令和4年「情報通信エンジニア」優良団体表彰模様(学校の部)

 今年も「情報通信エンジニア」優良団体表彰の時期がやってまいりました。
 工事担任者、無線従事者、電気通信主任技術者などの国家資格の有資格者の知識や技術の向上を支援するための制度が情報通信エンジニア委員会(事務局:日本データ通信協会)の「情報通信エンジニア」です。
 情報通信エンジニア委員会では情報通信エンジニアの育成と資格取得を支援している団体を「通信エンジニア優良団体」として毎年表彰しており、今年も企業5団体、学校3団体が受賞しました。学校の部で受賞した3校を訪問して行われた表彰の模様をご紹介します。

第1位:福井県立科学技術高等学校(資格者数93名)

藤枝徹校長(右)と日本データ通信協会専務理事・髙嶋(左)

 今年も学校の部で全国1位を獲得したのは福井県立科学技術高等学校です。同校が「情報通信エンジニア」に取り組み始めたのは令和元年のこと。高校生にとっては到底簡単な資格とは言えない工事担任者試験のDD第1種((現行の「第一級デジタル通信」))で二桁の合格者を出すなど、当時から全国的に注目を集める成果を上げている学校でしたが、この年、「情報通信エンジニア」においてもチャレンジを始め、初年度に14名の資格者を出したかと思うと、翌令和2年には27名、令和3年にはなんと89名もの資格者を輩出し、短い期間で資格者数全国第1位の座に躍り出たのでした。

 その科学技術高校が、昨年を上回る93名の「情報通信エンジニア」資格者を出しました。同校に限らず、受賞した各校に言えることではありますが、企業においては「情報通信エンジニア」の資格取得が社員の皆さんの業務知識に直結し、ひいては会社の評判や業績につながるのに対し、そうした自明の効果や目的が必ずしも存在するとは言えない高校生や学校にとって、「情報通信エンジニア」を取得する価値を決めるのは、各々の学校の考え次第です。各校が資格を学業とどのようにリンクさせ、生徒にとって価値のあるものとするのかは、学校の腕の見せ所と言ってもよいでしょう。

 その点、福井県立科学技術高等学校では、資格取得に対する明確な姿勢が見て取れます。

「私は、今日、中学校の進学説明会に出席する予定なのですが、そうした機会に、当校の目指すところとして、工業の専門的な技術をしっかりと身に着けること、二つ目は資格を取得し、その技術を証明すること、そして三つめが就職内定率100%、進学もできるという話をいつもしています。」と述べるのは藤枝徹校長。工事担任者資格で全国に名をとどろかせる同校ですが、施工管理技士などでも、やはりトップクラスの成績を上げ続けるなど、資格への取組みは学業の確かさを証明する証として重視されています。そうした同校の取組みの中に「情報通信エンジニア」を位置付けて頂けていることは資格を提供する側にとって大きな喜びです。

「今年も全国1位を頂けたとお知らせを頂き、すぐ新聞社の方に来てもらって、11月11日の「日刊県民福井」に記事が掲載されました。それを教育委員会が目にしますので、説明させてもらいましたし、本校は地域とどのように連携して教育を実践しているかという観点で文部科学省の研究指定校となっているのですが、同省から視察があった際に資料の中に「情報通信エンジニア」についても盛り込ませてもらいました。」(藤枝校長)

右より服部常義教頭、藤枝徹校長、一人置いて寺内徹情報工学科長

 学校が重視する資格取得の営みの中に工事担任者試験と「情報通信エンジニア」を位置付けていただき、全国で特筆すべき成果を上げる福井県立科学高等学校には感謝を申し上げるとともに、今後の更なる展開を期待いたします。

第2位:尼崎市立尼崎双星高等学校(資格者数33名)

脇田高史校長(右)と日本データ通信協会専務理事の髙嶋幹夫(左)

 今年も尼崎双星高等学校に表彰状をお届けすることができました。電気情報科の教育に「情報通信エンジニア」をご活用いただき、継続して大きな成果を挙げていただいている同校の取り組みには、事務局として毎年頭が下がる思いです。今年で8年連続の受賞。令和4年度は33名の生徒の皆さんが、資格を取得されました。

 脇田高史校長からは、意見交換会の冒頭に大変心強いお言葉をいただきました。「今年から1年生と2年生においてBYOD(Bring Your Own Device:自宅から自らのノートパソコンやタブレットを持ち込んで行う学習形態)が始まり、タブレット端末を一人一台持ち、学習に臨んでいます。来年度には1年生から3年生までが同じ条件で学習ができるようになりますので、日進月歩の情報通信技術分野における国家資格への取り組みにますます力が入るのではないかと考えています。」

 尼崎双星高等学校の「情報通信エンジニア」への取組みは、継続性という点でも、電気情報科のカリキュラムとの親和性という点でも際立ったものがあると感じられます。

校長室前の廊下にはいくつもの燦然と輝く表彰案件にまじって、7枚の「情報通信エンジニア」の表彰状が掲示されていました

 また、石川一教頭先生からは、嬉しいエピソードをご紹介いただきました。
「本校では電気情報科にだけ専用のネットワーク環境を活用しているのですが、教育委員会にその必要性を説明した際に、ネットワーク環境を用いて勉強し「情報通信エンジニア」を取得した生徒たちが世の中でどれだけ活躍しているか、「Society 5.0」の世の中を今後支える人材を「情報通信エンジニア」への取組みを通じて輩出されているのかをお話したところ、納得と理解をいただけました。このネットワーク環境は、授業と国家資格取得のどちらにも必要不可欠であり、電気情報科の恵まれた情報通信を学べる環境は、今後も維持し続け、これからもますます発展し続ける情報通信に関わる学習活動と国家資格取得に励んでもらいたいと考えております。」

 表彰式には、電気情報科で生徒を指導する先生方から、櫻木嘉典主幹教諭、大西(すぶる)教諭、堂髙康弘教諭のお三方にもご出席いただき、意見交換をさせていただきました。「藤井克二先生がこれまで作り上げてきた、生徒の自主性を重んじ、先輩が後輩へ指導し、みんなで助け合って勉強する気風を、若い先生方が受け継ぎ、流れが途切れることなく実践されています」と石川一教頭先生はおっしゃいます。

左より堂髙康弘教諭、大西(すぶる)教諭、一人置いて脇田高史校長、石川一教頭、櫻木嘉典主幹教諭

 電気情報学科長の櫻木嘉典先生からは、「メインで工事担任者を担当する大西(すぶる)先生のご指導とともに、堂髙康弘先生が過去問題の傾向を分析し、学習に役立てており、SNSを使うなどして情報共有を生徒としています。そうした積み重ねが成果に結びついているではないかと思っています。また、堂髙康弘先生も生徒と共に第一級デジタル通信に挑戦し、合格しました。生徒だけでなく主体的に学び続ける教師の姿は、生徒にとっても重要なロールモデルであり、生徒の学習意欲向上に繋がっているはずです。」とのお言葉がありました。

 昨年、ご自身でも工事担任者の「総合通信」を取得した大西(すぶる)先生からは力強いお言葉がありました。
「今年は第一級デジタル通信、第一級アナログ通信に複数名が合格しましたので、「総合通信」に申請をさせていただく予定です。工事担任者試験は、2月から3月にかけてCBT方式を用いてたくさんの生徒に試験を受けさせようと思っているところです。この流れは、ぜひ続けていきたいと考えています。」

 先輩の3年生が下級生の勉強を指導する同校の教育スタイルは、お邪魔するたびに感心させられます。そこには学科としての確固たる体制が確立しているように感じられました。

大西(すぶる)先生(最後列左端)、堂髙康弘先生(右端)と尼崎双星高校「情報通信エンジニア」資格取得者の皆さん

第3位:鹿児島県立種子島高等学校(資格者数26名)

阿多威文(あたたけふみ)校長(右)と日本データ通信協会・専務理事の髙嶋幹夫

 本年、「情報通信エンジニア」団体表彰に初めて名乗りを上げていただいた学校があります。我が国への鉄砲伝来の地であり、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙センターでも知られる種子島の鹿児島県立種子島高等学校です。

 同校からは、一挙に26名もの資格取得者をお出しいただきましたが、離島でこれだけの数の資格取得者を出すのは、企業、学校を含めて初めてのこと。正直なところ、私どもも驚いた次第ですが、以前、福岡県立福岡工業高等学校の電子工学科で「情報通信エンジニア」取得をご指導なさっていた先生が種子島高等学校電気科にご転勤なされ、新しい勤務先で「情報通信エンジニア」の存在を周知し、お取組みを初めていただいたというのが事の真相です。全くもってありがたい限りです。

先生方との意見交換会の一コマ

 多くの高校では、工事担任者資格を取得した生徒さんが「情報通信エンジニア」に取り組まれていますが、その点で種子島高等学校はそれらの例とは少し異なり、陸上、海上の特殊無線技士を取得した生徒の皆さんが「情報通信エンジニア」にチャレンジされました。「情報通信エンジニア」は2020年12月より、資格をお取りいただける対象が従来の工事担任者に加え、無線従事者や電気通信主任技術者にも広がりましたので、種子島高等学校では、早速制度変更の利点をお使いいただいたという次第です。

「情報通信エンジニア」の表彰状を囲む種子島高等学校電気科の皆さん

 「工事担任者など他の資格も取っていきたいのですが、離島であるため鹿児島市内まで前泊を前提に取得に行かなければなりません。電気工事士試験も2回受ける必要があるため、旅費もかなりの負担になります。そのためにそれ以上の資格に取り組む生徒の数は限られしまいます。ですので、CBT方式の試験が種子島で受けられるような環境が整えば、本校の生徒も、工事担任者試験を受けに行けるようになるのではないかと期待もしています。」と先生方はおっしゃいます。

 「情報通信エンジニア」への取組みが始まった種子島高等学校で、今度は工事担任者試験への挑戦が容易になれば、それは素敵なことです。ぜひ、そうした日が到来するよう、私どもも同校電気科のこれからの取組みを応援していきたいと思っています。

(注)資格者数は2022年9月末時点の集計値です。