情報通信エンジニア優良団体表彰 – 福岡県立福岡工業高等学校

平成30年度情報通信エンジニア優良団体表彰(6)

福岡県の雄が情報通信エンジニアでも全国区に名乗り

福岡県立福岡工業高等学校

校長 太田博文氏
副校長 石津勝幸氏
電子工学科主任 教諭 重松哲朗氏
電子工学科 助教諭 村岡亮平氏

電気通信事業法第71条が定める「工事担任者」は、電気通信設備の接続を行う際に必要とされる国家資格である。この工事担任者の知識や技術の向上を目的に作られたのが「情報通信エンジニア」制度で、同制度を運用する工事担任者スキルアップガイドライン委員会(事務局:日本データ通信協会)では、制度の普及促進を図る目的で、情報通信エンジニアの育成と資格取得を支援している団体を「情報通信エンジニア優良団体」として毎年表彰している。

「平成30年度情報通信エンジニア優良団体の表彰について」

編集部で、平成30年度の受賞8団体の1つである福岡県立福岡工業高等学校への表彰状授与式に同席し、受賞の声を聞いた。

 福岡県立福岡工業高等学校は、明治29年に創立し、120年を超える歴史を誇る。創設時に染織科、木工科、金工科の3科でスタートした学校は、現在、全日制8学科1コース、定時制1学科を有する福岡の名門工業高校に成長、「質実剛健 自律 創造」の校訓の下、有為な人材を世に送り出している。

 ものづくりの分野で成果を上げた個人・団体を表彰する「ものづくり日本大賞」では、各学科・コースの特色を生かしたものづくり教育や知的財産教育などの取組に対して評価がなされ、高校としては全国で唯一選ばれて文部科学大臣賞を受賞している。

 同校の就職者と進学者の比率は6対4の比率で、就職者の内定率は平成29年度まで15年連続で100%、進学は昨年度が11名が国公立大学に合格するなど、地元では「就職にも進学にも強い工業高校」として自他ともに認める存在である。その強さを形作る土台の一つが生徒の資格取得への堅牢な支援だ。太田博文校長は次のように述べる。

 「生徒が様々な資格を取れることは本校の強みです。対外的にもそれをアピールしていますし、生徒1人が5つ以上の資格を取って卒業をすることを推奨しています。受験する中学生たちにとっても、福岡工業高校は色々な資格が取れることが魅力になっていますし、資格に対して前向きな意識を持った生徒が集まっていると言ってよいだろうと思います。」

太田博文校長(左)と日本データ通信協会・高嶋幹夫専務理事(工事担任者スキルアップ委員会委員、右)

 その福岡工業高等学校で、電気や電子回路の基本を学習するのが「電子工学科」で、各学年1クラス40人の生徒が学ぶ。同科の生徒にとって「工事担任者」は電気工事士や陸上特殊無線技士などとともに、技術で身を立てるための重要な資格として認識されている。平成30年度下期は45名の工事担任者合格者を輩出している。

 電子工学科主任の重松哲朗教諭の話を聞くと、生徒たちが自分の将来を見据えて勉学に励んでいる様子が容易に想像できる。

 「資格の取得に熱心な生徒は、やはり専門性の強い仕事を選ぶ傾向はあります。例えば、NTTの電気通信設備を見せてもらったりすると「工事担任者のDD3種があるとこういう仕事ができる」と生徒もよく分かるようです。生徒たちは、なかなか具体的な仕事のイメージがつかめないところがあるので、この資格はこうした仕事につながっていると理解することが、生徒も、私たち教員も重要だと感じます。」(重松教諭)

 生徒たちを支援するために、電子工学科では始業前1時間程度、資格取得の指導に充てる「朝補習」を行っている。「朝補習」が不足している場合は、放課後、部活動が終わった後にも指導している。

重松哲朗教諭

 「本校では、各学科の専門性を高めるため、座学や実習内容を工夫しています。そのなかでも電子工学科では、学習指導要領に明記されている科目のほか、学科の特色に合わせた『学校設定科目』を設定することで、基礎・基本から応用までを学べるようにしています。」(太田校長)

 生徒を直接指導する村岡亮平助教諭に、その指導について聞いた。

 「授業で学んだ知識をもとに朝補習では、自作のプリントで説明し、演習で資格のレベルや要点を確認させながら指導しています。『基礎』の回路計算やベン図、論理回路、ブール代数など論理的な思考力の要るところは全員が確実にとけるように時間をかけて指導しています。『技術・理論』『法規』は暗記に頼る部分が多いのですが、UTPケーブルなど実際に物に触れさせ、イメージがつかめるようにしています。規則は、十分にその背景を説明しながら進めています。」(村岡助教諭)

 その福岡工業高等学校が、本年度から「情報通信エンジニア」制度への取組を始め、一挙に全国の高等学校で取得者数2位となる多数の資格取得者を輩出した。

 「今年の3月に日本データ通信協会の方から「情報通信エンジニア」の資格をご紹介いただきました。それを取得すると履歴書に書ける資格が一つ増えるということで生徒にも紹介をしました。強制することはいっさいしておらず“持っていることによって、工事担任者として最新の知識・技術を習得していることの証明になる”という制度の趣旨を生徒に話をし、生徒の自主的な取り組みとして今年から始めたところです。」(村岡助教諭)

 「情報通信エンジニア」に対する同校のこれからの取組がますます楽しみだ。

左より重松哲朗教諭、太田博文校長、石津勝幸副校長、村岡亮平助教諭
電子工学科3年生(優良団体表彰の表彰状と共に)

(文責:「日本データ通信」編集部)