新年に寄せて

一般財団法人日本データ通信協会
理事長 酒井 善則

 日本データ通信協会が設立されてから今年で47年目になる。昭和から令和に至る47年間協会の活動を支えて頂いた皆様、機関誌をご愛読頂いた皆様に改めて御礼申し上げる。平成に花開いた情報通信技術は、令和になって社会にしっかりと定着しつつあるように見える。工業だけではなく農業等の主要産業の課題解決にも情報通信技術の利用が検討されている。課題解決は情報通信技術開発の、重要なキーワードになりつつある。

 近年情報通信技術のもたらす課題も注目されつつある。サイバーアタック、詐欺メール、個人情報漏えい、SNSの炎上等が毎日のように話題になっている。更に情報通信技術による社会構造の変化については、AI等により多くの業務が改善されるという面も強調されるが、同時に将来不要になる職業も話題になっている。大学生の就職先として人気のあった銀行も、店舗数の削減、人員削減等の傾向と聞く。もちろんこれは低金利等の影響も大きいと思われるが、かなりの業務をネットワークで代替できるという側面も大きいのではないか。AI、ロボット等で代替できる業務を見ると、むしろ残る方が少ないのではないかと心配になる。職を失う多くの人に対してはベーシックインカムを保証する政策が必要との意見もあり、世界中で社会構造の変化に対応する必要性が論じられている。

 情報通信技術の影響、課題等には我が国固有の問題もある。我が国においては情報通信技術の人材、特にセキュリティ人材、AI人材は大幅に不足するため、育成が急務であるとの意見が多い。更に、世界的に若い人材の報酬が上昇しているため、若手の優秀な人材の海外流出のリスクも叫ばれている。学会においても、会員数の減小、会員平均年齢の上昇による研究開発力の低下に対する危機感が強い。一方、就職氷河期の卒業生で希望に反して非正規雇用となっている層は高年齢化が進んでおり40歳前後の10年間で50万人程度と言われ、これは情報通信技術人材の不足数を上回る。今後の人口構成の高年齢化、更には無くなる職業に従事している人材の増加などがあり、情報通信分野の人材は不足しているが、他分野の意欲ある人々の仕事が不足するという事態も予測される。

 情報通信技術の直面する課題を解決するためには、個人情報漏えい、サイバーアタック等のシステムリスクを防止するとともに、若手人材の育成とともに、意欲的な中高年人材への教育が極めて重要である。日本データ通信協会では、ネットワークのシステムリスクを防ぐための活動とともに、電気通信主任技術者、工事担任者、情報通信エンジニア等情報通信分野の各種資格の運営、再教育等を通じて、総務省と協力して、多くの年代層の人々に対する情報通信技術の教育に努力している。

 新しい“デ協”のロゴのもと、日本データ通信協会は令和の時代にわが国の情報通信分野の課題解決のため、一層の努力をすることを皆様にご援助頂きたいことをお願いして、新年のご挨拶としたい。