「前へ、先へ、外へ」のスピリットで変革の波を越えていく

NTTコミュニケーションズ株式会社
代表取締役社長
庄司 哲也 氏

[聞き手]
一般財団法人日本データ通信協会
専務理事
井手 康彦

世界的な通信の自由化のトレンドに呼応して実施された1985年の電電公社民営化と競争原理の導入後、電気通信の世界では、様々な新サービスや新しい需要が創出される中、公正競争を実現し、市場を活性化する不断の政策的努力が続けられた。その仕上げとして行われた1999年のNTT再編で誕生し、そこで獲得した自由を駆使して、NTTグループと我が国の電気通信業界に常に刺激を与えてきたのがNTTコミュニケーションズである。変化する電気通信市場の象徴的な企業でもある同社の現在を、代表取締役社長の庄司哲也氏に語ってもらった。

変化し続ける収益構造

   NTT再編成が行われたのが1999年です。当時の再編成の大きな目的は公正競争条件を整えるということでした。その結果、地域電気通信サービスと県間通信サービス(長距離通信サービス)とを分けて、県間通信サービスと高度なサービスをNTTコミュニケーションズに渡しました。
しかし市場が変化し、県間で事業主体を分ける意味がなくなってしまった。収入もおそらくダイヤル通話料が激減していると思いますが、通話料が落ちていくと、そこを他のサービスで埋め合わせていかなければならない。NTTコミュニケーションズは悩みながら事業を展開されてきたと思うのですが、今日はまずそのあたりの大きな流れから教えてください。

庄司
おっしゃるとおり、NTTは1999年に持株連結経営に移行し、その分割再編の流れの中でNTTコミュニケーションズは設立されました。純粋持株会社の下で我々は長距離通信と高度な、インターネットを含むグローバル通信ができる企業と位置付けられ、国際競争にも乗り出しました。強みとしていた音声やデータネットワーク系サービス(これらは今ではレガシー系サービスと呼んでいます)が、当時は収入の7割以上を占めていました。しかし、その後のインターネットを含めた技術革新はすさまじく、音声については半減してしまいました。収入構造で見ると、再編当時、収入全体の56%を占めていたのが現在は22%にまで減っていますので、この17年間でかなり収益構造が変わったということがご理解いただけると思います。

ただし、音声が減った一方でデータ系のサービスが増えており、収入全体の5割強がネットワーク系であるという状況は変わっていません。音声系サービスが減った分を補ったのが、ソリューションサービス、近年のクラウドコンピューティング技術を活用したクラウド基盤系サービス、アプリケーション&コンテンツです。これらが収入の4割以上を占めるようになっています。

図表1:NTTコミュニケーションズの収益構造の変化
出所:NTTコミュニケーションズ

戦略的なパートナーづくりでグローバルな地保を固める

庄司
この構造変革の間に我々が注力してきたことが二つあって、一つが海外事業への進出、二つ目が上位レイヤーサービスの収益基盤を確固たるものにしていこうという努力です。
この間、クラウドコンピューティングとインターネット通信のすさまじい発展があり、我々と同じように上位レイヤーでサービスを提供するオーバー・ザ・トップ(OTT)事業者が出てきました。OTT事業者は我々の基盤やサービスを使ってサービスを行っているので、我々のネットワーク基盤は従前にもましてキャパシティを拡充していかなければならないということがありました。

一方で、上位レイヤーに対してはチャレンジャーとして出ていきましたので、自分たちだけではできない領域があったり、足りないリソースもあったりし、買収やパートナーづくりをしてきました。横軸として、EMEA(欧州・中東・アフリカ諸国)、北米、アジア・太平洋という3つの地政学的な市場を考え、市場ごとに最適なパートナーを選ぶ。さらに縦軸にはインフラレイヤーから上位レイヤーまでを含めたサービスレイヤーを分類し、それぞれにふさわしい事業者を仲間にしていく戦略を立てたわけです。

インフラレイヤーでは、現在190か国以上でサービスを提供できる形になっていますが、ネットワークサービスプロバイダーのヴァーテラ(Virtela)をM&Aしたことによって、カバーできる領域が大きく広がりました。データセンタービジネスには、不動産事業としての特性などもありますので、それぞれの地域で得意な事業者と組むことによって我々のフットプリントを広げてきました。
ネットワークとデータセンターを持つことによって、それらをつなぐサービスもユニークな形で出せる事業形態になっていると思っています。クラウドアプリケーションのパートナーにアルカディン(Arkadin)という欧州の会社があります。今や北米にも進出していますが、ユニファイドコミュニケーションのサービスを提供している会社として我々がグローバルで展開するにあたって足らざるものをすべて持っている会社だと思っています。

図表2:海外のグループ会社
出所:NTTコミュニケーションズ

クラウドもそうですけれど、最近は技術が複雑化して大企業ですら自分自身でICTをマネジメントするのが難しくなってきており、その一部ないし全部を外部の専門企業にアウトソースするという傾向が出てきています。我々はそれを「マネージドITサービス」と呼んで、その受け皿となる部隊を世界各地で仲間に引き入れています。
そうした海外事業のパートナーが活躍しているおかげで、いまや海外での収益が27%まで着ています。30%をめざして2010年からずっとやってきましたが、NTTセキュリティの機能を持株会社に移管した部分の売上げがいったんへこんでいることを考慮すると、トレンドとしては順調に進んでいると考えています。

   今日の日経新聞にも米国でのセキュア24(Secure-24)買収の話が掲載されていますね。これは100%子会社になるのでしょうか?(編集部注:インタビューは2017年11月10日に行われた)

庄司
NTTアメリカが出資する形でのM&Aになりますので、NTTコミュニケーションズから見ると孫会社です。2016年にアトラス(Atlas)というスペインに本拠地を置く、マネージドITサービスに強い会社を直接子会社化したのですが、彼らが北米に展開しようとしたときにリソースが足らなかったので、いくつかのマネージドサービスを展開する会社をあたりました。その結果、このセキュア24が我々と最もケミストリーが期待できる会社だと判断しました。ここは北米におけるグループ企業であるNTT DATA Servicesやディメンションデータ(Dimension Data)とのシナジーも生み出せる会社ではないかと考えています。

   地域によって競争相手もパートナーも多様ですね。

庄司
我々が大事にしているのはマインドセットの部分で、パートナーとして価値観が同じか、ビジョンが同じ方向を向いているかを重視しています。我々は、サービスを展開する際に、インフラサービスの宿命としてロングレンジで物事を考えなければなりません。一度提供したサービスについてはしっかりと提供し続けなければならないというDNAを持っています。そういうところで相通じるものがある相手と組みたいと考えています。

スローガンは「変革し、超えていく」

   社員のマインドセットを電話の時代のサービスマインドから変えていかなければならないと思うのですが、それはどのような方法でやっていこうとしているのですか?

庄司
トップからのメッセージとして2016年に新しいコーポレートスローガンをつくりました。それが「Transform. Transcend」です。

「Transform」はまさに「変わっていく」ということですが、技術が変化し市場が変わっていく中、自らが変わっていかなければならない。我々自身が「Transform」していき、お客様の「Transform」に貢献するという意味合いを込めてこうした言葉を選びました。

「Transcend」は、自分たちが自分たちの現在を「越えていこう」という意味です。つまり、電話などのレガシーサービスに依存する、いわゆるテレコムキャリアとしてのビジネスモデルから、ICTプロバイダーとしてのサービス競争に勝っていかなければならないという意思をそこに込めました。同時に市場に参入する際には、提供するサービスがお客様の期待を「超える」ものである必要がある、競争相手のレベルを「超える」という意味でも「Transcend」という言葉を選んでいます。

これがスローガンですが、それが一人一人の従業員に理解され、自分の行動を変え、習得するべき技術を変えていく、マインドセットを変えていくというところまで行くのには時間もかかります。

   資質的に、これまで電信電話を中心にやってきた人が急には変われませんよね(笑)

庄司
音声収入もまだ2割強ありますし、データネットワークサービスにおけるレガシー系の業務がありますので、保全、高度化を引き続きやっていかなければなりません。幸い、そうした技術を有する人たちが活躍する場所はあります。同時に、将来、仮にすべての電話サービスがIP化されることになるとすると、ネットワークサービス全体をどうするかについて、我々自身が変革を必要としているということがあり、実際に保全やレガシー技術に携わっている人たち自身が、変革の必要性を強く実感していると思っています。

   ネットワークマイグレーションが現実のものとなると、レガシー領域の収益が期待できなくなると考えられます。それまでに変わっていないといけないということですね。

庄司
そうです。ネットワークの利用形態もソフトウェア・デファインドになっていく傾向にあります。つまりお客様からすると、使いたいだけ使い、使った分だけ料金を支払うという提供形態です。そうなっていくとすると、我々自身がその構造変化に耐えられなければなりません。通信そのものがコモディティ化するかもしれないので、そういったビジネスモデルに変わったときでも、我々の収益源、あるいは社員の職場を確保するために、上位レイヤーを含むサービスとそれをマネージドするサービスが絶対に必要だと考えています。そうした観点からスキル転換を進め、必要なパートナーを仲間に入れているというのが現状です。

インフラの充実はビジネスの基盤

   多くの海底ケーブルをインフラとして保有していると思うのですが、今後はどのようにして投資を回収していくのでしょうか?

庄司
すべての投資を我々だけで賄うことはできません。必要な需要量を予測し、それに必要な供給量をこのケーブルループで持つという算段をして、一種のコンソーシアムを組み、この帯域ではこういう価格で提供できますと大手ユーザとネゴを行います。いったん敷設するとケーブルは20年、30年と使うものですから、償却も含めて投資が出来るのかを見極める必要があります。運ぶ量見合いで収入が増えているわけではないので、回収は難しいところもあるのですが、オーバー・ザ・トップ(OTT)と言われる、このインフラを使って仕事をしている大手事業者も、その重要性は認識していますので、インフラを維持し拡充するための応分の負担をしてもらえるように努力をしています。

国内のインターネット通信でも同じような問題は起きていて、動画等で帯域を圧迫するような需要が偏って発生していくとすれば、受益者負担的な発想で従量制の考え方を入れるなど様々な工夫をしないと、健全なビジネスとしての成長・拡大が阻害されてしまうのではないかという懸念は持っています。

   貴社のデータセンターのフロア面積は、日本では突出して大きいと聞いたのですが。

庄司
日本市場においてはおそらくトップの供給能力があるのではないかと思っています。
当社のデータセンター「Nexcenter」は日本のみならず全世界で提供していますが、日本よりも海外の方がすでに大きくなっています。まだまだデータセンター需要は伸びていくと思っており、2017年もドイツのミュンヘン、ライン/ルール地方、アメリカのダラスに作りましたし、2018年にはヴァージニア州アシュバーンにヴァージニア州としては3棟目の大きなデータセンターが稼働します。また、春にはインドのムンバイに新たなセンターを開設し、インドでは9つ目ということになります。それぞれの市場で、我々のデータセンターへの需要に基づいて増強しています。

お客様には国際的な市場展開をされている会社様が多いので、インドでも、北米でも、欧州でも、我々のデータセンターを使っていただくことができ、あるいはデータセンター間を我々のネットワークで結ぶサービスをお使いいただくことによって、あたかも自社のデータセンター、自社のネットワークの中でセキュアなデータなやりとりができると評価いただいています。

   インフラの重要性は大きいわけですね。

庄司
お客様は実際にデータがどこで保管しているのか、どういうマネジメントができるのかをとても大事にします。しかし、それを実現し続けるのは必ずしも容易ではなく、強固なインフラを構築し、高品質なサービスを提供していこうとしても、例えば東日本大震災のような自然災害が起きた時に耐え得るかという問題があります。先の震災の際には、太平洋の4ルートのうちに3ルートがダメージを受けて切れてしまいました。唯一南回りだけがつながっていた。それを補修する際に、当時保有していた3隻のケーブル敷設船がフル稼働しても十分に追いつかないということがあり、「きずな」という新しい船を作りました。

これまで我々のケーブル敷設船には「SUBARU」、「VEGA」といった星の名前を付けていたのですが、この新しい敷設船のときには社員から新しい船名を募集しました。社員が東日本大震災の後にさまざまな苦労をしていたのも知っていましたので、最終的に「きずな」という名前がいいだろうということになりました。

図表3:最新のケーブル敷設船「きずな」
出所:NTTコミュニケーションズ

船の形が斬新なのは一目瞭然で、イージス艦のようにハウジングが船首に偏っています。甲板部を広くとって、クレーンが2台設置されているほか、移動電源車やNTTドコモの無線基地局などを、陸路が途絶されているときにも被災地に持っていける構造になっています。

この春にお披露目をしたときには、NTTコム、NTT東西、NTTドコモの社旗がたなびいているのを見て、かつての1社体制を知るものとしては、ある意味ノスタルジックな感慨も覚えましたけれど(笑)、それはともかくとして、一朝事あるときは大事なインフラを守るために一致団結をするということが示せてよかったなぁと感じています。

「SDx+M」で柔軟なサービスをお客様に提供する

   コラボレーションを様々な層で進めると、自らは回線提供とデータセンターの賃貸業だけになってしまう恐れはありませんか?

庄司
我々は出自がテレコムキャリアなので、インフラストラクチャサービスは一定の品質のものを提供し続けるというミッションを、ビジネスのコアに据え続けていきたいとは思っているのですが、それだけでは成長性、収益性の面で課題があるということで、「先進的な技術を用いた柔軟・迅速なサービスの開発」に力を入れています。これを「SDx+M」と呼んでおり、ソフトウェア・デファインド技術を用いて、我々のネットワークを使うサービスの展開を強化していこうということです。

そこにマネージドサービスを加えて、我々をフルで使っていただくことも、部分的にアウトソースしていただくこともできます。さらにAIやIoTを使ったITマネジメントを展開していただく。とくにIoT等は、セキュリティの問題等がかなり重要になってきますので、セキュアな環境の中でIoTを使っていただくためのインフラストラクチャを我々がしっかりと提供していくという連携をしていきたい。

これらを実現していくためには、いろいろなパートナリングが必要になってきます。IoTなどはまさに特徴的な例ですが、上位レイヤーになるほど、「工場でサービスを提供するにあたっては現場を知っている企業と組まないと入っていけない」といったことが起こる。従来は、NTTコムブランドの下、我々がサービスを一気通貫に提供しますというビジネスであったかもしれないのですが、現在の考え方は、NTT持株会社も言っている「B to B to C」モデルで考えると、我々が最初のBになることもあるかもしれないし、2番目のBになるかもしれない。エンドユーザにとって最適なパッケージを提供していくためにはパートナリングが重要です。

我々は法人のお客様が多いわけですが、ケースに応じて必要とされる組み合わせでお客様の「Data Transformation」のお手伝いをしていくことが、我々のビジネスモデルとして今後追求すべき形だと思っています。

このSDx+Mソリューションについてペーパーを一つ用意しました(図表4)。LAN、WANをソフトウェア・デファインドで使いやすく制御していく。当社のデータセンターも当然使っていただきたいのですけれども、他社のクラウドを使っていただいても、もちろん構いません。それを我々は「ハイブリッド・クラウド」あるいは「マルチ・クラウドサービス」と称しています。お客様の使いたいクラウド環境を、我々のソフトウェア・デファインド・プラットフォーム上で動かしていただく。そして、データについては我々のデータセンターである「Nexcenter」に保管していただく。そうした形でビジネスを展開していきたいと考えています。

図表4:「SDx+Mソリューション」の全体像
出所:NTTコミュニケーションズ

それを実現するための新たなプラットフォームとしてクラウド・マネジメントプラットフォームを用意しており、それをマネージドサービスとして仕上げるためにグローバルマネジメントワンというマネージドサービスをご用意しています。さらにそれらをトータルで守るという意味で、NTTセキュリティとタイアップして「ワイドアングル」というセキュリティサービスを提供できるラインナップを作っています。

NTTグループ全体でサイバーセキュリティに対応する

   セキュリティはこれからますます重要なテーマになってきますね。

庄司
通信におけるセキュリティを如何に守っていくかが我々事業者にとって大きな課題になっています。そこで、いったんNTTコムセキュリティという会社を作り、グローバルなセキュリティな展開の体制を整えました。その後、サイバーセキュリティをNTTグループ全体で守るためにはどうしたらよいかという議論を持株会社とともに行った結果、NTTグループとしてセキュリティ技術を開発していくことが重要だということで、2016年にNTTセキュリティという会社を立ち上げました。そこに技術開発の機能とリソースを集約し、我々はそこで生み出されるセキュリティエンジン等を使ったサービスを市場に投入していくという役割分担に変えました。

   日本データ通信協会ではIoTのセキュリティを検討する「テレコムアイザック推進会議」という活動を推進していましたが、この取組みが発展して2016年6月に一般社団法人ICT-ISACが我々から独立しました。当協会としては、ちょっと寂しい思いをしていますが、そのICT-ISACもNTTセキュリティと協力し合っていくことになるでしょう。

庄司
サイバー攻撃に対する対応は国家レベルで対応しなければならないものだと思っています。一通信事業者で守り切れるものではありません。通信インフラ全体を守るには通信事業者全体が連携してやらなければいけないし、その統制には国家的な判断が必要なこともあるでしょうから、オーガナイズされた運用形態は必要です。そういう意味合いも含めNTTセキュリティが組織されたということでもあると思っています。

庄司社長と当協会専務理事・井手とは学生時代からの旧知の間柄。インタビューは和気あいあいとした雰囲気の中で行われた。

「前へ、先へ、外へ」

   いろいろと伺ってきましたが、これからどのように事業を進めていくかについて一言お願いします。

庄司
ビジネスの展開で、マインドセットを含めて社員がやってくれるかということを考えた時に、「前へ、先へ、外へ」を合言葉にしようと言っています。

「前へ」は、昨日より今日、今日より明日と、我々の技術が進展しているのかということを確かめながら進もうという意味です。「先へ」というのはOTTやITのジャイアントがいろいろなサービスを提供するなかで、彼らに先んずるようなサービスを提供していかないと競争には勝てないし、ITインフラを生かすことができないのではないかと。また日本の中だけに目を向けていてはいけないので、「外へ」ということも言っています。この「前へ、先へ、外へ」を合言葉に「Data Transformation」を考えていこうじゃないかと常に語っています。

   通信の世界は20年でまったく変わってしまいましたからね。明日がどうなるかは分かりませんね。

庄司
その通りです。ただ、我々が幸せだったのは、非連続のように見えて、データライゼーションや光化などが、結構連続して起きている点です。金融界のように一挙に破壊的な変化があれば大変ですが、たまたま我々はその変化の波の先端にいて先を見てきたので、それはよかったかなと思いますね。

   競争がソフトウェア・デファインドの世界に入っていることも連続した流れにあると。

庄司
所有から利用へという大きな流れがあります。持たなくていいという世界が何故実現できるのかというと、ソフトウェアが発展してきたからです。自動車にしても買わずにレンタルでいいや、シェアドでいいやという風になっているのは、それを可能にするシステムやソフトウェアがあるからです。いずれハードウェアは存在していても、ユーザからすればそれを意識せずに利用できる世界が来るだろうと考えています。それを支えるのがネットワークであったり、ソフトウェアであったりするわけです。

   それにしても、郵便の世界が、前島密の頃と比べても担っていることはほとんど変わっていないことと比べると、非常に大きな変化ですね。

庄司
鉄道会社の方からも同じような話をお聞きします。鉄道という事業は、産業革命以来の陸路を走るというビジネスモデルが変わっていないと。それに比べると、我々は大きな変化を体験し続けていると言ってよいと思います。

F1のマクラーレン・ホンダチームは、NTTコミュニケーションズのSDxソリューションを用いてレース情報の利用を高度化している先進ユーザの一つ。社長応接室に飾られた同チームのレーシングスーツを前に。

【プロフィール】
庄司 哲也(しょうじ てつや)氏
1977年東京大学経済学部卒、日本電信電話公社(現NTT)入社。
2006年NTT西日本取締役、2009年NTT取締役などを経て2012年6月NTTコミュニケーションズ副社長。2015年6月より同社代表取締役社長。