Challenge! 愛知県立豊田工業高等学校

新しい工業高校を目指して

愛知県立豊田工業高等学校 教諭
電子工学科主任 鷲野 剛

学校紹介

 愛知県豊田市は我が国の自動車産業を牽引する地域です。昭和40年代の自動車産業の急速な進展の中、本校は地域社会からの期待を受け、昭和46年4月に豊田市南部に「愛知県立豊田工業高等学校」として開校しました。開校当時は全日制「機械科」「自動車科」「電子工学科」の3学科としてスタートし、翌47年には定時制「機械科」が開設されました。その後、昭和57年4月には発展する工業技術に対応すべく「電子機械科」を全国に先駆けて設置し、全国の工業高校のメカトロニクス教育を先導してきました。

 「人あって技術あり」の校訓を掲げて、産業界で活躍できる確かな技術や技能と人間性を兼ね備えた生徒の育成に力を注ぎ、開校以来長年にわたり、自動車関連の大手企業を中心に地元産業界に向けて多くの卒業生を輩出しています。
 近年では、平成26年度に文部科学省の「スーパープロフェッショナルハイスクール」の認定を受け、他機関との連携などを通じ、新しい社会や産業の動向に対応した高度な知識・技能の習得を推進、最前線で活躍できる専門的職業人の育成に取り組みました。

 令和2年度からは自動車科を中心に、「STEM事業」の指定校として、「ものづくり産業」を担う高度な科学技術力をもつ人材を育成し、将来にわたってそれらの技術力を維持・発展させていくことを目的とした教育に取り組んでいます。ここでは「Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)」の4分野に重点を置き、「ものづくり愛知の未来を担う理数工学系人材」を育成する教育の実現を目指しています。

新たな展開が期待されるICT教育

 令和3年度に愛知県全ての工業高校が工科高校として再編されることから、本校も「豊田工科高校」と校名を変更します。電子機械科は「IT工学科」に改編され、電子工学科には「生活コース」が新設される等、IoT技術やAIといった次世代の超情報化社会や男女参画事業の実現に対応できる教育体制を整えるための準備を進めているところです。

 電子工学科では「電気系」「電子系」「情報系」の分野をバランスよく、学習できるカリキュラムを設定しています。1年次の一括募集による共通科目の履修に続き、2年次には基礎的な知識、3年次にはより専門的な知識の習得を目指しています。実習では座学で学んだことを実際の技能として実践していく実習テーマを設定し、工夫を凝らした学習を展開しています。

 課題研究では、身に付けた技術や技能を横断的に活用しながら自ら課題を発見し、問題解決に繋がる様々なテーマに取り組んでいます。また、各学科には大学進学等を視野に入れた「スタディークラス」を併設し、工業科目と数学や英語の科目を選択科目として授業展開しています。

電子工学科の資格指導

 電子工学科では、主に国家資格の取得を目指し、工事担任者(DD種・AI種)をはじめ、電気工事士(第二種・第一種)、国家技能検定(電子機器組立て・シーケンス制御)、ITパスポート、電気工事施工管理技術検定に取り組んでいます。生徒たちは自身の興味や特性に合わせて選択して受験しています。

 工事担任者の指導は教員主導ではなく、生徒自身で問題集や過去問題による学習に取り組ませて必要な知識や計算能力を身に付けさせるのが電子工学科の指導の特徴です。試験日が近づく頃には学習会を開催し、模擬問題を解かせて達成度を計りながら合格に向けた知識を定着させています。

【指導者の手記】

 座学で通信技術、電子情報技術を担当しています。工事担任者DD3種の基礎科目、技術科目に繋がる部分も多く、授業で学び、理解したことを活用していけるような指導を心掛けました。

 技術科目は、通信方式やプロトコル、ネットワークの仕組みが生徒たちにとってイメージし難いため、理解し易い事例を挙げながら時間を掛けて指導しました。法規科目では単なる暗記に終わらないように、何故その法令が必要なのか理由も考えさせながら理解を促しました。

 受験を済ませて合格通知を受けた者からは達成感に満ちた表情が窺えました。努力すれば叶うという自信も得たことから上位種や他の資格取得への意欲も話してくれました。国家資格の指導には教員の理解度や力量も不可欠であり、今後も指導法を工夫して改善していきたいと考えています。

【合格者の手記】

 私は「資格取得」を魅力に感じて工業高校に入学しました。電子工学科では電子情報技術や通信技術を学び、無線通信やネットワーク工事に興味を持ちました。そこでDD3種合格の目標を立てました。

 リックテレコムの問題集で学習しながら過去問題を中心に勉強に励みました。受験前には学習会に参加して模擬問題を解き、徐々に自信を付けていきました。試験当日は落ち着いて臨むことができ、合格することができました。その他にも第二種電気工事士の資格取得も果たし、現在は無線通信関係の企業への就職を希望しています。