情報通信エンジニア優良団体表彰 – 尼崎市立尼崎双星高等学校

平成30年度情報通信エンジニア優良団体表彰(5)

2年連続の全国一に結実した「元気よく、楽しい」生徒たちの意気込み

尼崎市立尼崎双星高等学校

情報通信エンジニア資格を取得した生徒の皆さん
校長 谷 清隆氏(前列中央)
電気情報科教諭 藤井克二氏(後列左1番目)
電気情報科教諭 森定裕幸氏(後列右から6番目)
電気情報科教諭 桑木貢司氏(後列右から4番目)
電気情報科教諭 金中 理氏(後列右から2番目)

電気通信事業法第71条が定める「工事担任者」は、電気通信設備の接続を行う際に必要とされる国家資格である。この工事担任者の知識や技術の向上を目的に作られたのが「情報通信エンジニア」制度で、同制度を運用する工事担任者スキルアップガイドライン委員会(事務局:日本データ通信協会)では、制度の普及促進を図る目的で、情報通信エンジニアの育成と資格取得を支援している団体を「情報通信エンジニア優良団体」として毎年表彰している。

「平成30年度情報通信エンジニア優良団体の表彰について」

編集部で、平成30年度の受賞8団体の1つである尼崎市立尼崎双星高等学校への表彰状授与式に同席し、受賞の声を聞いた。

 尼崎市立尼崎双星高等学校は、尼崎東高等学校と尼崎産業高等学校との発展的統合を行うとの尼崎市立高等学校教育審議会の決定を付け、平成23年4月に開校した。開校8年目のまだ新しい学校だ。尼崎市としては実に48年ぶりの新設校として地元の期待を担ってのスタートとなった。
 クラスは普通科5クラス、商業学科2クラス、ものづくり機械科1クラス、電気情報科1クラスからなる。普通科と工業系、商業系の学科をすべて揃えた高校は全国的にも珍しい存在である。

 電気情報科教諭の藤井克二氏は、おそらく謙遜も含んでのこととは思うが、資格への取組について次のように語る。
 「新設校ということで学校の名前を知られていないこともありますし、生徒は学力的がそれほど高いわけでもないですし、多くの子は中学校で褒められてきたわけでもない。あまり自信を持った子は多くない。そこで彼らに資格を取ってもらい、自信をつけてもらおうという面があります」

 工事担任者と情報通信エンジニアに取組んでいるのは電気情報科で、1学年40人の生徒が最先端の情報通信理論と技術を学習している。工事担任者には、毎年数十名の合格者を出し続けている。

 「うちは2年生で工事担任者の学習をやらせています。「通信技術」という科目があって、通常は3年生で学習する内容を2年生でやっています。その方が就職にもいいし、生徒も学校中心の活動ができるので、1年生で電気工事を取らせ、2年生で工事担任者と特殊無線の陸上・海上・航空を受けさせています。以前尼崎産業高校の時には、工事担任者試験がある11月には文化祭があって忙しかったのですが、尼崎双星高校になって文化祭が春になり、11月がちょうど空いたということもあって、時間をうまく利用できています」(藤井教諭)

ネットワーク実習室で生徒の作成した電子回路作品を説明する藤井教諭

 スパルタで資格取得に挑んでいるかと思うと、意外にも藤井教諭の言葉には、自然体のニュアンスがにじんでいる。「資格取得に、そんなに一所懸命になっているわけではないのですけども、合格率はいいですね。「通信技術」の教科書があるんですが、「有線通信」のところが工事担任者試験の内容とかぶってくるので、一石二鳥と考えてやっています。3年生でやっている学校が多いと思うのですが、取らない子も出てきますし、履歴書にも書けると2年生のうちにやらせています」

 「通信技術」2単位の授業は選択制で、電気情報科40人の生徒が2年生になると、自らの判断で選択する。これらの生徒が工事担任者に挑むことになる。藤井氏によると「毎年30人少々の生徒が通信技術をとって、10人弱がハードウェア技術を選択しています。この30人から受けさせていますので、その数から見るとほとんどが受かっています」と合格率は非常に高い。

 「情報通信エンジニア」に挑み、過去2年連続で高校全国一の取得者を輩出したのも、これらの生徒たちだ。藤井氏に情報通信エンジニアへの取組について訊いた。

 「生徒達は、資格を取ったらゴールだと思ってしまうのですが、資格はあくまでスタートラインだと私は思っています。就職先の会社では電気工事士や工事担任者の取得を採用条件にするところがありますが、そういう会社に就職すれば、その分野の勉強を続けていかなければならないのですから、情報通信エンジニアは、まさにそうした生徒たちに適した制度ではないかと考え、取り組んでいます」

 とは言え、その挑戦には、先生の思いだけが先行しているわけではない。訪問した日の放課後、11月25日(日)の本番に向けて、生徒たちが自主的に工事担任者試験DD第三種の過去問題に取り組んでいた。

我々がお邪魔したとき、マルチメディア実習室ではちょうど「DD3種 過去問演習」が行われていた。

 「情報通信エンジニアの有資格者の順位が毎年出ますよね。去年は1位だったのですが、その前年(平成28年度)はたしか1人か2人の差で2位でした。そのことを生徒に言ったら、生徒から「2番より1番がいいよな」という声が上がり、「みんなでがんばらへんか!」ということで平成29年度に1位になったという経緯があります。学校の活性化のためにこの制度を利用させてもらっている部分もあるのですが、基本は生徒たちに高校で元気よく、楽しく、いっぱい勉強をして社会に出てもらうことだと思っており、そうした取り組みの一つかなと考えています。そして、こうした表彰制度があるのはなおさら励みになっていいなと思っています」

 ぜひ、尼崎双星高校には来年度も多くの資格保持者排出を期待したい。

左より金中  理教諭、藤井克二教諭、谷  清隆校長、森定裕幸教諭

(文責:「日本データ通信」編集部)