令和3年「情報通信エンジニア」優良団体表彰模様(学校の部)

 電気通信設備とネットワークを接続する工事を行う際に必要とされる国家資格「工事担任者」の知識や技術の向上を目的に作られた制度が情報通信エンジニア委員会(事務局:日本データ通信協会)の「情報通信エンジニア」です。今年からは工事担任者のみならず、無線従事者、電気通信主任技術者の皆様にもご利用いただけるようになり、電気通信の分野で活躍する技術者が各々の技術力を強化するための手段として、その役割はさらに広がってきました。
 情報通信エンジニア委員会では情報通信エンジニアの育成と資格取得を支援している団体を「情報通信エンジニア優良団体」として毎年表彰しており、今年も企業5団体、学校3団体が受賞しました。ここでは学校の部で受賞した高等学校3校を訪問し行われた表彰の模様をご紹介します。

第1位:福井県立科学技術高等学校(資格者数89名)

左より千葉晴信教諭、藤枝徹校長、柳谷陽昭実習教諭

 令和3年度「情報通信エンジニア」団体表彰ランキングの学校の部で一躍1位に躍り出たのは福井県立科学技術高等学校です。

 そもそも「情報通信エンジニア」は、工事担任者資格を取得して業務にいそしむ社会人を支援しようと作られた制度。仕事の経験がない高校生にとっては難しい内容が含まれており、ある種の敷居の高さがあるのが事実なのですが、その、果敢に取り組むだけでも賞賛に値する「筋金入りのプロ中のプロのための資格」(日本データ通信協会・髙嶋専務理事)で全国の高校で1位を取得したのみならず、今年度、企業を含めたすべての団体の中でも最も多数の資格保持者数89名を数えたのが同校でした。例年、学校の部で表彰される団体の資格者数は20名から40名というレベルです。もちろん、それらの数字ですら大したものですから、89名という数字がいかに並外れているかがお分かりいただけるのではないかと思います。

 科学技術高校では、工事担任者試験のDD1種(現行の「第一級デジタル通信」)を2年生で受験し、そこで合格した生徒さんに2年生のうちに「情報通信エンジニア」を取得していただいていましたが、今は3年生の卒業前にも再度取得するという熱の入れようです(「情報通信エンジニア」は1年ごとに更新が必要な資格です)。

 生徒たちを指導する情報工学科長の千葉晴信先生は次のように言います。

「工事担任者試験の第一級デジタル通信にクラス全員で挑戦するのは5年目になり、「情報通信エンジニア」の申請は3年目になります。過去2年は取得者数が学校部門で3位だったのですが、今年は1位になれてとてもうれしいです。また、企業と学校とを合わせた総合部門でも全国で1位を取れたのは感無量です。情報工学科ではICTのスペシャリストを目指すため,情報通信分野の教育に力を入れています。就職しても進学しても情報通信エンジニアとして、世の中で活躍できる人材をこれからも育成していきたいです。」

学校を代表し千葉先生(右)に賞状をお受け取りいただきました。

 国家試験である「工事担任者」の難関上級資格「総合通信」を情報工学科3年生の全員31名が取得するなど、「工事担任者」の世界では全国的に名が知られる存在の科学技術高等学校にその価値を認めていただいたことは、「情報通信エンジニア」制度にとっても大きな喜びです。

 今年の3年生のうち、千葉先生の情報工学科で3名、柳谷陽昭先生が指導する電子電気科から3名の皆さんが電気通信関係の企業に就職することが決まったと教えていただきました。実社会で通信の仕事に励む皆さんには、情報通信エンジニアで勉強した知識を活かして頑張っていただきたいですし、他の分野の企業に就職する皆さん、進学する皆さんにも、ここで得た知識を直接、間接に役立てていただけることがあれば、とてもうれしいなと思っています。

千葉先生(左)と「情報通信エンジニア」資格取得者の皆さん

第2位:尼崎市立尼崎双星高等学校(資格者数45名)

左より金中理教諭、櫻木嘉典主幹教諭、脇田高史校長、石川一教頭、藤井克二教諭

 情報通信エンジニアを学校教育に活用し、成果を上げている学校の代表格が尼崎市立尼崎双星高等学校です。令和元年には、総務省の「電波の日・情報通信月間」において、「情報通信エンジニア」制度を活用し「高等学校としてスキルアップに先導的な役割を果たした」として「近畿情報通信協議会会長表彰」を受賞しました。表彰された様子は、地元のテレビでも紹介されました。令和3年度も例年の実績を凌ぐ45名もの情報通信エンジニア資格保持者を輩出しています。

 脇田高史校長からは「情報通信エンジニアで表彰して頂くことは、本校電気情報科の誇りと思っています。本年度は尼崎市の教育長にも受賞を報告させて頂いています。」とのお言葉を頂戴しました。

 尼崎双星高等学校電気情報科でいつも感心させられるのが、生徒の自主性を重んじ、先輩が後輩へ指導し、みんなで助け合って勉強する気風です。長年指導をしてきた藤井克二先生は、資格取得への取り組みについてこうおっしゃいます。
「第二種電気工事士をできる限り2年生の秋頃までに取得し、つづく工事担任者第二級デジタル通信にチャレンジします。さらに、2月に陸上、海上、航空の特殊無線技士を受験します。そして、3年生の始めに工事担任者第二級アナログ通信に挑戦するのが基本的な流れです。これらの過程で成功体験を積み重ね、さらにワンステップ上の学習に繋げていくことが大事なことです。『できるだけ自分の力で次の目標を見つけて歩いて行け!』みたいな感じですね。」

2年ぶりに訪れた教室では、日本データ通信協会専務理事の髙嶋幹夫から勉学に励む生徒の皆さんに激励の挨拶をさせて頂きました。

 ところで、「情報通信エンジニア」の取得条件となる工事担任者の試験において、令和3年9月から第二級デジタル通信、第二級アナログ通信のカテゴリーでCBT方式が導入されました。試験日も決まった日取りがなく、何度でもチャレンジできます。電気情報科副科長の金中理先生からは、生徒が資格への取り組みにゆとりができる点に歓迎の意を表明していただきました。


「例年、部活動や他の試験との兼ね合いで忙しくなってしまうのが、CBT方式により試験日程を決めることができるので、例年に比べて1ヶ月程度ゆとりをもって試験勉強に取り組ませることができます。他の試験勉強にも集中して取り組めることができるので、このCBT方式の導入は非常に助かります。」

校内で工事担任者のポスターを見つけました。

「来年度からは本校でもBYOD(Bring Your Own Device)が始まり、家庭からPCを持ち込んで授業に活用しますので、文部科学省が推し進めているGIGAスクール構想に沿って、校内ネットワーク環境を整備しています。電気通信に関する勉強をしっかりしていく必要があると感じているところですが、こうして表彰状を頂けることで生徒たちの励みにもなっており、感謝しております。」(脇田校長)

 今後も尼崎双星高等学校電気情報科の教育に「情報通信エンジニア」をお役立ていただければ、事務局にとって大きな喜びです。

藤井先生(最後列左端)と尼崎双星高校「情報通信エンジニア」資格取得者の皆さん。

第3位:福岡県立福岡工業高等学校(資格者数40名)

左より電子工学科の重松哲朗主幹教諭、日本データ通信協会専務理事の髙嶋幹夫、市川仁士校長、原一生教諭、井上毅副校長

 創立125周年を迎えた福岡の伝統校、福岡県立福岡工業高等学校は「質実 剛健 自律 創造」の校訓の下、全校を上げて様々な資格取得に取り組んでいます。卒業生の進路は大学進学、就職の両方面に多岐に広がっており、そのこと自体、様々な人材を育てようとする同校の姿勢を反映したものですが、就職について言えば、16年間、就職内定率100%を継続するなど鉄板の強みを発揮し続けています。その土台を作っていると言ってもよいのが資格試験への熱心な取組みです。

「生徒の将来につながるということももちろんありますが、いろいろなことに興味を持って、勉強にチャレンジする姿勢を作れる点に資格試験の価値があると思っています。各学科の先生に資格を選んでもらい、取り組んでいます」と語るのは、市川仁士校長です。

 同校のホームページを見ると、昨年度に生徒が取得した資格数は36の種別に上り、取得者数は延べ3千名を優に超えています。そうした中、電子工学科の皆さんは1年生が陸上、海上、航空の特殊無線技士、2年生が工事担任者試験、さらには「情報通信エンジニア」にも挑戦しています。

市川仁士校長(右)と日本データ通信協会専務理事の髙嶋幹夫

 工事担任者試験の第2級デジタル通信、第2級アナログ通信では2021年9月からCBT方式の試験が始まり、受験日の融通が利くようになりました。電子工学科を指導する原一生先生には始まって間もないCBT方式に対し、次のように前向きな評価をいただきました。

「工事担任者は2年生が全員で取り組んでいます。ちょうど今週末と来週、再来週とに分けてCBT方式で受験する予定で取り組んでいるところです。CBTのおかげで、生徒が他の試験や部活動などとの調整ができるようになり、今年は全員が受験できるようになりました。」(原教諭)

意見交換会での一コマ

 電子工学科では「情報通信エンジニア」にも3年前からお取組みいただき、今年度も2021年9月末時点で40名の資格保持者を輩出しています。高校のパンフレットでは、電子工学科のページのトップに表彰状を囲む生徒さんたちの集合写真もご紹介いただいています。
「先日、生徒の一人が、送られてきた「情報通信エンジニア」のテキストを「先生、届きました」と持ってきてくれました。セキュリティ分野に関心が強く、日頃からアンテナを張っている子でして、勉強になると喜んでいました。」(原教諭)

 「情報通信エンジニア」の研修テキストは、執筆する専門家の先生方が熱心な議論を基に執筆・編集しており、高校生の読者にも分かりやすい表現を心掛けています。これからも鋭意勉強に励む福岡工業高等学校電子工学科の皆さんのお役に立てるよう、最新の情報通信分野の話題を提供していく所存です。

(文責:「日本データ通信」編集部)