保に努められています。

 「情報通信の分野は技術の変化が激しいので、社員は新しい技術を吸収して、自身の知識を最新化したいという気持ちが強く、特に若手社員は一つでも多くの資格を取りたいと思っている。会社としても資格取得の支援制度を設け、社員の背中を押している。」とおっしゃる通り、TOSYSでは各種資格取得のための研修コースがある他、自己啓発で取得する社員には受験費用の他、テキスト代や受講料・交通費の支給、報奨金の支給など手厚い支援制度があります。

 建設業では人手不足が深刻ですが、「甲信越エリアは首都圏との距離が近く交流も活発なことから、地元志向が減って首都圏で就職する人が増えている。特に協力会社の人手不足は深刻で、我々にとっても大きな課題である。」と電気通信工事業全体の課題にも直面しておられます。

 日本データ通信協会としても通信系資格保有者に最新の通信技術を提供する情報通信エンジニアを通して、TOSYSおよび協力会社の方々のスキルアップに貢献してまいります。

上原邦明取締役執行役員(左)と中島敏夫 安全品質技術部品質技術部門長

第5位:大和電設工業株式会社(取得者数41名)

栩谷泰輝社長(左)と日本データ通信協会専務理事の後藤篤二

 大和電設工業株式会社は、令和6年度も「情報通信エンジア」資格者41名を登録され優良団体表彰を10年連続で受賞されました。

 同社は1951年(昭和26年)京都で大和電設工業所として産声を上げ、翌年には現社名となりましたが、創業以来京都・滋賀エリアを中心に電気通信ビジネス一筋に70数年にわたり非常に高い技術力を培い、地元に根付いた足腰の強い会社として活躍されています。

 栩谷泰輝社長は最近のビジネス動向について、「コロナ禍明けの一時期は厳しかったのですが、インフラ工事を中心に回復傾向にあります。」と分析されるとともに、事業運営に向けての重要課題として人材確保と人材育成の2点を挙げられました。

 人材確保については、少子化等の影響もあり年を追うごとに厳しくなる環境下にありますが、工業高校含め毎年一定数の新卒者採用を継続されています。

 また人材育成については、創業以来事業の根幹として位置づけ、業務に関わる資格は積極的に取得するよう社員指導し、多岐に亘る資格を保有する会社となっています。更に、希望する社員全員に情報通信エンジニア資格を取得させ、若手社員を中心に情報通信技術に関わる新たな知識の研鑽に努めています。

 情報通信エンジ二アは、毎年更新するテキスト内容の充実を図るとともに、20年継続されている方に「ダイヤモンド゙」認定制度を新たに設け、15年・20年継続の方にも表彰状を授与する仕組みを導入します。同社では再来年にはダイヤモンド認定の該当者が十名以上おられ、継続して研鑽に努めていただく事をお願いしたところ、「継続する事は毎年の知識の更新であると認識しているので問題ない。」とのお話をいただきました。数年後のダイヤモンド認定者誕生を大いに期待したいものです。

 当協会としても「情報通信エンジニア」が大和電設工業株式会社の事業の発展に益々お役に立てるよう努力するとともに、同社の情報通信エンジニア優良団体表彰が更に継続されることを祈念いたします。

打合せに臨まれる栩谷泰輝社長(右)

(注)資格者数は令和6年9月末時点の集計値です。