新年に寄せて(2026年)

一般財団法人日本データ通信協会
理事長 

 新年あけましておめでとうございます。
 皆さまにおかれましては、健やかに新年を迎えられたこととお慶び申し上げます。旧年中は、弊協会の活動にご理解とご支援を賜り、誠にありがとうございました。

 2025年は、生成AI(文章や画像を自動で作るAI)の急速な普及が大きな話題となりました。アメリカでは「AIリストラ」という言葉が示すように、エンジニアや事務部門での人員削減が進む一方、日本では企業への導入が始まったものの、まだ十分に活用できていない状況です。また、AIの利用が広がる中で、情報の信頼性や倫理的な課題が浮き彫りになり、社会的な議論が活発化しました。さらに、サイバー攻撃の増加により、個人情報保護やデータガバナンス(データの管理ルールづくり)の重要性が再認識されました。

 本年は、個人レベルでの生成AI活用がさらに進むと見込まれます。企業だけでなく、教育・医療・行政サービスなど、生活のあらゆる場面でAIが入り込み、「パーソナルアシスタント」として身近な存在になるでしょう。例えば、文章作成や画像生成だけでなく、スケジュール管理や買い物支援、高齢者の生活サポートなど、音声・画像・動画を自在に扱う「マルチモーダルAI」の活用が進みます。AIを使いこなすことは、企業や個人にとって必要不可欠なスキルとなる一方、偽・誤情報やプライバシー侵害といった課題も深刻化すると考えられます。生成AIの安全利用に向けた利用者教育とリスク管理の徹底などにより、AIの結果を丸ごと信じるのではなく、AIの限界を理解し、節度ある利用がますます求められます。

 フィッシングメールによる詐欺被害が深刻化する中、最近は送信ドメイン認証技術(DMARC:なりすましメールを防ぐ仕組み)の導入義務化、不審メールの自動隔離機能や即時警告体制の整備が通信事業者や企業・自治体に求められるようになってきました。こうした施策は、利用者の同意を得ることで「通信の秘密」に抵触せず、詐欺被害防止と通信の安全性向上を両立するものです。個人としても、リンクを安易にクリックしない、添付ファイルを不用意に開かないといった基本的な対策がますます重要になります。

 こうした変化の中で、幣協会の使命は一層重要性を増しています。私たちは「安全で円滑なデータ通信の発展を通じ、豊かな情報社会の構築に寄与する」ことを基本理念とし、技術標準化の推進、セキュリティ対策の強化、人材育成など、安心・安全な情報ネットワーク社会の実現に向けて取り組みを進めてまいります。また、AI時代におけるデータの適正利用と信頼性確保、フィッシングメール対策も引き続き強化してまいります。

 2026年も、皆さまとともに新しい価値を創造し、安心・安全な社会を築くため、全力を尽くす所存です。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。