朝の補習でプラスワンの資格を
千葉県立清水高等学校
電気科教諭 氏原 芳朗

学校紹介及び資格指導
本校は千葉県北西部に位置し、農業科である食品科学科と、工業科である機械科、電気科、環境化学科の4学科からなり、平成30年度に100周年を迎えた。平成16年度より工業系3学科の「くくり募集」を実施している。1年次は電気科ではなく「工業科」として機械系や化学系の実習も行う。資格指導としては、全国工業高等学校長協会の計算技術検定3級と情報技術検定3級に全員で取り組ませている。2年次に電気科に配属になると、全員で第二種電気工事士の上期試験に取り組む。放課後に補習を実施し、学科試験、技能試験の突破を目指す。夏休みには希望者に第一種電気工事士の補習を実施する。2学期には第一種電気工事士の補習と並行して、工事担任者第二級デジタル通信の補習を開始する。2学期末を目途にCBTによる受験を奨励している。3学期には第二級陸上特殊無線技士の補習も実施している。人数は少ないが、希望者がいれば、2級電気工事施工管理技士、ITパスポート、工事担任者第一級デジタル通信などの補習を実施することもある。

工事担任者試験への取り組み
本校は「電気科」であって「電子科」や「情報技術科」ではないので、強電関係の学習が主体となる。1学期は第二種電気工事士の指導で生徒も職員も手一杯である。2学期は体育祭や文化祭、総合技術コンクールなど様々な行事がある中、下期の第一種電気工事士の補習も放課後に実施される。また、部活動に加入している生徒も50%程度おり、経済的な理由からアルバイトを行っている生徒も多い。そんな多忙な高校生にさらに工事担任者の学習をさせるのは至難の業である。放課後、職員は会議や部活指導も入ってくる。そこで着目したのが朝のHR前の補習である。本校は8時25分から職員の朝会が始まるので、補習の開始は7時40分とした。生徒も普段より1時間近く早く登校しなければならず、負担は大きい。それでも、2ヶ月程度頑張れば、一生モノの国家資格が手に入るとなれば頑張れる。9月初旬にテキストの申し込みを募ると電気科2年生の半分以上が申し込む年もある。しかしいざ朝の補習を開始すると、テキストを購入した者の7割程しか集まらない。10月の中間試験を過ぎるとこれが6~8人くらいになっている。11月初旬の文化祭を終える頃には3、4人になっている年もあるが、そこまで頑張った生徒は11月末や12月に受験し、合格を勝ち取っている。
この方法で10年近く指導しているが、メリット・デメリットも見えてきた。メリットとしては、他の行事やイレギュラーな対応があっても朝の時間帯であれば、ほぼ実施することができることである。体育祭の当日も実施でき、文化祭の前日まで実施できる。これが放課後であれば、行事の準備があり実施できない。学年会議、分掌会議、業者との打ち合わせなどの他に、突発的な生徒指導なども発生する。放課後の補習では週に3回できるかどうかという状況だ。複数の職員で対応すればよいではないかと思うかもしれないが、前述したように、他の資格指導や、11月末に実施される総合技術コンクールという、県下の工業系高校生による競技会の指導もある。特に電気科は「電気工事部門」「電子回路工作部門」「ロボットコンテスト部門」「ライントレースカー部門」と4部門の担当が必要で、とても他の資格まで手が回らない。職員側の問題もあるが、そのコンクールに出場する生徒が資格の補習を受けるとなるとバッティングしてしまう。以上のような理由から朝補習で対応している現状である。
デメリットとしては、朝起きられない生徒が多いということに尽きる。ただでさえ遅刻して登校する生徒も少なくない状況で1時間早く登校するのが厳しい生徒も多い。また本校の立地上、茨城県や埼玉県から通学している生徒もいる。補習に間に合うためにはバスの関係で、7時20分くらいに着いてしまう生徒もいる。毎年2か月程度の補習に皆勤するのは当初の半分以下である。この数字を上げていくことが今後の課題である。
数年に一度は、上位資格である、第一級デジタル通信や総合通信にチャレンジする生徒もおり、5月の試験に向けて4月から朝補習を実施する年もある。工事担任者の資格を活かして、NTTの関連会社に就職する生徒も毎年のように出ている。

生徒の感想
- 工事担任者試験にチャレンジして、良かったと思います。国家資格として取れるのはもちろんですが、何よりも自分の実力を知ることができたからです。初めは、朝に行う補習に参加するのも辛く、眠い中で解いた問題の正答率は低かったです。それでも、慣れてくると早朝でも意識がはっきりとするようになっていきました。この経験を振り返ると、継続することは大切なことだと感じました。この資格を活かして、就職活動に臨みたいと思います。
- 工事担任者試験を通して、電気通信技術や端末設備についての理解を深めることができました。基礎科目では、論理回路やブール代数の問題があり、パズルを完成させていくような感覚で解けておもしろかったです。技術・理論科目ではGE-PONシステムや無線LANといったインターネットの構成、様々な不正アクセスの種類とその対策について学んだことが印象に残っています。法規科目は、他の科目に比べて覚えにくい部分もありましたが、朝の補習を受けたり、何度も過去問を解いたりしているうちに記憶していき、試験本番でもあまり迷わずに解き進めることができました。工事担任者試験やそれに向けた勉強を通じて電気通信技術の知識や興味がより深まったと思います。
今後期待すること
課題となったのがCBT試験の制度である。いつ受験しても良いというのは、機会が多く与えられて、一見取り組み易いように見える。しかし、集団で取り組ませると、必ずしも効果的とは言えない。学校で取り組ませるならば「一緒に頑張ろう」「あいつには負けられない」という雰囲気を作り上げることが大切である。1人では挫折してしまうけれど、仲間と共に目標に向かうとき、人は強い力を発揮する。運動部の例を考えて欲しい。大会の日が決まっているから、みんなでそれに向かって辛い練習にも耐えて、乗り越えて強くなれる。これがもし「俺は今週大会」「俺は来月」などということがあったらどうだろうか。集団としてモチベーションは上がらない。学校での資格指導も同じことが言える。また、「いつでも受験できる」ということは、いくらでも先延ばしができてしまうことにも繋がる。従来の資格指導は「いつまでに」「どのレベルまで」という目標がはっきりしていたので取り組み易かった。それが「いつまでに」が曖昧になってしまえば、士気が下がるのは当然である。
また、受験料が他の国家資格と比べて相対的に高いことも生徒が受験をためらう要因になっている。電気工事士は2回の試験があり、実技試験では材料代も掛かるので高額になるのは仕方がない。しかし、筆記試験だけなのに、ITパスポート試験や危険物取扱者試験よりも高額なのは残念なことである。今後の改善を期待したい。
