北海道からのタイムビジネスの推進


北海道総合通信網株式会社
ソリューション運用部
コーディネーショングループリーダー
伊藤 卓也

インターネットサービスやクラウドサービスなどの設備構築の業務を担当。昨年4月よりタイムビジネス協議会の普及促進WGに参加し、当社クラウドサービスとタイムスタンプとの連携について検討を行っている。

1989年4月創立の北海道総合網株式会社は、北海道を基盤として、北海道広域にわたり総延長2万kmを超える光ファイバー網を独自に構築し、企業・官公庁など法人向けに多彩な情報通信サービス(ICTソリューション:ソリューションブランド「S・T・E・P(ステップ))を展開している。2017年9月には、札幌市内で最大級となる「S・T・E・P札幌データセンター」サービスを開始している。
シリーズ第2回となる今回は、同社がどのようなサービスと戦略でタイムビジネス事業を展開し、市場を開拓しようとしているのかに追った。

導入背景

 「S.T.E.P Time Carve 時刻認証サービス」は、2011年10月よりサービス提供を開始し、間もなく8年目に突入する。当時は、電子データを処理し、安全に保存できる仕組みとしてIaaSサービスやストレージサービスの開発を行っており、さらに電子データの存在、非改ざんを証明するものとして(※1)タイムスタンプ機能の提供を開始した。本サービスは、時刻認証業務認定事業者(TSA)として、一般財団法人 日本データ通信協会所管の「タイムビジネス信頼・安心制度」の認定を取得し、契約者に安心して利用してもらえるようサービスの運営に努めている。接続として、L2L(広域イーサネット)サービス並びにC2C(インターネットVPN)サービスを利用することにより、高度なセキュリティを確保している。

 本年9月には「S.T.E.P 札幌データセンター」の開業により、データ保存先としてのIaaSサービスやストレージサービスに加えて、電子データが保存されている利用者の設備自体を預かることが可能となり、利用者のあらゆる要望に応えるべくサービスの拡充を図っている。また、C2Cサービスをはじめとする当社の各種ネットワークサービスを介して全国各地のユーザにも当社の各種サービスが利用できる環境を用意している。

※1…電子データが、ある時点に存在していたこと及びその時点から改ざんされていないことの証明が可能な技術で、電子署名と並び、ネットワークの安心な利用と電子データの安全な長期保存に資する技術。

特徴と課題

 本サービスは当社のネットワークサービスからのみ利用できるようになっており、ユーザのシステムなどをインターネットに公開せずにサービスを利用可能な形態とすることで、タイムスタンプサービス利用時におけるセキュリティリスクの低減を図っている。一方で、インターネットから容易にタイムスタンプを取得したいとの要望もあるが、インターネットに公開することでDDoSによるサービス妨害や不正侵入などのサイバー攻撃の脅威も存在することから、セキュリティを確保しつつ利便性を向上させることが課題であると認識している。

タイムスタンプの市場と展望

 医療、知的財産、電子契約関連、電子帳簿保存関連の分野では先進的にタイムスタンプが活用され、電子文書管理の導入の進展とともにタイムスタンプの需要が増加することを予想しており、さらに多くの分野に適用範囲が拡大され、存在証明、非改ざん証明に関する需要が拡大されることを期待している。特に、電子帳簿保存法におけるスキャナ保存制度において、一般財団法人日本データ通信協会の認定するタイムスタンプが必要だと規定されたことは、大きなインパクトだ。

 未だ、紙が重宝されている中に、一定期間の保管が義務付けられている国税関係帳簿書類が保管コストの観点から電子化されることにより、急速に進んでいくものと思われる。

 また、昨今、企業にとって戦略的な知的財産管理の重要性が高まっており、他社が特許出願する前からその発明の実施である事業をしているような状況があった場合に、先使用権者としての証拠を確保しておくことが大切になってきていることにも注目している。

 保管期間に法的な定めのある電子文書の他にも、法的に保管期間の定めのない一般的な電子文書がある。電子文書は、長期間の保管が可能となることや検索ができるようになることで、利便性が大きく向上する一方で、可用性、完全性、機密性などに関する管理機能が極めて重要となり、長期保管を行う場合にはコストが大きくなる。長期保管の重要性とコストの観点などを総合的に分析し、ストレージサービスやデータセンターを利用して、可用性、完全性、機密性を維持する検討も一挙に加速されると考えており、当社の各種サービスを積極的に展開したいと考えている。

タイムスタンプのコスト

 コスト的な課題も残るタイムスタンプであるが、市場が拡大することにより価格が低減されていくものと考えている。一方で、電子文書管理にフォーカスした形で市場が拡大していく場合には、タイムスタンプ単独での価格に大きな意味はなく、電子文書管理全体のコストで議論されるものと考えている。

今後の取り組み

 電子文書、電子データに関する管理はコスト的に課題がある一方で、あらゆるものがデジタル化され利便性が向上するために、今後も重要性の高まりが予想されることから、当社のネットワークサービスやクラウドサービス、データセンターサービスに、これまで培ったシステム運用ノウハウをアドオンすることで、電子社会に向けた電子データの安全かつ信頼あるサービスを今後も提供していきたいと考えている。
 本格的なIoT(モノのインターネット)(※2)の普及で更なるデジタル化が進み、あらゆる物の状態や動作が自動的にデータ化され時刻情報と共に管理されることが常態化され、より信頼できる時刻認証及びデータの非改ざんの確保が一層重要とされてくると考えている。
 電子文書以外にも、システムログやセンサーデータ等高い信頼性が求められるデータも、今後拡大することになる筈でタイムスタンプの潜在ニーズについても、注目していきたい。

※2…モノとインターネットとの融合により、新たな付加価値を創造すること(Internet of Things)

S・T・E・P札幌データセンター紹介
~より確かで、より安心で、より便利なデータセンターを~
大規模な自然災害の発生やシステム障害など、 組織にとって重要なITシステムは様々なリスクにさらされている。 「S.T.E.P 札幌データセンター」は、こうした脅威からお客様の情報資産を守るため、 災害リスクがきわめて低い札幌市内を拠点とした。
都市型データセンターのメリットである交通の利便性の良さと、地方型データセンターのメリットである土地代が安価でセキュリティ面での堅牢性も実現しやすいという双方のメリットを併せ持っている。
札幌市が今後30年間に震度6弱の地震に見舞われる可能性は0.1~3%で、台風の接近も平年値で1.8回と、全国的にみても極めて低い数値で、自然災害の被害を受ける可能性が非常に低い立地でもある。 建屋自体も不測の事態に備えた免震構造や消火設備、自家発電装置などを完備し、万が一の災害時に備えている。
首都圏から札幌までは約800km離れており、大規模災害発生を想定した同時被災リスクを低減することが可能であるとともに、当社のネットワークサービスを介して全国各地からの「S.T.E.P 札幌データセンター」利用を容易なものとしている。
通信事業者として当社が磨き上げてきた確かな技術や運用ノウハウ、最新鋭の設備により、信頼性の高いITシステム運用環境をトータルに提供する。○特徴
・震度7クラスの地震に耐える、強靭な免振構造
・1ラックあたり最大20kVAの電源供給。異なる変電所から本線・予備線の特別高圧2系統を受電
・総床免責約1500㎡のハウジングスペースに42Uサーバラック約500架を収容
・72時間無給油で連続運転可能な自家発電装置や、UPS(無停電電源装置)を完備
・地下水を活用したフリークリング併用の空調設備で、省エネルギー化を実現
・運用サービスにより、お客さまの業務負担を軽減し、効率的な運用体制を実現○サービスメニュー
・ハウジングサービス
フルラック、ハーフラック、クォータラック
・運用サービス
日次/週次/月次巡視、リモートハンズ
・データセンターインテグレーション
企画/コンサルティング、設計、移設/導入/環境構築、運用/保守、撤去/廃棄

(初出:機関誌『日本データ通信』第216号(2017年10月発行))