Pマーク取得事業者の横顔:㈱わくわく広場

株式会社わくわく広場
代表取締役 大野 智枝子 氏

事業内容:幼稚園を中心としたデリバリー給食の提供、スクールランチの受注システムサービス業務、弁当製造ライン管理、衛生管理業務全般を行う。

起業の経緯

 栄養士の学校を卒業後は、当時注目され始めていたコンピューター関係の仕事に興味を持ちCADソフトメーカー、電気メーカーのシステム販売部門に在籍しました。
 結婚出産を機に家庭に入り、家事育児の日々を送っていました。当時子どもたちが通っていた幼稚園の給食試食会に参加し、デリバリー給食の現実を知ることとなりました。
 自身の趣味が子どもの食事作りであったことから、幼稚園での給食時間、外部から運ばれてくる弁当式給食に、温かさや楽しさや学びを盛り込むことが出来ないかと考えるようになりました。また、食品アレルギーで他の子どもたちと同じ食事やおやつを食べられずにいるお子さん、そしてその症状は自分自身の責任であると悩みながらいる父兄の声を聞く時間を過ごしました。
 この時期の経験を機に、一生の宝となる幼少期の楽しい思い出を、食事を通してより多く体感して欲しいと思うようになりました。「わくわく広場」はこれが、起業の原点であると考えています。

リサーチを開始

 同じ幼稚園保護者で栄養士資格を持つ数名の仲間 と共に、平成21年10月、近隣の幼稚園の給食形態 のリサーチを開始しました。その後、

  • 園内調理の温かさに近い献立展開
  • 国際社会に沿う新しいメニュー作り
  • 誰もが同じメニューを共に食す幸せ
  • 食べ物の持つ力を学べる給食

を基本コンセプトとし、平成22年2月、㈱わくわく広場を江戸川区小松川に開設。オリジナルメニューとサービスの提供を開始しました。
 当時の幼稚園給食業界を取り巻く環境は、喫食対象者が低年齢なため、その安全性に対するハードルの高さから新規参入する事業者はほとんどない状況でした。そのため、幼稚園側は業者を選択する余地がなく、何十年と同じ給食業者との取引をしていました。アレルギー除去対応についても同様で、その危険さから個人別に成分除去対応する業者もおらず、アレルギー症状を持つお子さんは家庭からのお弁当を持参するしか方法はありませんでした。

 現在当社では多いときで1日に8,000食の給食作りをしていますが、その内250名近くの個人別アレルギー除去対応給食を作るようになりました。今でも忘れられない、保護者からの一言があります。除去食対応のためにアレルギーのヒアリングを行っていたところ、「娘が産まれてから唯の一度も外食をしたことがありません。週に1回でもいいので娘の食事を他の方にお願いしたい」と訴えてこられたこと。その言葉の重みを忘れません。その信頼を決して裏切ることは出来ません。大切な人の命をお預かりする責任の重大さを、スタッフ入社の際、一番に伝えることにしています。

ハマ弁事業をはじめたきっかけ

 園児向け給食、小学校給食、中学校給食、大学向けランチサービス等の事業を進めていく中で横浜市の公立中学校での昼食サービス事業に関わる相談を頂戴します。
 弊社で持つWEB注文システム、アレルギー成分 管理業務、献立作成、製造工場内の衛生管理・製造 管理業務、食育事業、配送管理業務のノウハウを活かし、給食の無い横浜市の中学生に利便性が高く、おいしく安全な昼食を提供することが出来ると確信しエントリーしました。
 実際の弁当製造配達は横浜市近隣の専門業者に再委託する形をとっていますが、このビジネスモデル は全国の中学校昼食業界ではただ一つの事例となっ ており、プロポーザル方式の入札で平成27年12月「ハマ弁提供協力事業者」として指名を頂きました。 現在、横浜市内中学校145校への昼食提供実施中です。

プライバシーマーク取得を決意した理由

 創業当時からお預かりしているお客様とのお取引条件や機微情報、また、ハマ弁事業をスタートするにあたり、最大82,000名にも上る利用者の方の個人情報も合わせ、全ての情報を厳格に管理する方法として、Pマークの認証制度を利用させて頂くことが一 番効率的であると考えました。
社内業務と業務委託先の情報管理状況も合わせ監視管理することで、これまでとは大きく違った作業や新規の流れを作ることになりますが、受注システムのセキュリティー対策強化、決済代行業務に関わる委託先との関係性の見直し、社内基幹システムの 運用ルール作成等、電子情報の取り扱いに対する社内の認識向上にもつながると確信しました。

審査の感想

 社内監査、コンサルティング会社監査を経て、日本データ通信協会による審査を受けました。
代表者質疑では想定問答集にはない質問が多く、オリジナルの回答を的確に述べることが出来たか不安もありましたが、ありのままの気持ちを受け止めて頂きました。
 社内Pマーク担当者2名も相当な緊張で当日を迎えましたが、審査員の方から駄目なところの指摘をされるというよりは、どうしたら上手く運用できるかのお知恵を中心にガイド頂いた、との報告を受けました。必要以上に手をかける事で継続運用が難しくなること、Pマーク担当者を組織化し体制を強化すること等、長続きする為の具体的なアドバイスを頂いたことに感謝しています。
審査を通し、これまでの準備期間とはまた違った視点で管理に取り組めることを実感しました。

(初出:機関誌『日本データ通信』第216号(2017年10月発行))