諸外国における迷惑メールに関する規制

3.EU(欧州連合)

ⅰ EUにおける取り組み

(1) EU指令

1. オプトイン規制の導入

2. 指令改正提案

(2) 欧州委員会の取り組み

1. スパムに関する通知

2. Safer Internet plus Programme

3. 進化するスパム等との戦いに関する通知

ⅱ EU諸国の法整備と執行状況

(1) イギリス
(2) ドイツ

1. 不正競争防止法

2. テレメディア法

(3) フランス

ⅰ EUにおける取り組み

(1) EU指令

1. オプトイン規制の導入

欧州議会及び理事会は、平成14年7月12日に「電気通信分野における個人データの処理及びプライバシー保護に関する指 令」を出し、平成15年10月31日までに加盟国は本指令の内容に沿った国内法を整備することを義務付けることとしたが、この中で「望まない通信」につい てオプトイン規制をとるべき旨に言及している。

その目的として本指令の理由書には、「DM(ダイレクトマーケティング)を目的とした望まない通信が、とりわけ自動通話システム・ FAX・電子メール(SMSを含む)を用いて行われることによる加入者のプライバシー侵害を予防する措置を講じるべきである。こうした方法での望まない広 告通信は、一方で比較的安易かつ低廉に送信でき、他方で受信者に重荷や費用を課すことになりかねない。さらには、大量に送信することにより電気通信回線や 端末機器に支障を及ぼすケースも考えられる。したがって、前述の方法によるDM目的の望まない通信に対しては、受信者に送信される前に、その明確な事前の同意を要求することが妥当である。」と記されている。

オプトイン規制の具体的内容は、指令の第13条で以下のように規定されている。

  • a. DMを目的として、人の介在しない自動通話システム(自動電話機)・FAX・電子メールを利用することは、加入者が事前の同意を与えた場合にのみ許されること
  • b. a.にもかかわらず、自然人又は法人が商品・サービスの販売に際してその顧客から電子メールの詳細情報を取得した場合には、当該自然人又は法人は自己の同様の商品・サービスのDMを目的としてその詳細情報を利用することができること(ただし、顧客の詳細情報を取得するとき及び取得時に顧客が拒否しなかった場合はメッセージの送信ごとに、無料かつ容易な方法でそのような利用方法を顧客が拒む機会を与えること)
  • c. 加盟国は、a.b.以外の場合において、加入者の同意がない場合あるいは加入者が受信を希望しない場合にはDM目的の通信は許されないということを無料で保証するための適当な措置を講じるものとし、いずれの条件を選択するかは国内法により決定されるものとすること
  • d. いかなる場合であっても、通信の名義人となる送信者の身元を偽装もしくは隠蔽し、又は受信者が配信停止を要求できる有効なアドレスを付さずに、DM目的の電子メールを送信してはならないこと
  • e. a.及びc.は自然人たる加入者に適用されるものとすること(加えて、加盟国は、EU及び各国の法律の枠組みにおいて、望まれない通信に関する自然人以外の加入者の正当な利益が十分に保護されることを保証するものとすること)

ここでは、「望まない通信」として電子メールだけでなく自動電話機やFAXによるものも規制の対象とされているが、電子 メールによる通信にはⅳのように送信時の表示などについて特別の規制が課せられている。また、受信者は自然人のみを想定しており、法人の権利保護は加盟国 の対応に委ねられた。さらには、自動電話機・FAX・電子メール以外の手段によるDM目的の通信についてもオプトイン・オプトアウトいずれかの方式を採用 して適当な措置を講じるよう求め、その対応を加盟国の国内法に委ねている。

このほか、「個人データの処理に係る個人情報保護及び個人データの円滑な利用に関するEU指令」(平成7年11月)に基づいて活動してい る「個人データの処理に係る個人情報保護に関する検討会」(Working Party on the Protection of Indivisuals with regard to the Processing of Personal Data)という既存の枠組みを利用して電気通信分野における基本的権利・自由及び法的利益の保護に関する課題の解決に取り組むこととし、同指令の司法救 済、責任及び制裁に係る規定は、今回の指令に基づき導入される各国内法違反及び今回の指令により生ずる個人の権利の侵害に関しても適用されるとしている。

2. 指令改正提案

欧州委員会は、平成14年5月に欧州議会及び理事会が採択した「電気通信ネットワーク及びサービスに係る共通規制枠組指令」に関する検証の成果に関する通知を平成19年11月13日に出しているが、当該通知には、欧州委員会が同年中に3度にわたり提示した改革提案(the 2007 Reform Proposals)の要約も掲げられている。

それによれば、スパムへの対処に関しては、権限を有する機関のとりうる手段及び執行権限を強化すべきことが提案されており、より具体的には、「電気通信分野における個人データの処理及びプライバシー保護に関する指令」の主な改正内容として以下のとおり提案している。

  • 加盟国は、指令に基づき導入されたオプトイン規制違反を争う正当な利益を有する者が、行政上の救済措置とは独立に司法の救済を求めることができるようにすること
  • 加盟国は、指令に基づき導入された国内法規定の違反行為に適用しうる罰則規定を整備し、その実施を確保するために必要なあらゆる措置を講じること
  • 加盟国は、国内の規制当局に、指令に基づき導入された国内法規定の違反行為の停止を命令する権限及び必要な一切の調査権限及び資源を保証すること
(2) 欧州委員会の取り組み

1. スパムに関する通知

欧州委員会では、関係機関宛に「望まない商業通信(スパム)に関する通知」を平成16年1月22日に出している。

本通知においては、望まない商業電子メールを「スパム」と定義して用いることとし、「電子メール」にはいわゆるe-mailだけでなくSMS・MMSその他送信者と受信者の同時の関与を必要としないあらゆる電子媒体の通信を指すとしている。

そのうえで、スパムについて簡単な現状分析を行い、先のEU指令に基づく国内法整備の期限である平成15年10月31日以降に適用されうる規定を概観したのち、①法の施行と執行(政府・公的機関の取り組み)、②自己規制と技術(企業の取り組み)、③啓発(消費者に対する取り組み)の3つの観点からスパムに対処するための施策を提案している。

このうち、スパムに適用される規定について整理すると、まず、先のEU指令で言及されているものが挙げられる。

そして、スパムを送信するため個人データをウェブ等で収集する行為は、ソフトウェアを使って自動でなされるかどうかにかかわらず、前述の「個人データの処理に係る個人情報保護及び個人データの円滑な利用に関するEU指令」(平成7年11月)によって違法とされる。

詐欺的なスパムに対しては、「誤認広告に関するEC理事会指令」(昭和59年9月)のもとで既に違法であり、より重大な事案に対しては刑事制裁を含む厳罰を各国内法で整備することが期待される。

性的内容や過度の暴力的内容を含むスパムは、特に子どもたちにとって有害であっても直ちに違法ではないが、大人と区別せず無差別に配信する行為は時としてかなりの厳罰を伴って各国内法で違法とされることが期待される。そのほか、人種・性別・宗教・国籍を理由とする差別を誘発・助長するような違法な内容のスパムについても同様である。

さらに、スパムの送信を支援するためのハッキングやID窃盗は、理事会の枠組決定(Council Framework Decision)によって情報システムへの攻撃として刑事罰が科されており、多くの加盟国でサーバや個人用コンピュータへの不正アクセスないし悪用を犯罪行為として訴追することができる。

2. Safer Internet plus Programme

EUでは、平成11年1月25日に違法かつ有害なコンテンツを排除することによりインターネットの安全利用を促すための4ヵ年行動計画「Safer Internet Action Plan」を出し、平成15年6月16日にはその計画の2年間延長を決定するなどして、これまでに約4000万ユーロを89個のプロジェクトに提供してき たところ、この計画を継承する形で、特に子どもたちのためにインターネットのみならず新たなオンライン技術の安全利用を促し、利用者の望まない違法コンテ ンツ(スパムや有害コンテンツ)と戦うことを目的として、平成17年5月11日に平成20年末までの新たな4ヵ年行動計画「Safer Internet plus Programme」を出すに至っている。

ここでいう「新たなオンライン技術」とは、主として子ども・未成年者の保護をより一層推進すべく、携帯電話コンテンツ・ブロードバンドコ ンテンツ、オンラインゲーム、P2P形式のファイル交換、チャットやインスタント・メッセージのようなあらゆるリアルタイム形式の通信などを含む。また、 「違法かつ有害なコンテンツや行為」には、人種や暴力などを含め、より広い範囲のものが含まれるものとして行動がとられることとなる。

本計画は、①違法コンテンツとの戦い、②望まない有害コンテンツへの対処、③安全な環境づくりの推進、④認知度の向上、の4つの柱から成り、これらに係る資金援助など種々の取組を講じることとしている。なお、本計画には4500万ユーロの資金が充てられている。

3. 進化するスパム等との戦いに関する通知

上述の「Safer Internet plus Programme」を遂行するなか、スパムが技術的に進化し、スパイウェアや悪意のあるソフトウェアなどの脅威も登場したことを踏まえ、これまでの取組 を考察して今後講ずべき措置を確認するため、欧州委員会は平成18年11月15日に「スパム・スパイウェア・悪意あるソフトウェアとの戦いに関する通知」 を関係機関宛に出している。

これまでの取組の考察としては、先の「スパムに関する通知」の基づいた取組を紹介しつつ、欧州委員会が第三国との対話のなかでスパム・ス パイウェア・マルウェアとの戦いを課題に掲げ始めたこと、「不公正な取引慣行に関する指令」(平成17年5月)及び「消費者保護の協力に関する規則」(平 成16年10月)によって消費者を攻撃的な商業慣行から守り、その国際協力を実現してきたことに言及している。

そして、今後講ずべき措置として、①加盟国レベルでの措置、②産業界における措置、③欧州レベルでの措置のそれぞれにつき提案している。

それらを要約すると次のとおりである。すなわち、故意に法律に従わない者を阻止するために法の執行を強化する必要があり、これを補完する ため産業界はさらなる行動を講じるべきであって、政府間及び政府と産業界との全国規模での協力が必要である。欧州委員会は第三国との対話や協力をさらに推 し進めるとともに、新たな立法措置の提案の機会を探っていく((1)2.指令改正提案 参照)。さらに、電子通信分野におけるプライバシーやセキュリティをより強化すべく調査研究活動を行っていく。

ⅱ EU諸国の法整備と執行状況

(1) イギリス

イギリスでは、先述のEU指令を受けて平成15年9月18日に「プライバシー及び電気通信(欧州委員会指令)規則」を制定し、同12月11日から施行している。

本規則では、電話・FAX・電子メールを利用したDM目的の望まない通信を規制の対象としている。電話のうち、自動通話システムを利用す る場合は加入者の事前の同意がなければ送信又は送信の用に供してはならないとしてオプトイン方式を採用しているが、その他一般の電話の場合は加入者が当面 の通話拒否の意思を通知したときに送信又は送信供用行為が禁止されるとしてオプトアウト方式を採っている。また、FAXの場合は自然人に対する通信につき オプトイン方式を採用し、法人に対するものはオプトアウト方式としている。なお、電話・FAXによる通信に対しては、OFCOMの番号登録制度を利用すれ ば、登録後28日経過後は登録番号へのDM目的の通信が禁止される。

これらに対して、電子メールを利用したDM目的の通信については、自然人の事前の同意がない限り当該自然人への送信又は送信の用に供して はならないとして、自然人に対してのみオプトイン方式に基づく規定を置いている。ただし、受信者の連絡先の詳細が商品又はサービスの販売・交渉の過程で得 られたものである場合であって、そのDMが同様の商品又はサービスに関するものにすぎず、かつ、その連絡先が当初収集された時点あるいは受信者が当初拒否 しなかったときは以後の各通信の時点において、当該DMへの連絡先の利用を(通信費を除いて無料で)拒否できる手段が受信者に与えられていれば、例外的に 事前の同意がなくても送信できるとしている。なお、電子メールによる通信に対しては、電話やFAXのような登録制度は設けられていない。

さらに、電子メールによるDM目的の通信に対しては、当該通信の名義人となる送信者の身元を偽装もしくは隠蔽し、又は受信者が配信停止を要求できる有効なアドレスが提供されることなく送信することを禁止しており、EU指令と同様の特別の規制を課している。

(2) ドイツ

1. 不正競争防止法

ドイツにおいては、平成16年7月8日、消費者などの市場参加者を不正な競争から保護することを目的とする不正競争防止法という広い枠組みのなかで、「受忍を強いることのできない迷惑行為」であることを根拠として電子メール広告についてオプトイン方式による規制を導入した。

すなわち、同法は市場参加者に受忍を強いることのできない迷惑行為は不正競争行為であるとして、その類型として、

  • a. 受領者が広告を望んでいないことが明らかであるにもかかわらず、当該広告を行う場合
  • b. 消費者に対してその承諾なく電話で広告を行う場合又はその他の市場参加者に少なくとも推定的承諾がないにもかかわらず電話で広告を行う場合
  • c. 受信者の承諾なく、自動電話システム・FAX・電子メールを用いて広告を行う場合
  • d. 通信による広告において、送信者の身元が偽装もしくは隠蔽されている場合、又は基本契約に基づく通信費以外の費用を発生させることなく、受信者が当該広告の配信停止を要求できる有効なアドレスの表示がない場合

において特に迷惑行為と認められるとしている。

ただし、c.のうち電子メール広告の例外として、顧客からの電子メールアドレスが商品・サービスの売買取引に関して取得されたものであって、事業者が当該 アドレスを自社の類似商品・サービスのDMに使用する場合に、顧客がその使用に異議を唱えず、かつ、顧客に対して当該アドレスの登録時及び利用のたびに、 基本契約に基づく通信費以外の費用を発生させることなく、いつでもその利用に対して異議を唱えることができる旨を明示したときは、顧客の事前の承諾がなく ても送信できるとしている。

このように、本法律においては、受信者が自然人・法人のいずれであるかを問わずオプトイン方式による規制が適用されるほか、必ずしも商用目的の広告に限定 されていない。また、不正競争防止の観点から市場参加者に受忍を強いることのできない迷惑行為である以上は、たとえ広告を内容とする電子メールでなくてもオプトイン規制の対象となりうる。(上述の迷惑行為の類型は例示列挙である。)

2. テレメディア法

テレメディア法は、従来テレサービスとメディアサービスとを区別し異なる法律により規律していたものを、情報社会に進展に対応するため「テレメディアサービス」という包括的な概念のもとに統一的に規律するとともに、平成12年6月8日のEU指令(電子商取引に関する指令)の内容を国内法において実現するため、平成18年10月23日に成立したものである。

まず、「テレメディアサービス」とは、インターネット電話などのすべて電気通信ネットワークを経由した信号の伝達を本質とする電気通信サービスや無線放送サービスを除いたあらゆる電子情報通信サービスであり、「主に」電気通信ネットワークを経由した信号の伝達を本質とするがインターネットアクセスや電子メールなどをも提供するサービスは「テレメディアサービス」に含まれ、電子メールを用いた広告もこれに含まれる。

そして、テレメディアサービスのうち、直接もしくは間接に企業や個人事業主の商品・サービスの販売促進のため、又はそのイメージを向上させるために行われるすべての通信(当該企業や個人事業主のURLやメールアドレス、商品・サービスや当該企業・個人事業主のイメージに関して独立かつ無償で送られるものを除く)は「商業通信」として以下に示す特別の表示義務がサービス提供者に課されている。

(3) フランス

フランスでは、平成16年6月22日、デジタル経済法を制定し、同法において郵便電気通信法典及び消費法典に新たに規定を盛り込む形でオプトイン方式による規制を導入した。

まず、郵便電子通信法典において、無人自動電話・FAX・電子メールによるDMを受信することについて事前の同意を表明しなかった個人の連絡先を何らかの形で使用して、当該DMを行うことを禁止している。この場合の「同意」とは、人が自己の個人情報のDM目的使用への承諾を内容とする自由・固有かつ納得のいく意思表示をいうと説明され、「DM」の範囲についても、財・サービス又はこれらを販売・供給する人のイメージを直接・間接に高めることを目的とするあらゆるメッセージが含まれるとの具体的説明がなされている。

ただし、電子メールによるDMについては、受信者の連絡先を法の規定にのっとりサービスの販売・提供時に本人から直接入手した場合において、当該DMが同一の個人又は法人によって供給される類似の財・サービスに関するものであって、連絡先の入手時及びDMを受け取るたびに当該連絡先の使用を無料で(ただし拒否通知の送信料は負担)かつ容易に拒否できる旨が受信者に対して明確かつ曖昧でない形で示される場合には、例外的に許されるとしている。

また、無人自動電話・FAX・電子メールのいずれであるかを問わず、受信者が配信停止請求を効果的に無料で(ただし請求通知の送信料は負担)送信できる有効な連絡先を示さずにDM目的の広告を配信することを禁止している。このほか、送信者に対して、メッセージの配信名義人の身元を偽ることおよび提供されるサービスと無関係の事物に言及することも禁止される。

これらの規制は、個人向けのDMに対してのみ適用される。

次に、消費者保護を目的とする消費法典においては、電子メールによる広告(特に値引きや景品・プレゼント等の販売促進を内容とするもの)は、受信者が当該広告を受信したときから又はそれが技術的に不可能である場合はメールの本文において、明確かつ曖昧でない形で特定されなければならないとしている。この規制は、自然人向けのみならず業者向けの広告にも適用される。

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