新年に寄せて(平成31年)

一般財団法人日本データ通信協会 理事長 酒井善則

 日本データ通信協会が設立されてから今年で46年目になる。46年間協会の活動を支えて頂いた皆様、機関誌をご愛読頂いた皆様に改めて御礼申し上げたい。最近、人生百年時代と言われているが、協会もその半分近い歴史を持つことになる。百年時代になると、人は一生の間に様々な技術進歩、それに伴う多様な社会を経験することになる。しかし江戸時代の百年と比べて、最近の百年は技術進歩が激しいため、経験量もけた違いに大きくなる。ただ、百年後の社会予測はいつの時代も行われており、技術面では分野によっては予測以上の進歩をとげているものの、百年前に予測された多くの技術が現在では実現していることに驚かされる。同様に現在予測されている多くの技術進歩が百年後には実現するものと思われるので、百年間の経験量も予測できることとなり、予測できない事柄の量は意外と小さいのかもしれない。

 人生百年時代は私のように年齢を重ねた人間にとっては快く響く言葉であるが、社会への負の影響は大きく、団塊の世代が後期高齢者になり社会保障制度が危機となる2025年問題も指摘されている。社会保障費の増大も必至であり、高校、大学を卒業した後、自分で研鑽をつみながら専門を生かして、年金受給年齢まで働き、引退して悠々自適の生涯を送ることは困難になるのではないかと予測される。人により様々な生き方はあるが、多くの方がより長期間働き、社会に貢献する時代となることは、ほぼ間違いないと思われる。

 電子情報通信は進歩の早い分野である。高校、大学で学ぶ専門は急速に古くなる。経験量は増えるとはいえ、学校卒業後数十年に亘って専門家でいるのは容易ではない。経験が生かされない最新分野の吸収能力は年齢と共に低下する。私は、人生百年時代は、複数の分野を経験できるチャンスではないかと考えている。人は若いころ迷ったあげく現分野に進んできていることも多いのではないか。私の前職の放送大学では、リタイヤしたシニアが若いころ興味を持った分野を再度学習している姿を多くみた。リタイヤした場合職業とは関係無い教養分野が人気であるが、人生百年時代ともなれば、リタイヤせずに新しい分野に進み、職とする人も増えるのではないかと予想している。多くの方は子育ても終わっているため、自由に職業選択をして職業を楽しめるようになる。日本データ通信協会は国家試験とともに電子情報通信分野の学習支援も重要な業務としている。IoT、セキュリティ、AI等の知識のように、専門をより深めるための支援も重要ではあるが、今後は電子情報通信から他の分野に進みたい技術者の支援、他の分野から電子情報通信分野に入りたい人への支援も、同様に重要ではないかと考えている。

 今後のデータ通信協会が新しい時代に新しい役割を果たしていくことを皆様にご援助頂きたいことをお願いして、新年のご挨拶としたい。