【工事担任者の仕事Vol.12】チャレンジする資格に無駄はありません

高速道路トールテクノロジー 株式会社
保守・サービス本部 保守サービス部 料金システム保守課
諏訪 翔哉(すわ しょうや)さん

 今回は、全国の高速道路のETCなど料金収受システムの保守を行っている高速道路トールテクノロジーにお邪魔しました。工事担任者には電気通信工事会社で働く人が多いのですが、高速道路の料金収受システムを扱う会社でも活躍しています。
 出身地最寄りの事業所から仙台勤務を経て、現在は東京本社に勤める諏訪翔哉さんは、自身の将来を見据えつつ、仲間、後輩との関係を大事にするリーダー的存在です。どんな逆境にも負けない前向きな気持ちをお持ちの諏訪さんに、仕事での苦労、資格取得への考え方などについてお聞きしました。

~いずれは東京で仕事ができる会社を就職先に~

-諏訪さんのご出身はどちらですか?

 青森県弘前にある工業高校の電子科出身です。電子科では電気・電子の基礎を習い、2年か3年生の時にクラス全員が工事担任者のDD第三種(現在の第二級デジタル通信)を受験し、取得しました。また、電子科が第二級陸上特殊無線技士の長期型養成課程認定校であったため、第二級陸上特殊無線技士を取得し、3年生の時には第一級陸上特殊無線技士を受験して取得しました。ちなみに工事担任者のDD第二種は会社に入った2年目に取得しました。

現在は東京でお勤めですが、青森から就職で東京に来られる方は多いのですか?

 地元で就職する人が多いですね。私も入社した時は、地元に近い十和田テクノショップという事業所に配属されました。5年目には宮城の仙台テクノショップへ異動し3年間の勤務後、去年4月に東京の本社へ異動となりました。

-入社するときには転勤があることはご存知だったのですか?

 はい、もちろん事前に知っていて承知の上で入社しましたし、いずれは東京で仕事をしたいなと思っていました。

~自分自身の達成感だけでなく、異動により指導する苦労、やりがいも実感~

-入社して配属された十和田テクノショップでの仕事について教えてください。

 十和田テクノショップでは高速道路の料金収受システムの点検や修理を行っていました。配属されて半年くらいは一人で運転することが許可されていなかったので、現場には先輩と一緒にまわっていました。点検をして何か問題があった場合はその場で修理を行います。修理では通行券が詰まってしまった、汚れていて読み取れないなどの申告が多いですね。お金など重要なデータを扱う箇所を修理する場合は、現場を管理統括している本社の料金システム保守課に方針などを確認してから修理をします。

-料金所で閉まっているレーンを見たときは修理をしているときなのですね。当時、大変だった経験はありますか?

 入社して2年目か3年目のときに、1つのレーンで通行券が詰まったという申告の修理を対応したのですが、14時から修理を始めて終わったのが21時とえらく時間がかかった案件がありました。その間はレーンが閉まった状態で、かなり大変でした。
 通常は先輩や上司が支援してくれるのですが、その時は別の場所でも点検や修理が発生していて、現場に助けに来てくれる人がいませんでした。ただ、電話などでフォローはしてもらいましたが。

-高速道路の料金所は24時間稼働していますが、夜中に故障の連絡があったときも対応するのですか?

 はい、夜間でも対応します。夜間では最初に管理職に連絡が入り、管理職が故障内容の緊急度から夜間対応するかどうかを決めます。夜間対応すると判断された場合は、呼び出されて現地に向かいます。頻度は月に多くても2、3回ぐらいでしたね。

-その後、十和田テクノショップから仙台テクノショップに異動されたのですね。

 はい、やることは十和田のころと変わらないのですが、入社して5年目ということもあり、現場に行く機会は減ってデスクワークが多くなりました。
 十和田テクノショップの社員数は15人ぐらいでしたが、仙台テクノショップは東北の中で一番大きな部署で35人ぐらいいました。私が仙台に異動した年は転勤が多く、5年目の私のすぐ上が管理職で、逆に私の下に後輩が10人以上いる状態でした。さらには毎年新人も入ってきましたので、仙台での3年間は現場に行った後輩からの相談などを事務所で受けて指導、指示することがほとんどでした。
 電話での相談だと状況が理解しづらく、新人や入社2年目の社員だとどんな状態が正常稼働なのかもわかっておらず、話を聞いても「ん?」というようなことが多かったです(笑) そういうときはスマホで写真を撮って送ってもらうなどして、状況を把握しました。
 十和田の時はのびのびやっていましたが、仙台では社会人ってこんなもんだよなーと、だいぶメンタル面も鍛えられました。

-保守修理対応の仕事だと、直接お客様と接することもあるのですか?

 高速道路を利用するお客様とは直接話すことは少ないですが、料金所のスタッフ(NEXCOのグループ会社)がお客様となり、その方とはやり取りをします。どういう言葉使いにするか、専門用語はなるべく使わない、伝わりやすくするためにはどう言うかなどコミュニケーションの仕方には気を付けています。単に「故障している」とだけ言うと、保守会社としてちゃんと整備できていなかったのではないかと思われてしまうので、しっかり整備していることを説明した上で、利用している中でこういう原因で故障になって、という説明をするように心がけています。

-当時のお仕事はどういうところにやりがいがありましたか?

 故障を直したときの達成感や、指導して教えた修理内容を後輩が実践して「直りました」と言ってくれた時などはうれしいですね。家族の長男みたいな気分ですね(笑)
 難しいところはありますが、人間的にも精神的にも自分の成長になったのかなと思います。ただ、仙台では業務量が多くて大変でした。定時は17時30分ですが、翌日の業務量を考えると残業をしないと仕事が溜まってしまう状況でした。

~新しい仕事でより多くの人との出会いも増えました~

-去年の4月に異動された本社ではどんなお仕事をされていますか?

 料金システム保守課は現場をまとめる統括のような部門で、現場で使用する工具や測定器を調達して配備したり、保守で使用する部品を部品メーカーから調達して現場へ供給するなどを行っています。また、各拠点で料金システムに関する故障が発生した際には連絡があり、対策の検討、指示を行います。
 本社にきてからは社外とのやり取りが多くなりました。今の部署では10人くらいが3つのグループに分かれて業務を分担しているのですが、私のグループでは主に部品や工具の調達などを行っています。

-今の仕事は十和田や仙台での仕事とどう違いますか?

 全国のテクノショップを後方支援する部門なので、どこかの拠点で問題が日々発生しており仕事の終わりがありません。そのため、業務のタスク管理に力を入れるようになりました。

-緊急の案件などもあるのですか?

 もちろんあります。お客様から言われた案件や、メーカーに聞かないとわからないことがあれば、我々の部門が間に入ってメーカーに問い合わせをします。現場では夜間の修理対応もあるので、緊急の案件では現場と同様に夜間呼び出しで対応します。
 震災発生時には被災した料金所だけでなく、揺れた地域にある料金所はすべて確認をする必要があります。能登半島地震の時は、確認した結果が我々の部門に入ってきました。

-やりがい、意義のあるお仕事ですね。

 全国の拠点が相手になるので、色々な人に自分の名前が知られるようになると、個別に問い合わせ・確認がくるようになり、動きやすくなります。今の仕事に就いて1年3か月ほど経ち、ようやく名前が知られるようになってきました。直接問い合わせや相談がくるとうれしいですね。

-異動の度に新しい仕事に取り組まれていますね。

 転勤がいやだという人もいますが、私はむしろ転勤をしたいです。新しい部署で新しい人に出会えて、考え方も学べる場が増えますし、これまでやってこられなかった仕事にも取り組めるのがいいなと思っています。
 今いる料金システム保守課では、料金システムの開発メーカーに研修出向して技術的なことを学ぶ機会を得ることができ、今後チャレンジしたいなと思っています。また、他の部門に関連することだと、社員向けの研修センターで講師とかもやってみたいと思っています。

~今後も新しい資格にチャレンジします~

-今後取りたい資格はありますか?

 最終的に現場にもどると思いますので、工事担任者と電気工事士は持っておきたいなと思います。工事担任者はDD第二種までしかもっていないので、まずは第一級デジタル通信を取り、そのあと奨励金制度を利用して総合通信も取りたいと思っています。

-資格を取ると会社から手当が出るのですか?

 はい、資格手当が毎月の給与に上乗せされます。対象の資格は全部で5種類あり、1種類あたり千円、最大3千円まで上乗せされます。
 その他に資格取得を奨励する制度があり、取得した資格のレベルに応じて一時金として奨励金が支給されます。第一級デジタル通信は、必須資格として取得を義務付けられていますが、総合通信を取れば4万円支給されます。

-資格取得にあたっては会社が用意してくれる教材などもあるのですか?

 部署によっては先輩が使った教材をおいてくれています。また、各地区には資格を推進する委員会があり、その単位で過去問などをONE DRIVEなどで共有しています。
 東北地区では、毎日終礼後の就業時間外に1時間の勉強会が開かれていました。強制はされていないですが資格を取った上司や先輩が講師となって20人ぐらいが参加していました。

~複数の資格にチャレンジを~

-会社に入ってからも資格取得されていますが、仕事をしてからの方が資格はとりやすいものですか?それとも学生のうちに取った方が良かったなと思いますか?

 知識に関しては会社に入って仕事をしてからの方が理解は早いかなと思います。ただ、社会人になって一人暮らしになったことも影響しているのかもしれませんが、勉強する時間の確保という面では学生時代に勉強して取った方がいいかなと思います。

-就職活動では取った資格を活かせる視点で会社を選んだのですか?

 いえ、資格が活かせることが第一ではなかったです。就職はどこにしようか結構悩んでいました。そんなとき当時の学科主任の先生から、資格も活かせて毎年卒業生も入っているということで今の会社を勧めてくれました。

-高校生にはどんな資格をお勧めしますか?

 工事担任者、無線技術士、電気工事士などを持っていると現場で重宝されますし、就職時には資格を持っている(=勉強した)ということで勤勉さをアピールでき、会社に入ってからも頼りになる後輩だなと思ってもらえると思います。
 工事担任者のような国家資格だと、わが社やNTTなど通信設備がある会社を目指す上では有利な資格だと思います。工業高校生なら何らかの資格を取ろうとすると思いますので、どんな資格を取ったとしてもその先の進路が見えてくるのかなと思います。

-高校生の中には無駄な資格は取りたくないと思っている人もいるかもしれませんが、1つの資格だけを取ればいいというわけではなく、いろいろな資格を取っておいた方がよいものでしょうか?

 はい。料金収受システムもIT化が進みネットワークに関する知識が必要ですし、システムの中には通信設備もあり、それが壊れたときにどういう現象で異常が起きているのかなどは工事担任者の知識を持っていれば追うことができますので、複数の資格を持っていた方がよいです。たとえ資格取得ができなくても勉強する過程で専門用語や知識を有することができるので無駄にはならないと思います。

-高校に入ってすぐは、どんな会社に入りたいかなどはまだ決まっておらず、どんな資格を取ればよいか迷ったりすると思うのですが、どういうことを考えてどんな資格を取ればよいでしょうか?

 そうですね。確かに自分のやりたい仕事が決まっていて、それに関連する資格を自主的に取るという生徒は少ないのかなと思います。まずは学校の先生に聞くのが一番よいのではないでしょうか。例えば、無線技術士の上級資格を取ると学校の教員免許の取得が可能になるなど、就職の幅が広がる資格もあります。私も当時は先生の話をもっと聞くべきだったなと思います。
 学生時代は勉強することがメインですが、社会人になってからも勉強は必要で、業務で知っておかないといけないことを学んでいく必要があります。わが社では業務に必要な資格を取得するともらえる奨励金や資格手当の制度がありますが、高校時代でも先生に聞くなりして、自分で向かう先が決まればそれに向けてこういう資格があった方がよいというものを探してみてください。どんな仕事でも専門用語を理解し知識を持っていた方がよく、そのためには1つの資格だけでなく複数の資格の勉強をすることが大切だと思いますので、頑張ってください。

-ありがとうございました。

【DATA】

  • 企業名:高速道路トールテクノロジー 株式会社
  • 本社所在地:東京都港区港南一丁目2番70号
          品川シーズンテラス28階
  • 設立:1966年5月 
  • 事業内容:
    NEXCO3社が管理する高速道路等に設置されている料金収受システムの保守・保全、施工管理、データ処理、システム開発並びに各種関連機器製品の開発販売、技術コンサルティング、ほか
  • URL:https://www.toll.co.jp/