Pマーク取得事業者の横顔:㈱アイ・コミュニケーション

株式会社アイ・コミュニケーション
代表取締役 目次 真司 氏

株式会社アイ・コミュニケーションは島根県松江市を拠点に双方向告知通信システムの開発・販売等を手がける企業である。過疎の問題にIT を用いて対応しようとする同社の取り組みが評価を受け、平成29 年12 月には、経済産業省が選定する「地域未来牽引企業」の1 社にも選ばれている。

―――会社設立の経緯について教えて下さい。

 私は1990年にケーブルテレビ施設関連の設計事務所として株式会社メディアトークを設立しました。当時のケーブルテレビ業界はメーカー主導で、機器に合わせた設計・施工を行っており、自治体やケーブルテレビ局の立場に立って中立的な機器選定や効率の良い設計が行われていないことに疑問を感じたことが始まりでした。お客様に寄り添って業務を行っていたある日、業務先の自治体の町長から「通信インフラを整備することは良いが、若者がインターネットを使うだけになっている。年寄りにも意味のあるサービスはできないか。」と言われ、末端の利用者である住民、特に過疎化の進む中山間地に住む高齢者でも利用する価値のあるサービス提供が必要だと感じました。そこで2008年に株式会社アイ・コミュニケーションを設立し、双方向告知通信システムの開発・販売を行うようになりました。

―――貴社の主な業務内容は何ですか?

「知らせますケン」
弊社は双方向告知通信システム「知らせますケン」の販売を行っています。自治体の情報を住民にお知らせするには広報や回覧板、ホームページへの掲載等が挙げられますが、その中で告知端末を住民宅に設置し放送を行う方法があります。「知らせますケン」は耳の不自由な高齢者でもお知らせの確認ができるよう、画面と音声で構成されています。「知らせますケン」は中山間地の自治体を中心に85,000世帯の方にご利用頂いています。

「知らせますケンⅡ」
東日本大震災の時、「知らせますケン」を導入する自治体も被災したことを受け、家庭に設置した端末の限界を痛感しました。外出した方、町外に移住した方でも自治体の発する情報を即座に受けることができれば、災害時に情報が遮断されることも無く、かつ、地域との繋がりを保ち続けることができるのではと考え、「知らせますケンⅡ」の開発を始めました。

「知らせますケンⅡ」は各個人の所有するスマートフォン、タブレットに対し告知情報の発信が行えます。
個人の所有する端末を利用することで導入する際の費用負担の軽減も見込めます。昨今、スマートフォンの保有率が60%を超えたと言われていますが、地域の高齢者にはスマートフォンやタブレットの操作が出来ない方も多くいらっしゃいます。我々は「いつでも・どこでも・だれでも」を合言葉に、スマートフォンやタブレットの操作に慣れていない方でも直感的に操作できるよう工夫し、多くの方にご利用していただけるものづくりに邁進していきたいと思います。

テレビ電話端末を活用する「知らせますケン」(上)と、端末機器を選ばないクラウド型「知らせますケンⅡ」(下)

―――Pマークを取得しようと考えたのは何故ですか?

 ケーブルテレビ施設の設計のみであれば個人情報の取得について管理することはあまり多くはありませんでした。しかし、「知らせますケン」の販売・保守を行うにあたり、告知端末を導入する自治体の住民の個人情報を多量に取扱う必要が出てきたため、Pマークの取得を考えました。現在、「知らせますケンⅡ」のユーザーの個人情報も取扱うようになり、今後、個人情報の管理は一層強く行うことが必要となっていくことが考えられる中、Pマークがあることで個人情報を扱うことがどれほど責任重大であることなのかを社内で認識することにつながっています。

―――個人情報保護の仕組みを整備する上で難しかったこと、力を入れたことは何ですか?

 今回でPマークの更新は4回目になるのですが、前回の3回目の更新時までは、個人情報管理台帳に挙げている個人情報の項目が多く管理するのが大変でした。個人情報管理台帳は部署毎の個人情報を記載しているのですが、同じような個人情報を重複して記載していたり、氏名だけの書類も個人情報管理台帳に挙げて管理していたりしていたからでした。前回の審査後にまずは個人情報管理台帳の見直しを行い、特に重要な機微な個人情報を重点的に管理していくことにしました。個人情報を整理したうえで、個々の個人情報について、改めてリスク分析等をし、運用を見直すことにしました。その結果、無駄な作業が減り、本当に重要な個人情報に特化して、PMS(個人情報保護マネジメントシステム)を運用することによって、会社全体の個人情報漏洩のリスク低減につながっているのではないかと考えています。

―――審査を通じて感じられたことを教えて下さい。

 更新の審査を通じて、PMSを運用していく上で最も重要なことはPDCAのサイクルを回していくことだと改めて認識しました。特に「D」で実際に実施していくことはもちろんですが、「C」でチェックを行い、不備があれば「A」で対策を打っていき、また運用していくといった運用レベルの質を上げていき、できる限りリスクを減らしていくことが重要だと感じています。

 また社内のPMS運用のレベルを上げるために、まずは個人情報保護の知識を高める必要があると考え、2年前に日本データ通信協会に個別の研修を開催していただきました。従来から抱いていたモヤモヤした疑問などにも丁寧に解説してもらいました。おかげさまで今までの運用を改めて見直すことができ、しっかりとした運用が再スタートできたものと感謝しています。

―――今後強化していくポイントは何でしょうか?

 今まで自治体に納めさせてもらっている告知システムですが、今後はインターネット上に設置している弊社のサーバで告知システムを運用してもらうクラウド型にシフトしていくことを考えています。クラウド型のシステムを利用してもらうことによって、専用の端末だけでなく、スマホなど個人が所有している端末にも告知配信ができ、従来の自治体の住民だけでなく、住民以外の関係する方々にも利用できるようになります。それによって、弊社が扱う個人情報の幅が広がってくる反面、より個人情報漏洩のリスクが高まってくものと思われます。クラウド型のシステムにおける個人情報保護については、クラウドサーバのセキュリティ強化はもちろんですが、漏洩するリスクが高まることを再認識して、リスク分析をしっかりしていくことが重要だと考えています。

【企業プロフィール】
会 社 名 :株式会社アイ・コミュニケーション
本社所在地 :島根県松江市北陵町46-4
代表取締役 :目次 真司
設立年月日 :平成20 年4月1日
ホームページ:http://www.i-communication.co.jp/