challenge! 福岡工業大学附属城東高等学校

福岡工業大学附属城東高等学校
電気科 教諭 江渕 茂友 氏

学校紹介


 本校の前身は昭和33年創立の福岡電波高等学校で、その後昭和49年に福岡工業大学附属高等学校と校名変更し、さらに学校改革に取り組む中で平成13年に現在の校名に変更しました。
 現在は普通科と工業科(電気科、電子情報科)からなり、生徒数は約2100名、各学年普通科約500名、工業科約200名程度となっています。普通科ではⅠ類特別選抜・Ⅰ類・Ⅱ類特別選抜・Ⅱ類・Ⅲ類と各コースで充実した進学指導を行います。工業科は電気科・電子情報科からなり、平成26年からスペシャリストコースを設置して進学及び就職の一層の充実した指導を図っています。

 工業科では特に「資格取得」および「ものづくり教育」に重点を置いて指導を行っています。後者に関しては、ロボット相撲が13年連続全国大会に出場し、毎年好成績を残しております。他に「工業科プロジェクト」としてロボット競技プロジェクト、エコ電カープロジェクト、ITプロジェクト、生徒研究発表会等、テーマごとにいくつものプロジェクトが熱心に活動しています。
 一方前者の「資格取得」については、比較的短期間で成果が出て、その成果は資格者証の交付ということで示されることもあり、平素の授業では得られない教育効果が期待できます。ちなみに平成28年度の資格試験合格者は以下の通りです。

工事担任者DD第3種44名危険物取扱者60名
工事担任者AI第3種8名ITパスポート3名
第1種電気工事士5名基本情報技術者2名
第2種電気工事士152名応用情報技術者1名
第2級陸上特殊無線技士91名各種検定866名
第2級海上特殊無線技士40名各種講習241名

工事担任者試験へ向けての取り組み

 本校では電気科・電子情報科2~3年生の希望者に工事担任者試験を受験させており、できるだけ多くの生徒がこの資格を受験するように促しています。過去には年間の受験者が100名を超えたこともありましたが、近年は60名程度となっています。この資格は今後とも社会的な需要も大きいものですので、受験者そして合格者を増やしていきたいと考えています。
 初回はDD3種を受験させ、合格者には続いてAI3種を受験させています。また、指導担当者は現在2名で次のような指導にあたっています。5月と11月の試験2ヵ月前から補習を開始します。DD3種に向けては月曜日から金曜日に毎日2~3時間の補習を行います。前半の1ヵ月は科目別の指導で月・火曜日に基礎、水・木曜日に技術、金曜日に法規を扱います。後半の1ヵ月は過去問題による演習を行っています。演習では理解が進むように過去問題を科目別に編集して行うこともあります。さらに土曜日に補充日を設け指導の徹底を図っています。一方、AI3種では技術だけの科目受験ですので、週2日の補習で指導を行っています。指導者としては毎回全員合格を目標としておりますが、3科目受験のDD3種では全員合格を達成するのは難しく、最も良いときで91%の合格率でした。AI3種では1科目受験となるため全員が合格することもあります。
 生徒は国家資格を取得したいという思いが強く、熱心に放課後補習に取り組んでいます。しかしその一方で、計算問題が苦手な生徒や読解力の不足する生徒も多く、6~7限の授業後の放課後に行う長時間の補習では疲れが見えることもあります。また、学校行事や職員会議によって、補習時間の確保が難しくなっているのも問題点の一つです。
工事担任者の受験は生徒の意識に次のような効果をもたらしていると思います。ひとつは電気通信および情報ネットワークに興味・関心を持つようになり、関連教科の授業理解が深まっていること。もうひとつは、進路選択で情報通信を専門とする進学または就職を選択する生徒が増えていることです。また、情報通信以外の分野への進路を選択した生徒であっても電気科・電子情報科を卒業した証のひとつとなり、電気通信および情報ネットワークの不可欠な社会で生きる彼らの自信となっていると考えられます。私たちはこれからも高度情報化社会を支える人材育成ために、教育活動に邁進していきたいと思います。

合格者の声

電子情報科3年
松藤 華剛

私は工事担任者が今後の大学進学や就職に有利になると思い、昨年秋にDD3 種を取得して今春AI3種を取得しました。
今回のAI3 種は技術のみの科目受験であり、DD3種の経験もあるため気持ちの余裕がありました。しかしながらAI3 種の内容はDD3 種の内容とまったく異なるものばかりで、最初に問題集を開いたときは本当に解けるようになるのか不安でいっぱいになりました。
補習では一つひとつの問題に時間をかけてじっくり取り組んでいると、いつの間にか点数はどんどん上がっていきました。そして試験の2週間前には過去問題で満点を取れるようになっていました。その後も少しの時間も無駄にせずに授業の休み時間などを使って復習を徹底的にやりました。その結果当日の試験では緊張せずに落ち着いて受験することができ、見覚えのない問題もありましたが、あわてず最後まで冷静に問題を解くことができました。
後日行った自己採点は、うれしいことに満点という結果となりました。これは過去の問題を不安がなくなるまで何度も繰り返し解くことで実現できたと思います。そのことから私はやはり日々の努力の積み重ねこそが大切だと学びました。
これから先の進路では情報系への大学進学を考えていますので、この資格を礎にさらに難しい専門的な資格に挑戦しようと思っています。 そして、将来この資格を活かせる仕事に就きたいと考えています。

電子情報科3年
紀伊 佑人

この度私は工事担任者DD3 種を取得しました。この資格を取得した理由は、インターネットやネットワークにおけるデータ通信などに興味があり、この資格取得を通してさらに知識を深めようと思ったからです。
この資格は科目合格の制度もありますが、私は中途半端なことをしたくなかったので一発合格を目指し勉強しました。2ヵ月に及ぶ補習の中でテキストや過去問題などを用いて勉強し、基礎と技術及び理論の分野は目標点数以上取れるようになりました。しかし法規の分野だけは試験日が近づいても苦手で合格点ギリギリしか取れていませんでした。
私は一発合格という目標があったので諦めることなく分からない箇所は友人に聞き、テキストを持ち帰り家庭でも学習することで理解を深めました。そして試験直前にはすべての科目で目標点を大幅に超えることができ、無事に合格することができました。
この結果は自分の力だけでなく先生や友人のおかげだととても感謝しています。
今回の工事担任者試験では合格を勝ち得ただけでなく、目標を立てそれに向けてこつこつ勉強していく努力の大切さを学ぶことができました。この経験をこれからも他の資格や将来社会人になったときに活かしていけるようにしたいと思います。

電子情報科3年
平川 泰山

私が工事担任者の資格試験を受験したのは、担任の先生による勧めからです。それまで私は電子情報科でありながら電気系の資格ばかりを取得していたため、情報系の資格でやりがいのあるものを取得したいという思いがありました。
DD3 種の補習は2年生の10 月から始まりました。2ヵ月の補習を受けたにもかかわらず試験の直前まで過去問題を解いても合格点に達しないため、諦めようと思うことが何度もありました。しかし、先生は同じ問題を何度も熱心に教えてくれました。また、友人も問題の傾向や解き方のコツを教えてくれました。試験の前日には所属している科学部の大会もあったため心配だったのですが、友人や後輩は資格試験の勉強に専念させてくれました。
試験を受けた後の自己採点では全ての科目が合格点に達していましたが、自己採点に不安もあり、本当に合格しているのか気が気ではありませんでした。実際に家に合格通知が届くと自分がやり遂げたことを実感しました。そして長い期間補習を受けた時間は決して無駄ではなかったのだと嬉しくなりました。
この春にはAI3 種にも挑戦しました。そしてその合格通知もしっかり受け取ることができました。この工事担任者の資格は私にとって大きな自信になりました。またその過程で得た経験を将来に活かしたいと思います。

(初出:機関誌『日本データ通信』第216号(2017年10月発行))