通信技術を学び、資格取得に挑む
栃木県立真岡工業高等学校
電子科教諭 信澤 翔

学校紹介
栃木県立真岡工業高等学校は、昭和38年に創立された、芳賀地区唯一の工業高校です。本校が位置する真岡市は、いちごの生産が盛んな地域として知られるとともに、自動車や電子機器をはじめとする製造業の事業所も多い地域です。本校では、普通教科と工業の専門教科を学び、実習や製作活動を通して知識と技術を身に付けることを大切にしています。卒業後は地元や近隣の企業に就職する生徒が多く、工業系の大学や専門学校などへ進学する生徒もいます。
令和11年度には、県立高校再編計画に基づき、真岡北陵高等学校との統合が予定されています。その一環として、令和8年度には機械科と生産機械科を再編し、新たに機械システム科を設置しました。統合後は、真岡北陵高等学校の校地に、農業、工業、商業、福祉の各分野を併置する未来共創型専門高校が設置される予定です。
こうした統合を控え、生徒から学校の名前を地域に残そうとする提案が生まれました。本校では学校運営協議会を設置し、コミュニティ・スクールとして、生徒も地域の方々と学校や地域の将来について話し合っています。その中で、閉校後も真岡工業高校の名前を残したいという生徒の発案から、学校前の通りを「真工通り」と名付ける取組を行い、令和8年6月1日には真岡市から正式に「真工通り」の道路愛称が認定されました。地域との関わりは、施設や企業と連携した教育活動にも広がっています。真岡市複合交流拠点施設「monaca」とは、令和7年5月26日に地域連携協定を締結し、生徒が製作した作品の展示や、地域の子供たちを対象としたものづくり体験などを行っています。また、令和7年8月23日には「モビリティリゾートもてぎ」と包括連携協定を締結し、モータースポーツに関する講話や体験活動、競技会の運営に関わる活動などを進めています。これらの活動は、生徒が地域の方や企業の技術者と交流し、学校で学んだ知識や技術と社会とのつながりを知る機会になっています。
電子科紹介
電子科では、電気や電子の基礎から、電子回路、通信技術、コンピュータ、プログラミング、計測、制御まで幅広く学んでいます。教科書で理論を学ぶとともに、実習では電子回路の製作や測定、プログラムの作成、マイコンを利用した制御などに取り組み、実際の動作を確かめながら理解を深めます。実習では、配線やプログラムの誤りによって、装置が思うように動かないこともあります。そのようなときは、回路図や測定結果を確認し、原因を一つずつ探して修正を重ねます。装置を完成させるだけでなく、動かない原因を調べ、改善する過程も大切な学習です。
授業や実習と併せて、学年に応じた資格取得にも取り組んでいます。2年生では全員が第二種電気工事士の国家試験に挑戦し、3年生では全員が工事担任者の第二級デジタル通信を受験します。電気工事から情報通信へと学習の範囲を広げながら、授業で学んだ内容を復習し、資格取得に必要な知識や技能を身に付けていきます。さらに、希望する生徒は第一種電気工事士の試験にも挑戦しており、毎年合格者を出しています。このほか、陸上特殊無線技士、危険物取扱者、ITパスボート試験などの資格取得にも取り組み、それぞれの関心や進路に応じて学びを深めています。
工事担任者試験への取組
本校電子科では、3年生全員が「第二級デジタル通信」を受験し、希望する生徒は「第二級アナログ通信」にも挑戦しています。受験前の生徒の思いはさまざまです。試験問題を見て難しそうだと感じたり、覚える内容の多さに合格できるか不安を抱いたりする生徒がいる一方で、しっかり勉強すれば合格できると考える生徒もいます。また、就職や仕事に役立つ資格として捉え、取得したいという気持ちを持って学習を始める生徒もいます。
試験に向けた学習は、3年生の4月から6月にかけて行います。「通信技術」「電子計測制御」「電子回路」の授業では、それぞれの学習内容と試験問題を関連付けながら基礎を学び、法規については授業開始前の朝学の時間を利用して学習します。さらに、試験の約1か月前から放課後の補習を始め、過去問題をまとめたファイルを一人一人に配布して問題演習に取り組みます。生徒が特に難しかったと挙げたのは、法規の暗記や基礎科目の計算問題です。計算に使う公式のほか、論理回路やブール代数、文字式を扱う計算に苦戦したという声もありました。分からない箇所は標準テキストで調べたり、友人に解き方を聞いたりしながら確認し、同じ問題を繰り返し解き直して学習を進めています。友人と教え合う中では、答えが分かることと、その理由を説明できることの違いに気付いた生徒もいました。友人から質問された際、答えは分かっていたものの、なぜその答えになるのかを説明できなかったことが印象に残っているそうです。一方で、学習を通して説明することが少し上手になったという感想もありました。教え合う時間は、疑問を解消するだけでなく、自分がどこまで理解しているかを確かめる機会にもなっています。
第二級デジタル通信の合格実績は、令和4年度が受験者40名中29名、令和5年度が36名中23名、令和6年度が40名中38名でした。そして令和7年度には、電子科3年生32名全員が合格しました。受験後の感想には、合格した喜びとともに、安心したという声がありました。また、不合格だった生徒からは、さらに勉強して次は合格したいという思いが寄せられました。試験結果を受け止め、次の学習に向かおうとする気持ちも読み取れます。学習を振り返る感想では、毎日続けることや、繰り返し問題を解くことの大切さに触れたものが複数ありました。初めは分からなかった問題も、取り組むうちに解けるようになった経験が、学習を続ける意味を実感するきっかけになっています。以前より自分から勉強するようになった、定期テスト前にも勉強に取り組むようになったという声のほか、自分は覚えることが得意だと気付いた生徒や、もっと自信を持ってよいと思えた生徒もいました。学校で学んだ内容の復習になり、電気回路などの理解が深まったという感想も寄せられています。
令和8年6月1日には、長年にわたる工事担任者の資格者教育と、多数の国家試験合格者を輩出してきた実績が認められ、「電波の日・情報通信月間」関東総合通信局長表彰を受賞しました。これまで資格取得に挑戦してきた卒業生と、指導に携わってきた教職員の取組の積み重ねが評価されたものと受け止めています。今後も、授業での基礎学習と問題演習を組み合わせ、生徒一人一人の資格取得を支えていきます。また、分からないことを調べ、周囲と学び合う経験を、卒業後も新しい技術を学び続ける姿勢につなげていきたいと考えています。
