新年に寄せて(2024年)

一般財団法人日本データ通信協会
理事長 祖父江和夫

 

謹んで新春をお祝い申し上げますとともに、令和6年能登半島地震の被害に遭われた皆様に心よりお見舞い申し上げます。旧年中は関係の方々に格別のご厚情を賜り、誠にありがとうございました。おかげさまで日本データ通信協会は、昨年、設立50周年の節目を迎えることができました。長年当協会をご理解ご支援いただきました皆様に深く感謝申し上げます。またこれを機に今までの歩みを記録した記念誌を作成し、当協会のWeb上に公開いたしましたのでご覧下さい。(設立50周年記念誌)

 さて、昨年を振り返ってみますと、2020年に始まった新型コロナ感染症が5月に感染症法上の5類に引き下げられたことから、経済活動が活発になり、以前の生活が徐々に戻ってまいりました。一方で、2022年2月から始まったロシアのウクライナ軍事侵攻は間もなく2年を迎えようとしており、加えて昨年10月からはイスラエルのガザ地区侵攻が始まり、世界中を巻き込んで人命に関わるニュースが毎日のように報道されるようになりました。また、12月にドバイで開催されたCOP28では、待ったなしの地球温暖化の問題が議論され、「化石燃料からの脱却を求める」という合意文書が採択されるとともに、その結果として2050年までにネットゼロ(温室効果ガスの実質排出ゼロ)を達成する方向になりました。課題の多い昨今ですが、人類はこれからどのような未来を作っていくことになるのでしょうか?

 遡ると人類は、今から20万年前にホモ・サピエンスとして誕生しました。ホモ・サピエンスというのは「賢いヒト」という意味です。ところが、現在地球上の生態ピラミッドの頂点にあるヒトの進化は、地球の自然を破壊し、地球上の生物全体の存続を危うくしている面もあります。特に近年の科学技術の進歩は、46億年前の地球の誕生、20万年前の人類の誕生というゆっくりした変化に比べるとあまりにも急速と言わざるを得ません。
 たとえば情報通信の分野で考えても、50年前の電話は単に音声情報を伝達するだけでしたが、その後のデジタル化とITの進歩等により、画像、動画を含むあらゆる情報がデータとして蓄積されるとともに、ネットワークによりそれらが移動し、さらにコンピュータ処理が加わることによって、今までできなかった多種多様なことが人類にもたらされています。スマホやパソコン向けのたくさんのアプリケーションや、SNS等の新しいコミュニケーション手段の提供に加え、膨大に蓄積されたデータを活用した「生成AI」が、昨年あたりから実用的に利用されるようになり、人類はこうした大量のデータをベースにした次の新しい時代に入ろうとしている気がします。

 しかし、こうした「データドリブン社会」を発展させるには、大規模なデータセンタと大容量・低遅延なネットワークが必要であり、増え続ける電力量をいかに抑えるかが喫緊の課題と言われています。そういった意味では、日本は世界で最も進んだ光ネットワーク基盤を既に有し、IOWN技術等、データセンタやネットワークの消費電力を抑える先進技術の開発で世界をリードしています。ネットワークの遅延が無くなることでデータの地方分散化も可能になり、スマホのプロセッサの消費電力も低下できれば、充電は年1回程度で十分になるでしょう。このように新しい技術は良い方向に利用し、人類が進歩していけばよいのですが、悪用すれば地球を破滅に導く可能性も否定できません。将来に向けて、人類が「賢いヒト」であることを祈ります。

 最後に、こうした環境の中で、日本データ通信協会は、今年も当協会役職員一丸となって、情報通信の未来を担う「情報通信分野における人材育成」と情報通信の環境を守る「情報通信セキュリティ対策」を柱に、健全な高度情報ネットワーク社会の実現に資する事業を着実に進めてまいる所存です。皆様の引き続きの当協会へのご指導、ご支援をお願い申し上げますとともに、この一年のご健勝とご多幸を祈念し、新年のご挨拶といたします。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。