challenge! 愛媛県立松山工業高等学校

実社会で活躍できる実践的技術者の育成

生徒の進路に活かせる資格取得

愛媛県立松山工業高等学校
電気科教諭 矢野 尚

学校紹介

 本校は、明治42年7月に松山市立工業徒弟学校開校認可を受けて以来、来年度で創立110周年という歴史のある学校です。平成29年度末で全・定併せて31,429名の卒業生が産業界の各分野で活躍しています。現在、全日制が機械科、電子機械科、電気科、情報電子科、工業化学科、建築科、土木科、繊維科の8学科で、950名の生徒が在籍しています。また、定時制が機械科と建築科の2学科で、41名の生徒が在籍しています。生徒たちは、「自律」・「創造」・「協和」の校訓のもと、専門科目の勉強や部活動に懸命に取り組みながら、各自が自己実現を目指して頑張っています。今年度、本校では以下の3つの教育目標のもと指導しています

(1) 自ら鍛え、たくましく生きる力のある生徒に育てる。
(2) 豊かな人間性と発想力・想像力・実行力のある生徒に育てる。
(3) 日本と地域を支えるため、未来を切り拓く産業人に育てる 。

 本校は、生徒が伸び伸び、そして生き生きと主体的に学べ、教職員がやりがいを持って教育できる日本一の『名門校』づくりを目指しています。

電気科の取組み

 今年度、電気科3年生の就職希望者37名は、県内外の大手企業から就職内定を頂き、進学希望者3名も各大学から合格を頂いています。在校生の進路の問題に関しては、景気が今のまま続けばいいのですが、愛媛県においても少子化問題が深刻化しており、生徒の確保の問題に関して、各学科ごと地域にPRする必要があります。我が電気科は、実社会で活躍できる実践的技術者の育成を目指し、資格取得に力を入れPRしてきました。

資格取得に関する取組み

 表1は、電気科の教育課程(専門)をまとめたものです。2・3年次は、進学希望者に対応して数学、英語との選択科目となっています。また、電気科で、取得を奨励している国家資格は、第二種・第一種電気工事士、第三種電気主任技術者、工事担任者DD・AI第3種、危険物取扱者乙種各類などです。

1年次2年次3年次
工業技術基礎(3)実習(4)実習④
情報技術基礎(3)課題研究(2)工業技術実践④
電気基礎(4)電気基礎(3)課題研究(2)
電力技術(2) 製図(2)
電気機器(2) 電力技術Ⅰ(3)
電子技術② 電力技術Ⅱ②
電気演習② 電気機器②
電子計測制御②

表1 松山工業高等学校電気科の教育課程(専門)
注)科目名の後の数値②は、選択科目2単位、④は、選択科目4単位

 ではここからは、本校電気科の資格取得の指導に関して右に出る者はいない、鈴鹿暢大教諭の資格取得に対する考え方、指導方法についてご紹介いたします。

 鈴鹿教諭は、電気科の生徒なら取得を目指す第二種電気工事士の指導を入学後すぐに始め、6月の学科、7月の技能試験に向け、早朝、昼休み、放課後、休日、時には専門の授業を一部使いながら徹底的に指導していきます。

 補習については、予め保護者や各部活動の顧問に計画表を渡し協力を求めています。そして、第二種電気工事士の試験が終われば、夏の厳しい暑さの中、引き続き全員が第一種電気工事士の取得を目指して同様の指導を実施しました。表2は、鈴鹿教諭が1年次から担任をしている電気科3年生の第二種・第一種電気工事士の合格時期をまとめたものです。

 1年次の前期に第二種電気工事士に40名中34名の生徒が合格し、また、クラスの約半数の生徒が第一種電気工事士に合格することができました。

電気工事士
合格者(人)
1年次 2年次 3年次  
前期 後期 前期 後期 前期 後期 合計
第二種 34 1 3 1     39
第一種 19 11 技能の練習 30

表2­ 電気工事士合格状況

 次に、鈴鹿教諭は工事担任者試験の受験を勧めるにあたり、日本データ通信協会様のHPに掲載されている「法令で定められた工事担任者資格の取得者が多い企業は、安全で確実な工事を行い、お客様に満足度の高いサービスを提供する「信頼される企業」と高く評価されています」という記述を生徒たちに紹介しました。そして、「社会に出ると、お客様から信頼される会社であり、社員になる必要があるので、企業に入社後、仕事上必要とされる資格を取得するように命ぜられる。従って、いずれ取得しなくてはならない資格は、高校時代に取得しよう」と生徒たちに呼びかけました。 

 鈴鹿教諭は、生徒たちに1年次の努力でこの結果を収めさせることで、生徒たち一人ひとりに「自分たちも頑張ればやれるんだ!」と自信をつけさせ、生徒たちの心を掌握し、次へのステージに引き上げる力を持っており、その結果、生徒たちはその気になって頑張りました。

  第二種・第一種電気工事士に合格した生徒は、次の目標として2年次に工事担任者DD・AI第3種の資格取得にチャレンジしました。表1の教育課程表に話は戻りますが、「電子技術」を履修するのが2年次なので、2年次の11月期の受験が最適であると考えています。

 指導法については、闇雲に過去問題を解説していくのではなく、よく出題されている傾向を掴み、そこを重点的に解説した上で、過去問題を解かせ定着を図ります。

 さらに、生徒たちには、学習した内容を定着させるために宿題を課し、自己採点させ一人ひとりの結果を確認して、弱い部分はどの部分か、どのように学習していけばよいのかを個々の生徒に指摘します。

 試験日が近づくと、過去問題を何度も何度も解かせて、正答率を向上させ、「あの時、あの問題を解いていればよかったのに」と後悔をさせないようにしています。しかしながら、問題の傾向が変わり予想していない問題が出題されることもあり、合格率100%という訳にはいきません。鈴鹿教諭は、出題される問題に関した研究をこれからも続けていき、生徒たちが資格を取得できたときの笑顔をこれからも見続けたいと考えています。今後とも、日本データ通信協会様より様々なデータを提供して頂きたいと思います。

生徒の意見

 1年次より、担任の鈴鹿先生は私たちを時には厳しく、時には優しく指導してくださっています。高校入試に合格した私たちとその保護者は、合格者招集日で集まった教室で、「本校の電気科は、6月に実施される第二種電気工事士を受験いたします。合格を目指してお子様に真剣に向き合って指導いたしますので、ご理解・ご協力をお願いします。」ということを告げられ、第二種電気工事士の願書を手渡されその場で記入させられ、とても驚きました。

  入学後すぐに、第二種電気工事士の取得に向け、補習補習の連続でした。そして、6月に筆記試験、7月に学科試験と第二種電気工事士に合格すれば、暑い夏休みには、第一種電気工事士の勉強が待っていました。しかし、そのお陰で、1年次に二つの国家資格を取得できた生徒が私を含め大勢いました。電気科で取得すべき資格をクリヤしたことで安心していたのですが、鈴鹿先生から、「電気工事だけでは今のネットワーク時代に対応できん。工事担任者の資格も必要だ。」とさらにはっぱをかけられ、またその気にさせられ、工事担任者の資格に挑戦しました。先生には、基礎や技術の解説はもちろん、法規に至るまでポイントを解説していただきました。さらに、理解・定着できているかを確認するため、毎日課題が出され、その結果を細かくチェックされました。

その結果、工事担任者DD・AI第3種の合格率は、例年一般的に50%前後という難関の資格でありながら、私を含め多くの友達が無事合格することができました。

 その他にも、危険物取扱者乙種の指導や、第2級電気工事施工管理技術検定(学科試験)の指導など多くの資格の指導をして頂き、そして、全国工業高等学校長協会が推奨するジュニアマイスター顕彰制度においても、私たちのクラスは、11月末現在で、ゴールド28名、シルバー6名と学校の中でも群を抜いて成果を収めています。このような結果を収めることができたのは、鈴鹿先生のお陰だと全ての生徒が感謝しています。

 来年の4月からは、それぞれの場所で新生活が始まりますが、高校時代に教えて頂いたことを忘れず、自信を持って頑張りたいと思います。本当にありがとうございました。卒業まであと少しになりましたが、これからもよろしくお願いします。

   平成30年11月20日  電気科3年生一同より