令和6年「情報通信エンジニア」優良団体表彰模様(学校の部)

 工事担任者、無線従事者、電気通信主任技術者などの国家資格の有資格者の知識や技術の向上を支援するための制度が情報通信エンジニアスキルアップガイドライン委員会(事務局:日本データ通信協会)の「情報通信エンジニア」です。
 情報通信エンジニアスキルアップガイドライン委員会では情報通信エンジニアの育成と資格取得を支援している団体を「情報通信エンジニア優良団体」として毎年表彰しており、令和6年も企業5団体、学校3団体が受賞しました。学校の部で受賞した3校を訪問して行われた表彰の模様をご紹介します。

第1位:福井県立科学技術高等学校(資格者数52名)

情報通信エンジニアを取得した福井県立科学技術高等学校の生徒の皆さん

 今年度、学校の部で1位に輝いたのは昨年度の24名から52名に大きく人数を伸ばした福井県立科学技術高等学校です。これで令和元年から6年連続での受賞となりました。

 福井県は全国でも指折りの求人倍率の高さで、福利厚生等の待遇がよい地元企業が多いこともあり、卒業して就職する生徒のほとんどが地元で就職しています。そのような環境において、ご自身も20年ほど前に工事担任者を取得された加藤龍一校長先生は、「当校のような職業系の学校では、資格を取って社会へ出ていくことが何よりも大事なことであり、地元の産業界にできるだけ質の高い人材を輩出することが工業高校の使命であると考えている。」と、資格取得に対して非常に前向きに考えておられます。

 すでに第一級デジタル通信や総合通信の合格者を多数輩出している本校ですが、「工事担任者は高校生が受験するには比較的取り組みやすい難易度ではないかと思っている。電気工事関係の資格では第三種電気主任技術者のように、高校生だと数年に一人は頑張って合格までこぎつけるが、大抵は科目合格で終わってしまうレベルの資格がある。電気通信関係で同じような難易度の資格としては電気通信主任技術者が相当するのかと思われるが、この資格にも生徒がチャレンジできる環境を整えていきたい。」と、工事担任者の上級資格よりもさらに難易度の高い資格の取得も視野に入れておられます。

 また、「地元産業が発達している福井県には、福利厚生と給与面で十分に満足できる一部上場の優良企業が数多くあり、地元での就職を希望するのであれば本社採用となる大学卒業ではなく、高校卒業での就職の方が有利である。」とおっしゃる加藤校長先生からは、生徒の希望に合わせた将来のことも真剣に考えられていることが垣間見えました。

 今後も、日進月歩する電気通信・情報通信に対し、資格保有者が常に新たな知識及び技術の向上を図ることができる情報通信エンジニアを活用いただき、引き続き地元企業へ優秀な人材を輩出されていくことを祈念いたします。

加藤龍一校長(左)と寺内徹教諭(右)

第2位:鹿児島県立種子島高等学校(資格者数25名)

情報通信エンジニアを取得した種子島高等学校電気科の皆さん

 3年連続三度目の「情報通信エンジニア」団体表彰の栄誉に輝き、昨年より順位をあげて2位となったのが鹿児島県立種子島高等学校です。

 種子島高等学校は、古くは鉄砲伝来、近年ではロケット打ち上げの島として有名な種子島の北部の小高い丘に位置し、普通科、生物生産科、電気科の三学科で構成されています。

 『産業界の主力となって活躍する次世代の電気技術者を育成する』電気科は3学年の総数が64名、1年生では工事や電気の基礎を学び、2・3年生で専門科目の学習を深め、進路実現のために各種資格取得に挑戦しています。

 1年生で「特殊無線技士資格」を受験し、その知識をベースに「情報通信エンジニア資格」の取得にチャレンジしています。また、今年度は試験的に種子島高校でCBT方式による第二級デジタル通信工事担任者試験が実施されました。「3年生24名が挑戦して7名が合格した。授業の中で学習とつなげることができ、各教員が分担して指導した。ただし、パソコンを使っての試験は生徒にとって初めてであり、今回の反省点を次に活かしたい。」とおっしゃっています。

 第二級デジタル通信工事担任者試験は、「電子技術」「工業情報数理」「電気回路」などの授業に関連性が高く、通信の知識、技術の習得の第一歩として継続して取り組んでいくとのことです。
また、資格取得については、受験のために海を渡って鹿児島市内の受験会場まで行かなければならないという、離島であるがゆえの悩みがあり、島内でのCBT等による継続的な試験開催を望んでいます。

 電気科の卒業生は就職と進学が半々であり、ほとんどの生徒は島外の企業に就職していますが、島内にある宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙センター関係の企業に就職もしています。
「島内、島外ともに生徒がやりたい分野の求人がたくさんある。それぞれの生徒がやりたい仕事、自分に合っている仕事に就いてもらえたらよい。」とのコメントのとおり、先生方は、生徒の就きたい分野、意欲及び自主性を重視して丁寧にサポートされており、資格取得もその一助となっているようです。

 これからも地域のみならず世界で活躍する『産業界の主力となって活躍する次世代の電気技術者』を輩出され、ますます高度化、多様化する情報通信ネットワーク社会の構築に貢献されていくことを祈念いたします。

左から城ケ崎尚之教頭、西中間明弘校長、鶴留秀和教諭、前田圭一事務長

第3位:尼崎市立尼崎双星高等学校(資格者数13名)

情報通信エンジニアを取得した尼崎双星高等学校の皆さん

 今年度も情報通信エンジニア優良団体表彰を尼崎市立尼崎双星高等学校にお届けしました。同校は平成27年度以来10年連続の受賞となります。

 尼崎双星高等学校は、普通科、工業系学科(ものづくり機械科と電気情報科)、商業学科、と幅広い学科で構成されており、電気情報科では、工事担任者資格をはじめとする多くの資格取得に向け精力的に取組まれている先進的な学校です。

 今回の表彰に際し、長澤広昭校長先生からは、「最近工業高校を目指す生徒が減少傾向だが、当校に入学してきた生徒は国家資格取得の機会を得て、それに向け努力し、合格すればそれが自信となり、他の学習への頑張りにも繋がっています。このような中で情報通信エンジニアのような資格があることは非常に有難いことで、中学校に本校を紹介する際には、情報通信エンジニアに関わる内容を加味しながら紹介しています。」とのお話をいただきました。

 工事担任者試験が都合の良い日に受験できるCBT方式になったことを踏まえて、同校ではICTを活用した学習方法に取組んでいます。「以前は放課後等に受験希望者を対象に補習授業を行っていましたが、生徒一人1台端末を所有していることを活かして、毎日定時に過去問題及び解説付きの回答を送付し、生徒の勉強し易いタイミングで勉強する形に切換えています。」と紹介いただくとともに、CBT方式では受験者毎に試験問題が異なる点に対しても、「その点は特に気にしていません。今のやり方でより多くの過去問題を繰返し取組むことで、CBTの試験問題の多様化にも対応していきます。」と自信をもって生徒をサポートされていることが伺えました。

 同校は尼崎という土地柄もあり、地元の鉄道会社やメーカへ就職する生徒が多いですが、現代社会のバックボーンとして存在し、あらゆる業種で活用されている情報通信を学ぶことは、就職先に関係なく役に立つものとなります。今後も同校の取組みがより活性化され、情報通信に興味を持ち、電気・電子・通信に関わる人材が増えていくことに期待いたします。

左から長澤広昭校長、棒谷英法副学科長、大西総教諭、堂髙康弘教諭、開田守教頭

(注)資格者数は令和6年9月末時点の集計値です。