すべては夢実現のために
宮崎県立宮崎工業高等学校
電子情報科主任 大迫昭彦
学校紹介
本校は明治38年に開校。今年で創立118年を迎えました。文武両道、部活動も盛んな学校です。「創意 誠実 努力」の校訓ならびに「宮工PRIDE夢実現!」のスローガンのもと、7学科840名の生徒が学んでいます。また、本校には昭和23年より定時制も併設され、多様な学び方で産業界を支える人材を育成しています。
電子情報科紹介
工事担任者を受験している電子情報科は1クラス40名の定員で構成されています。学科では、マイコンなどの「電子」部品に「情報」を書き込み、インターネット等を介して「通信」するといった、「電子」「情報」「通信」の3つ分野をすべて網羅した学びを行います。そして、その学びを基礎とした「ものづくり」をとおし、将来のIoT・ICT技術をけん引する人材を育成しています。
工事担任者試験は毎年、2年生のクラス全員を対象に受験しています。秋にDD3種(現在は第二級デジタル通信)、3年生になったら希望者が春にAI3種(現在は第二級アナログ通信)を受験しています。このような毎年の目標を持って科目「通信技術」の内容をベースに放課後の課外活動などで知識を身に着けています。
CBT試験と文武両道
地方都市では、一般的なCBT式国家試験において、例えばある会場では一度に20席しか確保できないなど、これまでの筆記試験と違ってクラス全員が同時刻に一斉に受けられるような会場がないという問題があります。このことは、生徒の受験日の分散につながり、目標を設定して一斉に受験に向かう指導体制や受験者同士の気持ちにズレを生じさせるという問題があります。しかし、工事担任者試験のCBT試験では、受験開始時刻を15分刻みで選択でき、1科目40分サイクルの試験時間となっており、少ない座席数でも、受験開始時刻が前後しても、同日中にはクラスのほぼ全員が受験できます。このことに指導者は大変助かっています。また、生徒はWeb申請やCBT試験の特徴である柔軟な受験日変更が可能であることや、一日のうちで受験可能な時間帯が幅広く設定されていることを上手く理解し、ライフスタイルに合わせた自分なりのベストな受験時間帯を選んでいます。このことは特に、文武両道を掲げる本校においては、それぞれの生徒が自分の所属する部活動の試合日と受験日を重ねない日程調整を可能とし、「無理のない持続可能な学びと受験のスタイル」としてのCBT試験の浸透へとつながっています。
知る見る体験することの大切さ
令和4年3月に卒業した生徒は、1年生の1月に始まった新型コロナウイルス感染症のあおりを受け、2年次には各種学校行事を実施することができませんでした。そのような折、宮崎市に支店を構える通信施工会社、株式会社SYSKEN様にコロナ禍における学校現場の苦悩、とりわけ感染拡大を避けたインターンシップの中止が生徒の職業観の育成に支障をきたしていることをお話ししたところ、「生徒の為ならば」と出前授業をゼロから準備いただき、御相談してから3か月後には、本校内において40名に対し4時間の就業体験を実施していただきました。内容は、学校現場では機材・部材の高価さから実習することのできない、「光ファイバーケーブルの融着作業」、「バケット車の搭乗体験」や、「RJ-45コネクタLANケーブルの製作と導通テスト」、「通信工事業についての講義」など、専門的だが分かりやすい、技術者としての体験ができるプログラムを実施していただきました。いずれも現場で活用され、さらには工事担任者試験の技術分野に出てくる接続工事の技術を体験することができ、生徒はとても満足していました。
【体験学習の様子】
その甲斐があり、直後に受験したDD3種合格率も70%、5か月後に受験したAI3種合格率も76%に上るなど、知る見る体験することによって大幅に「技術」分野の理解が増し、また、合格者も増加しました。この取り組みがコロナ禍の学生生活の数少ない思い出となるとともに、この経験が自信へとつながり、通信工事業への就職希望者も増え、この春より通信技術者としてDX時代のインフラを支えているというプライドを胸に活躍している卒業生も複数名います。
卒業生の中には「あの日の体験がなかったら違う道を選んでいた」「この春の試験でアナログデジタル総合種に合格した」「工事担任者の資格取得で学んだ事が仕事に活きている」など、嬉しい報告を寄せてくれる者も多数いました。
続く現3年生も2年次には前年度とまったく同じコロナ禍となりました。その状況に今度はいち早く実施企業様から声をかけていただき、2年目の実施となりました。第二級デジタル通信の合格率は67%、第二級アナログ通信の合格率は96%と体験が学びの励みとなり、大きな成果へと結びつきました。
本出前授業は、コロナ禍における1回限りの特別な授業として企画し生徒にとって実りの多い行事となりました。しかし、実施いただいた企業様にも「技術を分かり易く教える難しさ」を体験する社員教育の場としての効果があったとのことで、以降毎年実施をいただけることとなりました。このため現在、本行事は、互いの課題を共有しクリアしていく産学共同プログラムとなっています。
工事担任者を受験して
全員受験という形で一丸となって国家試験に取り組み、結果がどうであれ、学ぶ姿勢を身に着けることができました。生徒の感想や後輩へのアドバイスの中には、「一生懸命頑張らないと取得できない難しい試験だった。知らない語句やわからないモノは参考書類を読み、インターネットで調べて画像を見ると受験時に思い出しやすかった。過去問題を何度も解き直し、間違えた理由を友達や先生に聞いて万全な状態を作った。原理や法律をしっかり覚えておくと、応用が利くので、後々の自分自身の財産として大切なものになった。真面目にコツコツと積み上げることが、合格への近道であり、それ以外はただの遠回りだと思う。試験勉強は後半追い込むよりも早いうちに取り組んだほうがよい。上位資格を目指し、今後も継続した勉強をしていきたい」といった前向きな内容にあふれていました。
さいごに
皮肉にも新型コロナウイルス感染症に端を発し、在宅ワーク、ウェブ会議、遠隔授業、動画配信といったネットワークの需要の増加と重要性の認識は急速に進展しました。それを目の当たりにした世代だからこそ、現代社会に欠かすことのできないインフラである通信技術を支えるエンジニアとして活躍できると思っています。そのための知識と技術を身に着けるべく、工事担任者試験の資格取得を通して学び続ける人材になってほしいと願っています。