令和3年「情報通信エンジニア」優良団体表彰模様(企業の部)

 電気通信設備とネットワークを接続する工事を行う際に必要とされる国家資格「工事担任者」の知識や技術の向上を目的に作られた制度が情報通信エンジニア委員会(事務局:日本データ通信協会)の「情報通信エンジニア」です。今年からは工事担任者のみならず、無線従事者、電気通信主任技術者の皆様にもご利用いただけるようになり、電気通信の分野で活躍する技術者が各々の技術力を強化するための手段として、その役割はさらに広がってきました。
 情報通信エンジニア委員会では情報通信エンジニアの育成と資格取得を支援している団体を「情報通信エンジニア優良団体」として毎年表彰しており、今年も企業5団体、学校3団体が受賞しました。ここでは企業の部で受賞した5社を訪問し行われた表彰の模様をご紹介します。

第1位:株式会社TOSYS(資格者数66名)

左より執行役員ビジネス推進本部長の上原邦明氏、代表取締役社長の笠井澄人氏、日本データ通信協会専務理事の髙嶋幹夫、ビジネス推進本部品質工法部長の平沢 之氏。

 今年度の「情報通信エンジニア」優良団体表彰企業の部で全国第1位に輝いたのは、甲信越地区における電気通信工事分野の雄、㈱TOSYS(トーシス)です。令和2年度には前年度の42名から一挙に資格者数を増やし、58名の資格者を擁することになった同社ですが、今年度はさらに上積みし、令和3年9月末時点で同社に所属する「情報通信エンジニア」は66名を数えています。

 資格者の増大は偶然ではなく、戦略的な取り組みの成果です。㈱TOSYSでは「情報通信エンジニア」を技術者にとって基本的に重要な資格と位置づけ、社員の皆さんに取得を奨励していただいています。その成果が数字に如実に表れているというわけです。同社は、令和3年10月には、ワークライフバランスに対する取り組みとともに、社員の資格取得などの自己研鑽に対する会社の支援などが評価され、長野県から「職場いきいきアドバンスカンパニー」の認証を取得しました。資格重視を自他ともに認める企業の中で「情報通信エンジニア」を評価いただいているのは、事務局としてうれしい限りです。

「資格を持っていることは技術者としてのベースなので、これからも資格保持者を増やしていきたいと考えています。学校で電気・通信系の勉強をしなかった人も、工事担任者や情報通信エンジニアのような資格を取り、資格を取れば「その能力がある」と認めてもらってさまざまな仕事ができる。“継続は力なり”ですので、会社が支援を続ければ取得者はどんどん増えてきます。」(笠井社長)

 ここ数年、電気通信サービスとして最も注目され、普及が期待されているのが5Gを用いた各種のサービスですが、その中でも多種多様な用途が期待されるローカル5Gの分野で㈱TOSYSは先進的な取り組みを開始しています。

「上越妙高駅前で「JM-DAWN(ジェーエム・ドーン)」というローカル5GがつながるリモートワークオフィスをNTT東日本や地元企業さんなどと組んで作りました。これまで行われているローカル5Gの試みの多くは通信の範囲が建物の中に閉じているのですが、このプロジェクトでは屋外にある近くの公園などまでローカル5Gで通信が可能な「屋内外型ローカル5Gラボ」環境を実現しています。」(笠井社長)

「これからもモバイル系の工事が増えてきますので、第一級陸上特殊無線技士など無線従事者を増やそうとしています」とおっしゃる笠井社長には、「情報通信エンジニア」が、2020年12月からは工事担任者のみならず、電気通信主任技術者や無線従事者にも門戸を開放したことに対し賛意を表していただきました。

「昔のように工事担任者、電気通信主任技術者、あるいは線路、交換、伝送という区別が無意味になり始めています。例えば、クラウドの世界ではEDR(Endpoint Detection and Response)で、端末側のプログラミングの情報をネットワーク側で認識し判断をしています。自動車の中でオンライン会議をしながら、そのアプリケーションから携帯電話網を介して一般の電話番号に電話をするということが当たり前になってきているわけで、将来には様々な資格が一本化されてしまったとしても、まったく不思議ではありません。「情報通信エンジニア」が資格対象者を広げているのはよいことだと思います」

笠井社長のご期待に応えられるよう、「情報通信エンジニア」もさらにコンテンツとサービスを拡充していく所存です。

笠井社長(左)と日本データ通信協会の髙嶋幹夫

第2位:NECネッツエスアイ・サービス株式会社(資格者数64名)

左より管理本部長 近藤英伸氏、ソリューションサービス本部長 川幡 進氏、日本データ通信協会専務理事の髙嶋幹夫、地域本部西日本サービス部長 谷 和信氏、代表取締役社長の細名厚雄氏。

 「情報通信エンジニア」には長くご愛顧いただいている事業者様がいくつもあり、優良団体表彰でそれらのお名前を拝見し、長年お使いいただく喜びを事務局として噛み締めるのがこの時期なのですが、一方で、新しいお名前を皆さんに紹介できるうれしさには、また格別なものがあります。

 NECネッツエスアイグループにあって、ネットワークインフラ、IPテレフォニー、移動体通信など様々なネットワーク構築、保守に携わるNECネッツエスアイ・サービス㈱が、今年の優良団体表彰で企業の部第2位を受賞しました。それも、認定者数でほぼトップに並ぶ大挙64人の認定です。過去の記録を見返すと、昨年度が認定者12名、その前年が3名だったのですから、そのご利用拡大のペースは驚きです。

 最初に取り組んでいただいたのは福岡市に拠点を置く地域本部西日本サービス部で、その当事者である谷和信部長には、東京の本社で行われた表彰式にご参加いただき、会社を代表して表彰状もお受け取りいただきました。

「私が最初に受けさせていただいたのですが、テキストを見たときに最新の技術動向が掲載されており、これはいいなと感じました。工事担任者に努力義務が課されていることも承知していましたので、まずは課内、そして部内という形で受験者数を増やしていきました。内容的に多岐にわたっており、電気通信工事の施工管理にも役に立つ内容がコンパクトにまとまっているなという印象です。」(谷部長)

谷 和信部長(右)に会社を代表して賞状をお受け取りいただきました。

 谷部長の評価を受けて全社での取得を奨励した細名厚雄社長には、なんとご自身でも資格を取得していただきました。

「私も勉強しましたが、教科書には多岐な分野にわたり内容が盛りだくさんですし、記述は分かりやすいと思いました。」(細名社長)

 というわけで、「情報通信エンジニア」は2021年1月からNECネッツエスアイ・サービス㈱の全社で取得が奨励され始めました。

「恥ずかしながら、始めるまで「情報通信エンジニア」の存在を知らなかったのですが、すごくいい資格だなと思いました。キックオフや、毎四半期の初日に行われる全社朝礼など、節目の機会を見つけては私からも社内にはっぱをかけました。」(細名社長)

細名厚雄社長(右)と日本データ通信協会専務理事の髙嶋幹夫

 今年は「情報通信エンジニア」で切磋琢磨する仲間にNECネッツエスアイ・サービス㈱が加わってくれた年となりました。

「どうせやるなら日本一になるぞと(笑)。社員はどんどん取り組んでくれて、あっという間に60人を超え、今ではすでに80名を超える社員が取得しています。技術が陳腐化しないように活用をさせていただきます」(細名社長)

第3位:扶桑電通株式会社(資格者数62名)

左よりエンジニアリング本部長付の石川守雄氏、執行役員エンジニアリング本部長の上地浩夫氏、エンジニアリング本部長代理の間宮伸之氏、管理本部総務統括部人材育成推進室長の佐藤伸行氏

 営業で活躍している方を含め、多くの工事担任者が従事する扶桑電通株式会社では、「情報通信エンジニア」設立の初期からこの制度を社員教育にご活用していただいています。また、お使いいただくのみならず、同社エンジニアリング本部の石川守雄氏には「工事担任者スキルアップガイドライン委員会」のWG委員として「情報通信エンジニア」の教科書「情報通信エンジニア更新研修テキスト」の作成に平成25年から6年間にわたりご参画いただき、制度の発展を支えていただきました。石川氏は、この功績が認められ、令和元年に、総務省の「電波の日・情報通信月間」で関東情報通信協力会長表彰を受賞しています。

 その扶桑電通様では、今年、例年よりもさらに増えて62名の方に「情報通信エンジニア」資格を取得していただきました。春先に上地浩夫エンジニアリング本部長から、あらためて社内で取得を推奨していただいたそうで、その成果が如実に表れたのかもしれません。

「新しい情報を得ることができるという点で意味がある資格であるという声は社内でも上がっていますので、ぜひ継続していきたいと考えています」とは上地本部長のお言葉です。

上地エンジニアリング本部長(右)への賞状授与

 2022年9月期を初年度とする3カ年の中期経営計画『FuSodentsu Vision 2024』を発表しましたが、この中では、経営基盤強化のための重点施策の一つとして、新しい人財育成制度による技術力の向上が掲げられています。

「今年から佐藤伸行室長が主導する人材推進室で人材スキル認定制度を立ち上げ、技術者が取るべき資格を3段階に整理しました。工事担任者とともに「情報通信エンジニア」も、最初に取らなければならない、絶対に持っていなければならない資格になりましたので、今後は社内の資格取得者はさらに増えていくと考えています。」(上地本部長)

 扶桑電通様は、様々な意味で、「情報通信エンジニア」制度を育てていただいた恩人の一人といっても過言ではないわけですが、「情報通信エンジニア」事務局としては、今後も一層緊密に連携し、情報通信分野の人材育成に努めていきたいと考えています。

第4位:大和電設工業株式会社(資格者数37名)

左より代表取締役社長の栩谷泰輝氏、執行役員の渡辺卓也氏

 昭和26年に大和電設工業所の社名で創業、翌27年に現在の社名である大和電設工業株式会社に改名しておよそ70年、京都を中心に滋賀、大阪など関西地場産業のITインフラを支える大和電設工業株式会社は、戦後の電気通信の歴史とともに発展してきました。今日に至るまで、電話やLANなどの電気通信設備の施工・保守、コンピュータネットワークの構築、電気工事の各分野であまたの実績を重ね、企業のインフラ整備にまつわるニーズにこたえ続けています。

 昨年、新たに代表取締役社長に就任した栩谷泰輝(とちたに やすき)氏は、時代の流れを先取りし、「大和電設工業㈱はDXを促進します」と、DXをこれからの同社の重点施策ととらえています。デジタル技術を活用し、情報の蓄積、情報の共有化・効率化、属人化の排除、情報の活用、顧客・社会へのフィードバックを通してサービスのスピードアップ化を図るという同社のDX戦略を打ち出し、その推進のために「デジタル化推進事務局」を設けて、アプリケーションやAIを利用する力、デジタル化推進のための企画力を有する社員を育てていこうという考えです。

 前社長で現在会長職を務める栩谷晴雄氏は、長く(一社)情報通信設備協会の副理事長の職にあって、電気通信分野の技術資格普及に貢献してきました。このことが象徴するように、大和電設工業㈱には人材育成を重要視する思想が生きています。栩谷泰輝社長は、この遺伝子を受け継ぎ、将来の発展に向け、新たな時代の技術ニーズに対応した、より幅の広い分野の技術者を育てていこうとしています。

意見交換会の一コマ。左より栩谷社長、渡辺執行役員

 そんな同社にあって工事担任者、電気工事士は、業務を行う上でもっとも基礎的な資格といってよいでしょう。同社には工事担任者がおよそ70名在籍しており、そのうち、今年は37名の方々が「情報通信エンジニア」を取得し、スキルを磨いていただいています。

 栩谷社長は「当社では比較的若い人たちは工事担任者を取得してくれており、「情報通信エンジニア」も利用していますが、更新は年配になればなるほど少なくなってしまう傾向があります」とおっしゃいますが、「情報通信エンジニア」資格全体の傾向としては、以前に比べると若い層の利用が伸び悩む傾向があることを考えると、誠にありがたい限りです。渡辺卓也執行役員にも「常に最新の知識を見つけることができるので助かるなと思うところは多くあります」とお褒めの言葉を頂戴しました。

 栩谷社長も「技術の進歩は早く、とても追いきれないと往々にして感じます。「情報通信エンジニア」資格を通して、私自身も含め、社員一同ともに成長させていただければと考えております。」とのお言葉をいただきました。

 大和電設工業㈱が目指すDXの世界での事業拡大に寄り添っていけるよう、「情報通信エンジニア」も年々内容を時代の要請に即したものにブラッシュアップしていきたいと思います。

第5位:株式会社ベータテック(資格者数22名)

左より取締役の大橋貴美雄氏、代表取締役の大竹丈夫氏、副社長の大竹佳子氏、取締役の上野友則氏

 名古屋市に本社を置く㈱ベータテックでは、毎年、「情報通信エンジニア」を社員教育に活用していただいており、今年も22名の工事担任者の皆様に資格を取得していただきました。

 ㈱ベータテックは、無線分野を主力とし、社員のほとんどが無線関連の様々な国家資格を取得して、携帯電話の基地局設置や保守など顧客の依頼に対応しています。もちろん、工事担任者資格が必要な電気通信工事も手掛けており、工事担任者の皆様には毎年「情報通信エンジニア」で自慢の腕を磨いていただいています。

「情報通信エンジニアのテキストは、紙のテキストとしては、もっとも新鮮で価値が高いと思っています」と、大竹丈夫社長には表彰式に先立つ意見交換会でお褒めの言葉を頂戴しました。本気で技術を磨いているお客様に褒められるのはうれしい限りです。

 意見交換の場では、工事担任者試験の「第二級アナログ通信」、「第二級デジタル通信」の2種別でCBT方式による試験が始まったことが話題となりました。と言うのも、同社は各種無線設備の建設・保守・運用・検査等を手掛けるとともに無線関連の技術講座を一般企業の顧客に対し長年提供し続けている教育のプロでもあるからです。特に無線分野では、課程を修了すると国家試験が免除される特殊無線技士の養成講座をCBT方式で開催し、すでに6年目を迎えるなど、eラーニングでは工事担任者試験の先輩というべき存在です。陸上、海上の各種特殊無線技士に対応する7つのコースを揃えた“教えるプロ”でもあるのです。

 その大竹社長が、「情報通信エンジニア」のパンフレットに「無線従事者の資格をお持ちの方」という表現を目ざとく見つけてくれました。そうなんです。今年度から「情報通信エンジニア」は、従来の工事担任者に加え、無線従事者の資格を持つ皆さん、電気通信主任技術者の資格を持つ皆さんにもご利用していただけるよう、その門戸を開いたのですが、まだまだ私どもの宣伝が行き届いておらず、無線従事者教育のプロである大竹社長もその事実をご存知なかったのでした。申し訳ありません。

意見交換会での一コマ。左より大竹丈夫社長、大竹佳子副社長

「私どもの会社には、百数十人の資格保持者がいますし、無線従事者を採ったら「情報通信エンジニア」でスキルアップできるというのは、とてもいいことですね。今後、デ教さんと協力しあえる部分がさらに増えてくるように思います」と大竹社長には前向きなお言葉をいただきました。


(文責:「日本データ通信」編集部)