ICTセミナー:NTT西日本グループにおける取り組み

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NTT西日本株式会社
代表取締役副社長
黒田 吉広 氏

情報通信の分野は、日進月歩を続ける情報技術を支える屋台骨として、ますますその重要性を増しています。
ハード面ではスマートフォンやドローン、ソフト面ではAIやビッグデータなど、すさまじいスピードで未知の可能性を広げていくITとIoTに対し、NTT西日本グループは新たな中期戦略「飛躍のステージへ」に基づき「ビジネス市場における収益力強化」「光サービスの利益拡大(コラボ中心)」「グループ会社の成長ビジネス拡大」の3つの柱を中心に取り組んでいます。

NTT西日本について

 NTT西日本グループは、近畿・中国・四国・九州 のほか、中部・北陸の一部、計30府県の通信網をカバーする、NTT東日本と並んで「地域セクター」と呼ばれる事業分野に当たります。東日本が首都圏 を中心に17都道県をカバーしている一方で、西日本はエリアが広く、離島なども多いことから資源が分散していることが地域的な特徴です。

 グループの社員数は約6万2000人。NTTビジネスソリューションズ、NTTマーケティングアクト、NTTネオメイト、NTTフィールドテクノ、NTTビジネスアソシエなど、それぞれ専門分野に特化したグループ企業を作り、互いにグループ全体の業務をサポートしながら事業を運 営しています。グループ企業は、全体のビジョンと各社の専門性に基づく独自のミッションをもっています。

 業績については、図1に示すように2016年度の営業利益は951億円というNTT西日本発足以来の最高益を出しました。過去には大きな赤字を計上したこともありましたが、その後は経営の合理化などで業績を少しずつ改善させたことによって、今回の最高益更新の実現に至りました。今はその波に乗り、1,000億円というさらにチャレンジングな目標を立てています。

ビジネスの三つの柱について

 NTT西日本のビジネスの柱は三つあります。一つ は、コンシューマー向けの光回線ネットワークサー ビス。二つめは、法人ユーザー向けのさまざまなサービス提供。最後に、通信に限らずさまざまな成 長分野での新規ビジネス開発です。

A. ビジネス市場における収益力強化
 グループの収益の約半分が法人ユーザー向け事業 によるものです。地域格差、人口減、高齢化、インフラの老朽化、災害対策…社会の抱えるさまざまな課題・問題の解決に向けたICTニーズは年々強まっており、NTT西日本もさまざまな企業と協力してこれら諸問題の解決に取り組んでいます。一例としては、高齢化に対する介護福祉サービスがあります。介護ヘルパーと高齢者の方とが光回線を通じて、いちいち外に行かなくてもお互いに会話ができるというコミュニケーションや見守りのサービスです。

B. 光サービスの利益拡大(コラボ中心)
 光回線のコラボレーションモデルとは、販売機能 をもっている企業とアライアンス契約を締結し、各社のもっているサービスと組み合わせてNTT西日本 の通信サービスを販売することができる形態のことです。委託企業はNTT西日本ではなく自社のブランドを使って販売することが可能な、いわゆる卸売の 形態になります。
このコラボレーションモデル以外として現在、トピックとして挙げられるのは、民泊です。外国人旅 行者の増加に伴い、空き家やマンションの空き部屋を活用した民泊のニーズが高まっています。しかし 鍵の受け渡しを宿泊客の都合に合わせなければならないなど、オーナーの負担は大きい。そこでスマー トフォンのアプリを使った鍵の開閉などが可能になる民泊サポートパックを提供し、それらの負担を解 消するソリューションを提案しています。
これらICTによるソリューション事例は数十種類にのぼり、NTT西日本のホームページで公開しています。

C. グループ会社の成長ビジネス拡大
 利益が増えているとはいえ、売上が縮小していくことは看過できません。そこで第三の柱である成長ビジネスに注力しています。徐々に成果も見え始めたところなので、今後は売上増にインパクトを与えうるビジネスに成長させられるよう、各分野への拡大には大きな期待を寄せています。
では、具体的にどんな分野でのビジネスを開拓しようとしているのかを解説します。

(1) 総合アウトソースソリューション
 コールセンターをはじめとする総合アウトソースソリューション分野は、成長ビジネスの中でももっとも大きな分野になります。コールセンターでは、電話口の相手が喋った言葉を音声認識ですべてテキ スト化し、AIがその内容に応じた最適なキーワードを認識します。すると、オペレーターが電話をしながら見ているオペレーション画面に、今の会話の内容とリンクした関連キーワードの情報がすべて表示される、というシステムです。会話時のオペレーターの負担減や、対応力の向上に対する顧客満足度の向上につながります。
 音声通話だけではなく、ウェブを介したさまざまな問い合わせにもAIで対応できる技術を提供しています。近い将来、AIだけで全ての会話に対応ができるような時代の到来を見据えて、この分野の育成には大きな比重を置いています。

(2) コンテンツ
 NTTソルマーレという企業では、漫画やゲームを、スマートフォンなどの機器を通じて販売しています。現在、利用者数や取扱漫画冊数は国内トップクラスを誇る規模にまで成長しました。
 また、最近ではスマートフォン向けのゲームアプリの販売も開始しました。アメリカ向けに、忍者や探偵などの要素と恋愛を組み合わせたゲームを販売しており、好評を博しています。それらの実績もあり、恋愛ゲームというジャンルではトップシェアまで拡大しています。

(3) エネルギー関連
 NTTスマイルエナジーという企業では、現在のトレンドである電力の見える化に取り組んでいます。電力の見える化とは、屋根に備え付けた太陽光パネルの劣化具合や発電状況、それが販売できているのかどうか、これらを可視化する仕組みです。パネルにセンサーを備え付けることで、NTTスマイルエナジーのサーバーにそれらのデータが蓄積されます。蓄積データはユーザーや販売会社が共有できるので、例えば販売会社が発電量の減少を発見した場合にユーザー側に故障の可能性を伝え、補修を提案できます。ユーザー側では発電量や販売量が把握でき、販売会社側ではメンテナンスのための日常的なチェックができる、ユーザーはそれによって安心して電力の運用ができます。非常に質のいい電力なので、販売もしやすいというのがこの電力の特徴です。

(4) ドローン活用
 管理者負担の大きなメガソーラー(家庭用ではなく事業者用の巨大な太陽光パネル)の点検を、マンパワーではなくドローンを活用して省力化する試みです。NTTグループの中でもメガソーラーを使ったビジネスを展開していますが、マンパワーによるパネルの汚破損をチェックしている状況が多くを占めています。
 これらの行程を図2に示すようにドローンで代替することが可能かどうかの検証や、巨大なメガソーラーの基地を上空から赤外線カメラで撮影し、温度の高低を可視化することで故障被疑箇所(ホットスポット)を発見する仕組みづくりに取り組んでいます。たとえばドローンのバッテリーが減少した際、ドローンが自分でバッテリー充電器まで飛行して充電するなど、利用者の負担軽減もさらに進むだろうと予測されます。これらを総合的に踏まえると、メガソーラーに限らず将来的にはさまざまな局面に応用できるという考えもあります。


(5) インフラ関連
 インフラ関連はNTT西日本のサービス品質の面でも公共的側面からも、重要な分野です。老朽化したインフラの点検にICTの導入を試みています。現在、道路は大型の点検車両が走って路面の損傷などを点検するのが一般的です。しかし、一般車両であっても車体の前方にカメラを設置することで路面の撮影を可能にし、車内にスマートフォンを設置することで振動センサーによる路面の測定も可能になります。それらの情報を組み合わせることで、道路の老朽化、損傷の状況を診断することができます。また、点検できるのは路面だけに限りません。MMS(モービル・マッピング・システム)で、位置座標(3次元)を持つ写真を撮影収集する技術を活用することで、電柱と電柱の間の距離や、電柱を結ぶケーブルが設置されている高さなどを高い精度で割り出せます。道路状況と併せて、それらの設備状況も点検することができます。これらの情報を集約し、各自治体とも協力していくことによって、さまざまなインフラの維持、整備に役立てることが可能になると考えています。

(6) IoT
 現在、さまざまな場面へのIoTの導入を試みています。一例として、センサーを使って空調機の動作状況を測定し、IoTネットワークを通じてそれらのデータを集約するという試験や、土地の水分含有量を測定し、その数値によって、散水のための栓を自動的に開閉するといった仕組みづくりなど、さまざまな試みに取り組んでいます。
IoTとはどんな技術なのか、ということよりも、IoTを使ってどのようなことが実現できるのか、ということが重要です。今後もさまざまな企業との協力の中で、その選択肢を広げていきたいと考えています。

グループの課題について

 NTT西日本グループの課題は、大きく分けて三つ あります。売上高の減少、設備の効率化、災害対策・危機管理です。

 売上高は減少を続けています。動画などのリッチ コンテンツが主流になってきた現在のネットワーク において、トラフィックの総量は加速度的に増加し ています。それに対応するためには設備を増強する ことが不可欠ですが、一方で収益源である通信料は 定額制のため増加には結びつきません。こうした構造が今後も続いていくと予想される中で、二つめの 課題である設備効率化につながります。

 トラフィック増に対応するためのインフラ増強は 欠かせないが、一方で設備投資を抑えな ければならない。この相反するような課 題をクリアするために、設備効率を上げてコストを抑えるという取り組みに注力 しています。その中心となっているのが 設備のマイグレーション(設備環境の移 行・変換)です。NTT西日本には、東日 本にはない独自のサービスが以前から存 在しており、それがサービス体系の変化に伴って陳腐化しているということが問 題になっています。つまり、そのサービスのためだけの保守・維持管理が必要となり、余分なコストが発生しているという状況です。マイグレーションにあたっては、ユーザーの住居にある機器をすべて交換する必要があるため、これがマイグレーションの進捗度を抑える要因になっています。

 また、電柱やとう道(通信ケーブルなどの管路トンネル)などのインフラも運用効率化の対象です。維持管理のために必要なメンテナンスの種類が非常に多く複雑になっているため、これらを少ない設備投資で対応していくために、さまざまな作業を自動化・複合化するなど、スマートオペレーション化に取り組んでいます。

 最後の課題が災害対策・危機管理です。災害対策では特に図3に示すような地震・津波に重きを置いています。ハザードマップなどの情報をもとに、絶対に守らなくてはならない設備の選定、支援に行くためのルート設計、移動手段などをまとめています。耐震・免震はもちろん津波や火災にも対処できるよう施設構造の増強やドアなどの補強にはしっかりと投資をしています。近年危惧されている南海トラフ地震を想定し、対策を講じています。危機管理として重視しているのはセキュリティです。世界中で、サイバー攻撃による被害の報告が相次いでいる状況を鑑みて、NTT西日本グループでは、セキュリティセンターを作って常に監視を行うなど、さまざまなリスクを未然に回避するための施策を打ち出しています。

本稿は2017年7月7日に開催された日本データ通信協会主催「第44回ICTセミナー」における黒田氏の講演内容を、講演者監修の下編集部で取りまとめたものである。(編集部)

(初出:機関誌『日本データ通信』第216号(2017年10月発行))