【工事担任者の仕事Vol.20】電力インフラの安定稼働を支える通信技術

北電テクノサービス株式会社
金沢支店 通信担当
山下 怜央(やました れお) さん

 北陸電力のグループ会社である北電テクノサービスは、発電所、送電線、変電所など電力供給に必要な設備の保守点検、工事を主な業務としています。
 「電力関連の会社なのに、なぜ工事担任者資格を持っているの?」と思ってしまいますが、電力設備を扱う会社でも工事担任者資格が必要です。
 「生活インフラである電気の安定供給を陰で支えているのが通信技術です。」とおっしゃる山下さんに詳細をお伺いしました。

~部活動の中で資格取得~

-ご出身はどちらですか?

 石川県七尾市です。小、中学校時代は隣町の中能登町で過ごし、高校は七尾市にある県立高校の機械システム科に進学しました。機械システム科では1年生まで電気と機械の両方を勉強し、2年生で機械コースと電気コースに分かれるのですが、私は電気コースに進みました。

-電気系の高校を選んだ理由は何ですか?

 あまり大きな声では言えないですが、中学生の頃は将来のイメージがついていなくて、仲のいい友達がいくからという理由でした。
 ただ、就職には強く卒業生の9割が就職する高校と聞いていたので、将来の心配はあまりしていなかったです。私が就職活動をした際も地元企業からの求人が多数あり、クラスの仲間は地元の工業団地や七尾市内の会社などに就職しました。

-高校時代は何をしていましたか?

 工業研究部という、いろいろな資格を取るために勉強をする部に入っていました。
 電気コースでは、全員が第二種電気工事士を受験し、希望者は第一種電気工事士の他、消防設備士や危険物取扱者などを取得する人もいました。私は第二種電気工事士を取得し、その他には、コンピュータサービス技能評価試験の「3級ワープロ技士」や「3級表計算技士」などを取得しました。

~インフラを支える通信部門にあこがれて~

-北電テクノサービスを就職先に選んだ理由は何ですか?

 一番の理由は地元で働けて、地元に貢献できる会社をと考えたからです。
 電力系の会社であり、電気をお客さまへ送り届けるために、さまざまな部門が関わっています。例えば、配電部門は変電所から街へ電気を送る電柱や配電線などを取り扱いますし、発電所や変電所間で電気を送る鉄塔や送電線などは送電部門が取り扱います。他には変電所や発電所の設備を取り扱う部門もあります。このような暮らしを支えるインフラ設備を取り扱う中で、通信部門はこれらのインフラ設備をさらに裏方として支える部門であり、かっこいいなと思い選びました。

-通信部門の仕事をもう少し詳しく教えてください。

 北電テクノサービスは電力設備の保守点検、工事を行っている会社で、通信部門は、主に発電所や変電所の中の通信設備や電柱などに取り付けられている通信線の保守点検を行います。具体的には光搬送装置(光ファイバーを伝送路として使用するための装置)や各事業所に設置されている電話設備などです。
 これらの通信設備や通信線は電力の安定供給のために必要ないろいろな通信に用いられており、電力会社が自前の設備として保有することで、何か障害や不具合があったとき、特に地震などの非常災害が発生したときにも早急な復旧対応ができるようにしています。

-それが通信担当は裏方として支えている部門とおっしゃる所以ですね。ほかにも通信設備はあるのですか。

 無線設備もあります。山上の無線中継所にもアンテナや反射板などの無線設備があります。無線設備の用途は大きく2つあります。1つはマイクロ無線で、発電所や変電所の監視制御用信号などを送っている回線です。もう1つはVHF無線で、配電部門や送電部門の人が携帯電話のつながらない山奥などで作業をする際に、連絡用のトランシーバーとして使用します。
 その他に、衛星無線やWi-Fiを用いた無線設備などもあります。

-ここ(北金沢変電所)にも鉄塔がありますね。

 はい。これはマイクロ無線で、七尾方面や小松方面に設置された無線機との通信に使っています。震災に強い重要な設備です。

北金沢変電所のマイクロ無線アンテナ
-これらの設備の保守点検を行うのですね。

 金沢支店の通信担当には点検班や機器保守班などの4つの班があり、私は入社して1年目は点検班に配属されました。点検班は、石川県内にある発電所や変電所などに行って、通信設備の点検を行います。電話設備の通話試験や、通信設備に電源を供給している蓄電池や直流電源装置の測定などを行います。
 以前は点検対象設備がもっと多かったのですが、遠隔監視システムの活用により大幅に減りました。それでも石川県内では点検箇所が100箇所以上あり、1日に点検できる数も限られていますので、計画を立てて県内の全箇所を点検します。

-点検して異常があれば、その場で修理をするのですか?

 簡易な異常ならその場で修理しますが、直らないものは報告書に異常内容を記載します。その後の修理対応は機器保守班が行います。機器保守班では異常の原因調査、仮対応、本復旧などを行います。設備の経年劣化による異常がほとんどなので、設備交換のために専門業者に請負発注をかけることが多いです。そのための書類作成、発注、工事の日程調整、現地同行などが機器保守班の主な業務です。
 私は2年目から機器保守班に配属され今に至っています。

-点検班と機器保守班の業務の違いを教えてください。

 仕事の幅の広さが違います。点検班は点検対象設備が少なくなる一方、機器保守班は遠隔監視している設備も保守の範囲に入りますし、その他にもいろいろな設備があり、多くの知識が必要なので大変です。

~資格取得で業務に必要な知識を習得~

-工事担任者の資格をお持ちですね。

 会社から推奨された資格ということもありますが、業務では知識がないとわからない部分も多く、業務を進めるための知識習得という観点から令和6年11月に第一級アナログ通信を受験しました。仕事ではデジタル回線も扱うので、総合通信の取得が推奨されていますが、まずはアナログを取得しようと考え受験しました。
 今年の11月には第一級デジタル通信を受験します。第一級デジタル通信は出題範囲が広いせいか、過去に出題例がない問題が出てくるので、新しい知識が必要だなと感じています。

-どのような勉強をされました?

 参考書を買いましたが、一番は過去問題を解くのがよいと思い、動画サイトで過去問題を解いている動画を見つけて勉強しました。日本データ通信協会のホームページでは過去4回分の問題が掲載されていますが、過去5年分くらい勉強しないと厳しいかなと思い、動画サイトを探しました。勉強を始めたのは、受験の数か月前くらいからです。

-仕事しながらいつ勉強をしているのですか?

 家に帰ってからや仕事の休憩時間などに勉強しています。動画は1本が10分から20分程度で、平日に1~2本、休日には5本程度を見ます。
 ただ動画を眺めるのではなく、動画の中で過去問題が出てきたら一旦停止して、まず自分で解いてみます。正解すれば解説は細かく見ずに次の問題に進みます。繰り返して知識が増えてきたら、時間が短くなってきます。こうやって過去問題を解いていき、どうしてもわからなかった問題は、購入した参考書で勉強します。

-会社から受験費用は出るのですか?

 受験費用は出ないのですが、合格すると報奨金が出ます。具体的な金額は差し控えますが、一発合格すればもとは十分に取れる金額です(笑)

-第二種電気工事士、第一級アナログ通信を持っており、直近は第一級デジタル通信を目指していますが、今後取ろうとする資格はありますか。

 通信担当には電柱に取り付けられている通信線を取り扱う線路保守班もあります。線路保守班では、発電所や変電所、事業所間を結ぶ通信線や、スマートメーターで計測した電力使用量などを送受信するための電柱に設置したアンテナなどの保守を行います。将来は線路保守班にも配属されると思うので、通信事業者の設備全般を扱うために必要なより幅広い知識を習得するという観点から、電気通信主任技術者資格の取得も考えています。

~幅広い知識習得がやりがいの一つ~

-今後も通信担当の業務をやっていきたいとのことですが、どのような技術者を目指していますか。

 点検班、機器保守班でいろいろな装置に触れる機会が増えましたが、それぞれに専門的な知識が必要で、勉強してもどんどん新しい知識が必要となってきます。一つの分野で深くというよりも、私としては幅広く知識を広げて、いろいろな装置を扱える技術者になれればいいなと思っています。

社内通信部門の保守技能競技会で見事優勝した山下さん
-会社に入って、学生時代に思っていたこととの違いはありますか?

 入社する前は、電力設備の点検保守を行っているという漠然としたイメージしかなかったのですが、入社すると通信、配電など各部門に分かれて、専門にやっていることに驚きがありました。1人が全てを扱うことは範囲が広くてできないことは、よく考えればわかることですが、そこが入社する前と後で違ったところです。
 一方、通信部門は電力とは違う技術で、学生時代に思っていた以上の幅広い知識を学べて自分の成長につながっていることが一番のやりがいとなっています。

-高校生に向けて、資格取得に関するメッセージをお願いします。

 私が高校時代に戻ることはできませんが、まずは全力で高校生活を楽しんでください。
 資格に関しては、無駄になることは絶対になく、私が取得した3級ワープロ技士や3級表計算技士は取得しやすい資格ではありますが、保守点検業務での書類まとめや、報告書作成、請負発注のために必要な書類作成などで役に立っています。
 どんな資格も必要とされる作業、業務があるから資格として存在しているのであって、決して無駄にはならないので、資格取得には頑張ってほしいなと思います。
 資格勉強をする際は、過去5年分の問題は勉強した方がいいです。今、第一級デジタル通信の勉強をしていますが、3年分だけだとちょっと心配です。工事担任者だけでなく他の資格でも同じかなと思っています。

-ありがとうございました。

【DATA】

  • 企業名:北電テクノサービス株式会社
  • 所在地:富山県富山市牛島町13番15号 百川ビル6階
  • 設立:1982年4月
  • 事業内容:
    発電、送電、変電、配電、通信、給電設備および消防設備の保守ならびに工事
    前項各設備の調査、設計および施工管理
    自家用電気工作物設置者等の委託を受けて行う電気工作物の工事、維持および運用に関する保安の監督に係る業務 など
  • URL:https://hts.co.jp/